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ハ
花火は、一瞬だから美しい。
人の幸せも、それによく似ている。
はじめて二人で歩く花火大会。
何を話せばいいのか分からない。
沈黙さえ心地よくて、ただ隣を歩くだけで満たされていた。
夜空に大輪の花が咲く。
その光を見上げて笑う彼女の横顔は、どんな花火よりも眩しかった。
彼は花火ではなく、その笑顔を見ていた。
帰り道。
人波に押され、二人の距離が少しだけ離れる。
その瞬間、彼女はそっと手を握った。
『離れたくないから。』
たった一言。
それだけで、彼の世界は完成してしまった。
花火は消える。
夏も終わる。
けれど、この温もりだけは消えない。
二人はそう信じていた。
私は、その手を見ていた。
固く結ばれた指先ほど、人は「これから」を疑わない。
だから、その笑顔は美しい。
だから、その温もりは忘れられない。
夜空の花火は、いつか必ず消える。
人の願いも、約束も、恋も同じだ。
消える瞬間を知っていたのは、
あの夜、私だけだった。
きれいに砕け散った。




