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人は未来を知りたがる。
知ったところで、変えられるとは限らないのに。
冷たい雨の夜。
誰にも使われなくなった公衆電話だけが、静かに鳴り続ける。
『出ると、明日の自分と話せる。』
そんな噂を、彼女は冗談半分で信じた。
受話器の向こうから聞こえたのは、自分の声。
『絶対に家へ帰るな。』
切迫した声だった。
理由を尋ねる前に、通話は途切れる。
彼女は少しだけ遠回りをした。
雨音を聞きながら、ゆっくり歩いた。
「これで大丈夫。」
そう思っていた。
翌朝。
ニュースでは昨夜から彼女が行方不明になっていると伝えていた。
『怖いね。私、ここにいるのに。』
その言葉だけが、誰にも届かなかった。
人は、自分が存在していると思い込む。
声もある。
記憶もある。
意識もある。
だから、自分が世界からこぼれ落ちたことに気づけない。
公衆電話は、今日も鳴っている。
次に受話器を取るのは、誰だろう。
私は、その音を聞きながら待っている。
その音がなったら鳴らしたやつを殺すだけ。
未来は教えてくれる。
ただし、その結末だけは変えられない。




