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チ
人は迷ったとき、誰かに道を尋ねる。
それが正しい道だと、疑いもせずに。
『地図にない交番』。
そんな噂を、人は笑い話にする。
迷った者だけが辿り着ける場所。
帰り道を教えてくれる警察官。
実に人間らしい願いだ。
霧の夜。
彼は、その交番を見つけた。
『帰り道はこちらです。』
差し出された一枚の地図。
そこに描かれていたのは、自宅ではない。
静かな墓地へ続く一本道だった。
違和感に気づき、ゆっくりと顔を上げる。
名札に刻まれた名前。
十年前に殉職した警察官。
生きているはずのない人物だった。
その瞬間――〇〇の〇の音が響く。
彼はその音の意味を知らなかった。
いや、知る時間が残されていなかった。
人は迷えば、帰る道を探す。
だが、ときには辿り着く場所そのものが「帰る場所」になってしまう。
私は、その地図を見届けた。
行き先は最初から決まっていた。
迷っていたのは、彼だけだったのだから。
地獄でもお幸せに。




