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38/97

チ

人は迷ったとき、誰かに道を尋ねる。


それが正しい道だと、疑いもせずに。


『地図にない交番』。


そんな噂を、人は笑い話にする。


迷った者だけが辿り着ける場所。


帰り道を教えてくれる警察官。


実に人間らしい願いだ。


霧の夜。


彼は、その交番を見つけた。


『帰り道はこちらです。』


差し出された一枚の地図。


そこに描かれていたのは、自宅ではない。


静かな墓地へ続く一本道だった。


違和感に気づき、ゆっくりと顔を上げる。


名札に刻まれた名前。


十年前に殉職した警察官。


生きているはずのない人物だった。


その瞬間――〇〇の〇の音が響く。

挿絵(By みてみん)


彼はその音の意味を知らなかった。


いや、知る時間が残されていなかった。


人は迷えば、帰る道を探す。


だが、ときには辿り着く場所そのものが「帰る場所」になってしまう。


私は、その地図を見届けた。


行き先は最初から決まっていた。


迷っていたのは、彼だけだったのだから。


地獄でもお幸せに。

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