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タ
あの夜、インターホンは二度鳴った。
一度目は、まだ生きている者への合図。
二度目は、もう戻れない者への合図だった。
午前二時。
誰もいない玄関。
白い封筒。
『次は、開けないでください。』
警告は、いつだって遅すぎる。
人は意味の分からないものほど、確かめたくなる。
背後でゆっくりと回るドアノブ。
鍵を掛けたという安心は、音ひとつで崩れ去る。
金属のきしむ音。
止まった息。
震える指先。
そこから先を語る者はいない。
語れないからだ。
『あの夜以来、インターホンは一度も鳴っていない。』
当然だ。
呼び鈴は、生きている者を呼ぶためのものだから。
あの部屋には、もう誰も応答する者はいない。
残ったのは、返事のない玄関と、
鳴る理由を失ったインターホンだけだった。
私は、その静けさが好きだった。
音が消えた場所では、物語も終わるのだから。




