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31/97

ソ

教師という人間は、不思議な生き物だ。


挿絵(By みてみん)


自分の人生より、生徒たちの未来を語る。


『生きるために食べよ、食べるために生きるな。』


偉人の言葉を教えながら、


その意味を、生徒一人ひとりが自分の人生で見つけてくれることを願っている。


彼も、そんな教師だった。


社会を教え、


歴史を語り、


世界には様々な価値観があるのだと伝え続けた。


『いろんな生き方をしてほしい。』


その願いに偽りはなかった。


勉強だけではない。


人との出会いも、


経験も、


失敗も、


すべてが人生の教科書になると信じていた。


ふと、昔の教え子を思い出す。


『結婚するんです。』


挿絵(By みてみん)


嬉しそうに報告してきた顔。


結婚式にも招かれた。


けれど予定が合わず、行けなかった。


『行きたかったなぁ。』


静かな後悔だった。


『あいつ、本当にいいやつだったからな。』


その言葉は、本心だった。


人は、自分が会えなくなる最後の日を知らない。


「また今度」が永遠に来ないこともある。


私は、そのことを知っていた。


だから教師の願いも、


教え子の未来も、


後悔の言葉も、


等しく静かに見届けるだけだった。


人は未来を教えることはできる。


だが、その未来がどこで途切れるのかだけは、


誰にも教えられない。


それが今だとも。

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