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第82話:鉄の悪魔

それは、長く、過酷な旅路だった。


「クソみたいな4年間だ……。世界の果てにたどり着くだけで、4年もかかるとはな。それだけの価値があるんだろうな、ドルンハイム」


俺は目を閉じた。


風が俺の意識を、あのジメジメとした暗闇へと引き戻していく。


時間が止まり、生きる意味さえ失いかけていた、あの場所へ。


覚えている。


粗末な丸太壁に背を預けて床に座り込み、彼女の足音が遠ざかっていくのを聴いていた時のことを。


あの瞬間、俺はこの世界の不条理に対する怨みや怒りのすべてを、いっそ葬り去ってしまいたかった。


だが、現実からは逃れられない。


俺の心には、ただ完全な空虚だけが広がっていた。


最初の数ヶ月間、俺はほとんどベッドから起き上がれなかった。


いっそこの小屋の一部になってしまいたかった。


隅々までカビに侵食され、腐りかけた床板と共に塵となって崩れ去りたかった。


天井をじっと見つめ、梁の隙間に巣を張る蜘蛛を何時間も観察した。


奴の生き方は単純で、明快だった。待つ、捕らえる、喰らう。


それに引き換え、俺の人生は、完全に静止した一コマのようだった。


時間を数えるのをやめた。


昼が夜へと流れ込んでいく。


屋根の隙間から差し込む陽光が、俺の腕に斜めの線を描いては消えていった。


身体を洗うこともなかった。


肌は埃と、消え果てた炉の煤で灰色に汚れていた。


生きるために動かざるを得ない唯一の理由は、食事だった。


だが、それさえも拷問に等しかった。


飢えが胃袋をきりきりと締め付け、吐き気を催すようになって初めて、俺は食べ物を口にした。


小屋の隅に、干し肉といくばくかの穀物が入った袋があった。ティラが遺していった備蓄の残りだ。


俺はそこまで這っていき、乾燥して固くなった肉片を口に放り込み、大して噛みもせずに飲み込むと、すぐにまた昏睡のような無気力へと戻っていった。


時折、小屋の中にネズミが迷い込んできた。


完全な無関心でそれらを眺めていたが、ある日、一匹を素手で捕まえた。


それがジタバタと暴れるのをただ見つめ、それから、握りつぶした。


脳内には、静寂だけが支配していた。


かつて現実と繋ぎ留める唯一の手段だった物理の公式は、完全に沈黙していた。


一歩も踏み出す気がないのなら、摩擦係数に何の意味がある?


自分自身が重さのない灰のように感じられる時に、物体の質量に何の価値がある?


エフレムとゼノは、俺のためにすべてを捧げてくれた。


その事実が、重苦しい足枷のように俺を押し潰す。


自分が裏切り者のように思えてならなかった。


彼らは自らのすべてを『盾』へと賭けたのに、手に入れたのは壊れた玩具だったのだから。


転機が訪れたのは、最初の寒波が押し寄せた時だった。


小屋は隙間だらけだった。


風が隙間から吹き込み、俺の足元に小さな雪溜まりを作っていく。


ある朝、目が覚めると、瞼が開かなかった。


まつ毛が霜で完全に凍りついていた。


冷気が毛皮の隙間から這い入り、骨の髄まで突き刺さる。


俺の意志に反して未だに生にしがみついている肉体が、激しく震え始めた。


その時、脳裏にゼノの声が蘇った。


短く、無機質な声。


「統計的アノマリー。被験体の生存能力はゼロに近づいています」


ただの、低俗な幻聴だ。


だが俺は、1年後にこの場所で、ボロ切れの山に埋もれた干からびた骨として発見される自分の姿を、不意に鮮明に思い描いてしまった。


エフレムが命を落とした理由も、ゼノが創り出したものも、すべてが無に帰す。


「嫌だ……、そんなの、嫌だ!」


俺は掠れた声で叫んだ。


涙が勝手に頬を伝い落ちる。


ベッドを拳で叩きつけ、罵り、のたうち回り、今すぐ立ち上がってやると自分に誓った。


せめて一歩だけでも進んでやると。


だが、そのたびに身体は従うことを拒絶した。


それからさらに一週間が経ち、本格的な酷寒が襲ってきた時、俺はどうにか立ち上がるための力を心の底から引きずり出した。


足の力が抜け、猛烈な眩暈が襲う。


天井と床がひっくり返った。


俺は膝から崩れ落ち、肘を痛烈に打ち付けた。


俺は這って戸口へと向かい、扉を押し開けようとした。


外は雪で完全に塞がれていた。


俺は義手の重みを破城槌タランの代わりにして、全身で扉にぶつかった。


三度目の試みでようやく扉が折れ、俺はそのまま雪溜まりへと転がり出た。


氷の結晶が口の中に飛び込み、顔を覆う。


雪の中に倒れ伏したまま、俺は笑った。ひび割れた、途切れ途切れの笑い声を上げた。


これ以上、落ちる底なんてどこにもない。


俺は、立ち上がった。


「生還」してからの最初の数週間は、苦痛の連続だった。


毎朝、自分に鞭打って小川へと向かい、氷を叩き割って顔を洗った。


凍てつく水が肌を焼き、俺を混濁から引き戻す。


狩りを始めた。


最初はウサギを捕らえるための単純な罠だった、やがて、その手でナイフを握る必要に迫られた。


最大の障害は、やはり義手だった。


電子回路は焼き切れているか、完全に放電してしまっている。


それは俺の肩関節を異様に圧迫し、歩行を妨げ、枝に引っかかった。


ある晩、焚き火の傍らに座りながら、俺はバッグからエフレムの工具セットを取り出した。かつて彼が「万が一のため」と持たせてくれたものだ。


鉄鋸かなのこと、小屋の残骸から見つけておいた数本の長いボルトを手にする。


ナイフをノミ代わりに使い、義手の肘部分にあるコンポジットパネルをこじ開け始めた。


悲鳴を噛み殺すために革の切れ端を口にくわえ、俺は手作業で関節を90度の角度に曲げたまま固定ロックした。


歯車の間に直接ボルトを叩き込み、メカニズムを完全に沈黙させる。


それから、金属が風に吹かれて鳴らないよう、また極寒で肌を焼かないよう、分厚い牛革を何層にも巻き付けた。


ベルトを駆使し、重量の負荷が背中と腰に分散されるよう調整する。


そうして、俺が完全に森を後にしようとする、まさにその直前のことだった。


一匹の狼に遭遇した。


そいつは身を低くし、跳躍の姿勢を取る。


【衝突計算】


距離:5メートル。


跳躍速度:秒速約10メートル。


反応時間:……遅延。


狼が跳んだ。


スローモーションのように、奴の足が地面を離れるのを見つめていた。


俺は一歩踏み出し、固定された鉄の腕を突き出した。


衝撃は、獣の胸部中央へ直撃した。


骨が砕ける乾いた音が響く。


チタンの重量と狼自身の跳躍の慣性が掛け合わさと、どんな剣よりも冷酷に機能した。


獣は後方へと弾き飛ばされ、雪の中に転がってその足を痙攣させた。


スキルを使用したことによる代償バックラッシュが即座に襲いかかり、内臓をきりきりと締め付け、激しい頭痛を引き起こす。


「……これで、終わりだ」


俺は小さく呟いた。


荷物をまとめ、バッグを肩に担ぎ直して歩き出す。


目指すべき大まかな方角は——北。


小さな村々を通り過ぎるたび、人々は俺の姿を見て胸の前で十字を切り、背後で囁き合いながら窓のシャッターを閉ざした。


「白い亡霊だ」「憑き物持ちめ」「鉄の悪魔」


二、三度、盗賊どもが待ち伏せを仕掛けてきた。


だが彼らは、襲いかかってきた時と同じ速さで退散していった。


片目を開けたまま眠ることを覚えた。


空気の微かな揺らぎから魔法の罠を察知することを覚えた。どんなエネルギーであれ、周囲の環境の密度を歪めるからだ。


川を渡り、山脈を越え、飢え、凍え、そのたびにまた立ち上がった。


時が経つにつれ、ティラに対する恨みは、静かな理解へと変わっていった。


俺は、モリの村へと足をとどめた。


ドルンハイムへの旅は、まだ始まったばかりだった。

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