第69話:線路の灰
ホワイトノイズの隙間から、途切れ途切れの音が聞こえてきた。
最初にやってきたのは痛み。それから——声だ。
目を開けようとしたが、視界がひどく歪んでいる。ノイズ混じりのインターフェースのグリッドが、灰色の壁や錆びついた車両、そして人間のシルエットに重なっていた。
「……だから言っただろ、こいつはただのクズ鉄だ!」
すぐ近くから、しゃがれた声が聞こえる。
「レンズを叩き割れ。残りは溶かして再利用だ」
「そいつに触るな!」
エフレムの声だった。老人の声は震え、悲鳴のように裏返っている。
「そいつは呪われておる! 触れれば手が腐り落ちるぞ!」
俺は冷たくて硬いものの上に横たわっていた。おそらくコンクリートだろう。首を巡らせると、彼らの姿が見えた。そこは古い駅の巨大なコンコースだった。ドラム缶の中で焚き火が燃え盛っている。人々はその周りに座り、串に刺したネズミを焼いていた。
俺を見下ろすように、3人の男が立っていた。そのうちの1人が、ゼノの胸にブーツの底を押しつけている。ロボットはピクリとも動かず、そのボディは凹みだらけだった。
「呪われてる、だと?」
男は粗末な自作のクロスボウを手に、ニヤリと笑った。
「そんな戯言を信じるかよ、ジジイ。金属は金属だ」
男はしゃがみ込み、ベルトから刃の溢れたナイフを引き抜いた。
『システム……致命的なエラー……防衛プロトコル……使用不能……』
体を動かそうとしたが、言うことを聞かない。全身の血をすべて抜かれたかのように、筋肉が鉛のように重かった。だが、何かしなければならない。もしゼノを解体されたら、俺たちはすべてを失う。
痛みに耐えながら、無事な方の腕に力を込めて上体を起こそうとした。
目標までの距離——3.2メートル。脅威——武装オブジェクト。攻撃成功確率——0%。
「おい」
俺は声をかけた。男はゆっくりと俺の方を振り向いた。
「やっとお目覚めか、あぁ?」男は唾を吐き捨てた。「おとなしく寝てろ。まずこいつを片付けてから、お前をどうするか決めてやる」
クロスボウの金属製のリム(弓腕)に沿って走る微小な亀裂。弦の固定部における金属疲労。
「撃つな」俺は静かに言った。
男は大笑いした。周りの連中もそれに合わせた。
「お前が俺に指示できるとでも思ってんのか?」
男はクロスボウを構え、俺の顔面に狙いを定めた。引き金にかかった指に力がこもる。エフレムは目を瞑った。
「リムだ」俺は呟いた。「左側に亀裂が入っている。引き金を引けば破裂する。破片がお前の首に突き刺さるぞ」
男は眉をひそめた。
「うわ言を言ってんじゃねえ、ガキ。これは板バネの鋼鉄だ、折れるわけがねえ!」
脳内の計算はすでに完了していた。
張力——60kg。構造的整合性——2%。崩壊まで、3……2……。
男が引き金を引いた。
クロスボウのリムが反動で激しく弾け飛び、粉々に砕け散った。男は悲鳴を上げて頬を押さえ、武器を落とした。笑い声が一瞬で消え去る。全員の視線が、床に転がる壊れた武器と……俺の間を激しく行き来した。
男はゆっくりと手を下ろし、指についた血を凝視した。それから、俺を睨みつけた。
「お前……」
エフレムはその隙を逃さず這い寄り、俺が壁に寄りかかれるよう支えてくれた。
「魔法使いだ!」群衆の中から誰かが叫んだ。「殺せ!」
「黙れ!」男は袖で頬の血を拭いながら怒鳴り散らした。「誰もこいつに触るな」
男が近づいてくる。
「お前、これが壊れるのが見えていたな」
「分かっていたさ」俺は息を吐き出した。
男は手下たちと目配せを交わした。
「こいつらを閉じ込めろ」男が命じた。「3人ともだ。いい使い道を思いついた」
2人の大柄な大男が俺の両腕を掴み上げた。別の2人がゼノの胴体を引きずる中、エフレムはその頭部を支えながら、隣をよろよろと歩いていた。俺たちは通路の奥にある、古い切符売り場を改造した即席の牢に放り込まれた。出入り口にはドアの代わりに鉄筋で作られた格子が溶接されていた。床には藁とゴミが散乱している。
「ゼノ?」暗闇に向かって声をかける。
コーナーに横たわる彼のレンズが、弱々しく明滅した。
『機能生存率……7%。外部電源の供給を要求します』
「ここの住人の論理は……まったく解析できないな。なぜ俺たちをすぐに殺さなかったんだ?」俺は言った。
「好奇心じゃよ」エフレムが俺の隣に腰を下ろし、自分のマントを俺の肩にかけながら答えた。
「単なる『好奇心』だとは思えない。いや……今はどうでもいいか。いずれにせよ、ここから抜け出す方法を見つけないと」
「一体どうやってじゃ?」エフレムが太い鉄格子に顎をしゃくった。「お前は息をするのもやっと、ゼノはただの鉄クズじゃぞ」
「分からない……今のところ、解決策は見つからないな」
その時、隣の「房」——もう一つの仕切られた暗闇の奥から、声が聞こえた。女の声だ。
「だったら、あたしには見えてるよ」
俺たちは一斉に身構えた。エフレムは、連中がなぜかボディチェックで見落としたナイフを握りしめる。
人影が、二つの房を隔てる鉄格子へと近づいてきた。遠くの焚き火の微かな光の中に浮かび上がったのは、額に押し上げられたゴーグルと、機械油で汚れた顔。若い女だ。見たところ20歳前後。ダボっとしたエンジニア用のつなぎを着ていた。
「さっきのクロスボウの件、いい見せ場だったね」彼女は鉄格子を掴みながら言った。「あたしは一週間前にあの欠陥に気づいてたよ。『クロト』の顔が半分吹き飛ぶのを待ってたんだけどね。ちぇ、外れか」
あいつの名前はクロトというのか。まあ、どうでもいい。
「お前は誰だ?」俺は焦点を合わせようと目を凝らしながら尋ねた。
「あたしはティラ。この鍵の外し方を知ってる。だけど、条件があるんだ」
「条件とは何じゃ?」エフレムが聞いた。
彼女はニヤリと笑った。
「あたしも連れていくこと」
「なぜだ?」老人が問い返す。
「一週間後にどっかの売春宿で死ぬくらいなら、トンネルの中でのたれ死んだ方がマシだからさ」彼女は答えた。
「いいだろう」俺は言った。
ティラは頷くと、自分の房の暗闇へと消えていった。彼女が金属をいじるガサゴソという音が聞こえてくる。その間、エフレムは重いため息をつき、壁に背を預けて深く寄りかかった。




