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生きる意志は私の最強のスキルだ  作者: Gambo
死の隣り合う世界
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第52話:ジャム

水車小屋から小道を五十メートルほど登ったところにある、岩の突き出た陰に俺は潜んでいた。


「敵を目視確認できる圏内に入った」


ゼノが言った。


奴は斜面の下、古いハンノキの影に身を潜めていた。


残りの充電を節約するため、すでに三時間も微動だにしていない。


俺は茂みの奥を凝視した。


木々の間。


地上から一メートルほどの高さを、三つの青い光球が浮遊し、道を照らしながら小刻みに揺れている。


その後ろを人間が歩いていた。


三人。


二人は軽装の革鎧を身にまとい、ショートソードを携えている。


私の中央の一人は、フード付きの灰色の外套を羽織っていた。


(お前ら、終わりだ)


心の中で呟く。


奴らが倒木の手前まで到達した。


松の葉の層の下には、俺の作った最初の「管」が埋まっている。


エフレムと二人で三日間かけて煮詰めた、あの灰色の汚物を詰め込んだ銅製の薬莢だ。


摩擦式の導火線に繋がれた、細い紐を強く引き絞る。


シュー、シュー、シュー……。


一人が瞬時に杖を掲げた。


頭上の光球が輝きを増し、周囲の空気をイオン化させる。


ドカンッ!


銅管が継ぎ目から弾け飛んだ。


蓄積された圧力が、追手の顔面に向けて猛烈な熱風を叩きつける。


鋭利な砂利と、古釘の破片が混ざり合った爆風だ。


「目が、俺の目がァ!」


一人が悲鳴を上げ、顔を両手で覆いながら膝をついた。


もう一人は辛うじて飛び退いた――。


だが、その左足が、前日にゼノが掘っておいた深い穴へと滑り落ちる。


グシャリ、と骨の砕ける音が響いた。


男は短い悲鳴を上げ、側面に倒れ込んだ。


魔術師の反応は誰よりも早かった。


彼の周囲に「輝く結界」が展開される。


呪文を弾き返すための、半透明のドーム状の障壁だ。


(だが、すでに小道を覆い尽くしている、この濃く刺激臭のある白煙の雲に通用するか試してみるんだな)


俺は思った。


彼の「光の猟犬」たちが煙の中で狂ったように動き回る。


煤や硫黄の微粒子に反射し、光が乱反射していた。


「今だ」


斜面を滑り降り、激しく着地する。


【警告:外傷性ショック。レベル:低。緩和措置を開始――】


煙を突き抜け、真っ直ぐに奴へと突撃した。


足音に気づいた魔術師が、手を跳ね上げる。


その指先から、光の奔流が放たれた。


煙が誘電体として機能し、電撃の一部を拡散させた。


だが、残りのエネルギーが俺の胸を直撃する。


身体が後ろへと吹き飛ばされた。


焦げた革と毛皮の臭いが鼻を突く。


リヒターから剥ぎ取り、上着の下に仕込んでおいた鋼鉄のプレートがなければ、俺は即死していただろう。


魔術師は五歩離れたところに立っていた。


二の撃ち目を放つべく、再び杖を持ち上げる。


「死ね、クズが!」


奴が吐き捨てた。


立ち上がる時間は残されていない。


左手が、濡れた草に滑った。


俺は横に転がり、義手を前方へと叩きつけた。


遠心力が俺の身体を強引に引っ張る。


寒さと固まった潤滑油のせいで感覚の麻痺した鉄の爪が、魔術師のすねに激突した。


ボキリ。


奴は均衡を崩し、絶叫した。


放たれた魔術は虚しく空へと消える。


具体的に奴は、俺のすぐ隣の泥の中に転落した。


それでもなお、奴は杖で俺の目を突き刺そうとしてきた。


俺は呻き声を上げながら、全体重をかけて奴を組み伏せた。


左手で奴の喉を掴み、鉄の義手をその胸に押しつける。


「結界を……解け……」


声を振り絞る。


奴は何かを言い返そうとしたが、俺はさらに力を込めて圧迫した。


その時、影からゼノが姿を現した。


その登場は静かでありながら、酷く不気味だった。


一歩進むごとに、無理に擦れ合うような、キィキィという軋み音が響く。


足を折られた猟犬の一人が、ナイフを抜こうとした。


ゼノは歩みを進め、その腕を容赦なく踏みつける。


男は悲鳴を上げる余裕すらなく、ショックで意識を失った。


ゼノが俺たちの傍らで足を止めた。


彼のレンズが、鈍い緑色の光を点滅させている。


「エネルギー消費:二分間で十四パーセント」


ゼノが低く響く声で告げた。


「関節部の摩擦係数、許容数値を二百パーセント超過」


俺は魔術師から手を離した。


奴は肋骨を折られ、喘ぐように必死に空気を求めていた。


「ゼノ、ここを離れるぞ。本隊が――」


言葉が途切れた。


不意に訪れた静寂の中に、奇妙な音が響いたからだ。


カチャ。カチャ。


ゼノが水車小屋に向けて一歩を踏み出そうとした。


だが、その左足が、歩みの途中で完全に硬直する。


鋭い金属の擦れ合う音が空気を引き裂き、火花が飛び散った。


ゴーレムの巨体が大きく揺らぎ、辛うじて岩壁に手をかけて持ちこたえる。


作動不良ジャム


ゼノが淡々と状況を述べた。


「火薬の残渣が潤滑油に混入した。膝関節がロックされている」


【ステータス:8%】


【極度の疲労。『生きる意志』により、かろうじて意識を維持】


水車小屋の暗闇から、たいまつを手にしたエフレムが走ってきた。


「手を貸せ」


俺は言った。


「ゼノの腕を掴め。後ろに引きずるんだ。本隊が来るまで、あと一時間はある」


「ゼノ」


俺は奴の冷たい装甲に額を押しあてた。


「プランBはあるか?」


「ない」


奴は言った。


短い沈黙の後、俺は指示を飛ばした。


「エフレム、残っている獣脂をありったけ持ってこい」


背中を休めるため、俺は義手のベルトを外し始めた。


「それから、俺の工具箱もだ」

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