第2話:生物学的零度と少しの物理学
崩れかけた石造りの門のところで、ようやく足を止めた。その先にある町は、まるで安っぽい中世映画の書き割りセットのような場所だった。
「生体リソース:ゼロ。心拍数、異常値。筋肉内のグリコーゲンは枯渇」
壁にもたれかかりながら、俺は心の中で状況を整理した。
栄養失調、深刻なビタミン欠乏症、そして萎縮しきった筋肉。正直に言って、骨と皮だけの袋だ。前世の俺なら、デスクで二十時間過ごしただけで腰が痛いと愚痴をこぼしていたはずだ。今の俺なら、あの頃の健康な体と引き換えに、全財産を投げ打ってもいい。少なくとも、当時の俺は自分の限界を知っていた。
「……で、どこへ行くつもりだ?」
門の深い影の中から、しゃがれた声が響いた。
全身の骨が悲鳴を上げているというのに、俺は即座に緊張した。手は反射的に、泥の中から尖った石の破片を拾い上げていた。
次の瞬間、影から一人の老人が現れた。いや、「老人」と呼ぶにはまだ言葉が足りないだろう。薄汚れた灰色のマントを重ね着し、道中の埃を被り、節くれだった木の杖を手にしている。そして、その目だ……まるで俺のすべてをスキャンしているかのような眼光だった。
老人が鼻を鳴らした。その直後、路地裏から例の三人組が飛び出してきた。彼らは荒い息を吐き、怒りで顔を真っ赤に染めている。ベストを着た男が、刃こぼれした錆びついたナタを振りかぶった。
「捕まえたぞ、このクソガキ!」
俺は石を握りしめ、飛びかかろうとした。勝算など皆無だ。だが、老人の杖が空気を切り裂く音がした。
鈍い音がして、先頭の男の膝蓋骨を捉えた。乾いた、骨が砕ける音。男の手からナタが落ち、巨体が泥の中に崩れ落ちた。老人はそのまま素早く二撃目を見舞い、次なる男の喉元を突いた。男は喉を押さえながら、音もなく泥へ沈んでいく。三番目の男は仲間を見て凍りつき、ただ逃げ出した。
老人は長い間、じっと俺を見つめていた。
「子供にしては理屈っぽいな」
老人はゆっくりと言った。「目を見れば、どれほどの経験を積んできたかがわかる。名前は?」
「……アイアン・エバーフォール」
(……この男なら、信用してもいいかもしれない)
「まあいい。森では臆病者から先に食われる」
ゼノ(そう名乗った)は、町の出口の方へ顎をしゃくった。「行くぞ」
一時間ほど歩いた。足元はおぼつかなかったが、脳は熱狂的に周囲の状況を分析し続けていた。空には二つの月が浮かんでおり、俺の脳内で強烈な認知的不協和を引き起こしていた。片方は巨大で銀色、クレーターだらけ。もう片方は小さく、赤銅色で、明らかに回転速度が速い。物理的にこの系が安定を保つなんてことがあり得るのか? 重力定数が違うのか、それとも魔法という名の「宇宙の糊」が働いているのか。
ゼノの住処は、人々が「黒い森」と呼ぶ場所の境界にある、傾いたあばら家だった。室内は乾燥した薬草と煙、そして何か鋭い金属のような臭いがした。老人は黙って、藁の山が積まれた隅を指差した。
「そこが寝床だ。明日からは飯代を稼いでもらうぞ」
投げ渡されたのは、カチカチに硬い黒パンだった。一口噛もうとしただけで、歯茎から血が滲んだ。
「おい、じいさん」
口にパンを詰め込みながら呟いた。「あんた、さっきの杖の動き……速すぎた。ただの技術じゃない。何を使った?」
ゼノは囲炉裏のそばに腰を下ろし、炭をかき回していた。
「魔法だ。正確には『マナ』と言ったほうがいいか」
老人が掌を差し出すと、その上の空気が陽炎のように揺らいだ。俺の内なるアナリストが叫ぶ――『屈折率の局所的な変化!』
「それはどこにでもある」ゼノは続けた。「お前の中にも、石にも、木々にもな。だが、お前の体は……その電荷をうまく留めておけんようだ」
俺は目を閉じ、その「電荷」を感じ取ろうとした。耳鳴りがする。皮膚の下で、かすかな震えを感じた。激しい嵐の前の静電気に、ぞっとするほど似ていた。腕の毛が逆立つ。
「気をつけろ」とゼノが警告した。「準備もなしに放出しようとすれば、血管が蒸発するぞ」
夜、老人が深く規則的な呼吸で眠りについている間に、俺はある奇妙な考えに取り憑かれた。
なぜ、俺はこれほど多くのことを知っている? 軌道計算、質量、あらゆる物理学の知識……前世の俺は科学に興味はあったが、天才というわけじゃなかったはずだ。それに、この奇妙なスキルも……。
「おい、『生きる意志(Will to Live)』」俺は心の中で呼びかけた。「一体全体、どういうことだ?」
返ってきたのは、死んだような静寂だった。
「おい! 聞いているのか。これは一体どういうことなんだ?」
[応答:不可]
(「不可」だって?)
意識が遠のく中、俺は心の中で皮肉な笑みを浮かべた。
(まあいいさ。その方が、面白そうだ)




