第196話:自動迎撃砲
木炭の鉛筆が、分厚い巨大な紙の上で最後の閉曲線を描き終えた。
アイロンは動きを止め、幾何学的な図面、部品の接合部、そして細かな注釈のテキストが複雑に絡み合ったそれをじっと見つめた。
黒鉛で汚れた指先は疲労でわずかに震え、こめかみには鈍い痛みが脈打っている。
完成した図面から木炭の粉を吹き飛ばし、その出来栄えを批判的な目で吟味してから、安堵の息を漏らした。
「よし、完成だ」
誰もいない工房で、彼は静かに呟いた。
重厚な紙を丸めて筒状にすると、アイロンは傍らに立てかけてあった木の杖に手を伸ばし、出口へと向かった。
外はすっかり朝だった。
ドルンハイムはすでにいつもの喧騒に包まれている。
アイロンは中央広場にある木製のベンチへと、ゆっくりと足を引きずりながら向かった。
粗削りなテーブルの端に腰を下ろし、目の前に巻物を置いて、自分のチームを呼び寄せる。
アイロンの姿を見つけると、工房の方から真っ先にダーウィンが駆け寄ってきた。
青年は荒い息をつき、歩きながら袖で顔の煤を拭っている。
「どう、終わったのか!?」
到着するなり、紙の筒を凝視しながら彼はまくし立てた。
アイロンは短く頷いた。
「ああ」
ダーウィンに続いて、他の面々もテーブルの周りに集まり始めた。
マレクがやって来て、その後ろからガストンと数人の作業員たちがゆっくりと追いついてくる。
アイロンはテーブルの端に手のひらを押し当て、巻物を広げた。
乾いた音を立てて紙が真っ直ぐに伸びる。
集まった者たちの前に、細部まで精密に描かれた巨大な兵器の壮大な図面が姿を現した。
ダーウィンとマレクは即座に身を乗り出し、図面を覗き込む。
複雑な幾何学的構造の周りには、技術的な解説が整然と並んでいた。
マレクは眉をひそめ、太い指で行をなぞりながら、仕様書の上部を声に出して読み始めた。
「ええと……砲台の構造。一つ、土台は『海』。内部耐荷重フレーム。装置全体の重量を支え、反動による変形を防ぐ。二つ、装甲板は『オメガ』と『プリズム』の合金。『オメガ』は機構を保護し、振動を吸収して筐体のひび割れを防ぐ。『プリズム』はタレットの過熱を防ぎ、炎魔法から保護する」
ダーウィンは内部構造の複雑さにすっかり魅了され、マレクから続きを読むのを引き継いだ。
彼は中枢機構の配置にのめり込んでいく。
「動力源……中央のコア・カプセルは『混沌』、これが動力源だ。『太陽』が温度を安定させる。そして『オメガ』が防護チャンバー。要するに、これは小型のリアクターだ! 砲身の内部も『オメガ』。集束レンズ……砲身の先端には『天界』の金属が設置されてる。これが『カオス』のエネルギーを細いビームかエネルギー弾に集束させるんだ。アイロン、これってあんたの銃とほとんど同じじゃないか、ただ巨大化しただけで!」
ガストンは二人の話を注意深く聞きながら、全体図と組み立て図を交互に見比べていた。
「つまり、こいつは手動の砲台ってことか」と彼は結論づけた。
「理にかなってるな。取っ手と盾を取り付けりゃ、そのまま陣地に引っ張り出せる」
アイロンは鼻で笑い、自信満々なガストンの顔を見ながら首を振った。
「いや。これは自動砲台だ。図面を裏返してみてくれ」
ダーウィンとマレクは顔を見合わせ、それから分厚い紙の端を掴んで巻物を裏返した。
紙の裏面には、さらに広大な図面が描かれており、そこには細かな文字がびっしりと書き込まれていた。
ダーウィンは即座に身を乗り出し、素早く文章に目を通しながら他の者たちに向けて声に出して読み始めた。
「タレットの前方には『セレスティアル』製の魔法センサーが取り付けられる。こいつが常に動き、マナの変動、エネルギー波長の変化を監視する。そして『発光』が信号を解析してコマンドを発行。その後、モーターがタレットを旋回させ、砲身が照準を合わせる。『カオス』がエネルギーを充填し、『セレスティアル』がパルスを放つ。駆動系は標準的なものだ。歯車、減速機、ウォームギア、大型のリングギア。『カオス』のエネルギーがただモーターを回す……」
ダーウィンは紙から目を離し、アイロンをまじまじと見つめた。
「すげえ……ここまで完璧に計算されてるなんて!」
「俺と知り合ってから、まだ一日目だとでも?」
アイロンは言った。
マレクは考え込むように、図面からエンジニアの顔へと視線を移した。
「よく考えられてるのは分かった」と彼は言った。
「だが、具体的にどこにこの砲台を設置するつもりだ?」
アイロンは少し身を乗り出し、テーブルの端に両手をついた。
「選択肢は二つある」彼は静かに答えた。
「一つ目は、砲身だけが地上に出るように地中に埋め込むことだ。これなら機構自体への完璧な防御になるし、奇襲性もある。二つ目は、俺たちの塔の上に大砲を設置すること。あそこなら見晴らしは格段に良いし、射程距離も伸びる。ただ最大の問題は、塔の上にこれだけの構造物を建設して固定するのが、地上でやるより遥かに難しいってことだ」
「ってことは、地上の方がいいのか?」
ガストンが尋ねた。
「ある意味ではな」アイロンは頷いた。
「おそらく、両方を組み合わせることになるだろう。二基は塔の上に設置し、残りの三基は外周に沿って地中に埋め込む」
広場に短い沈黙が降りた。
ダーウィンは巨大な図面からアイロンの顔へと視線を移す。青年は喉元に不安がこみ上げてくるのを感じた。
「アイロン……」ダーウィンが静かに尋ねる。
「でも、どうしてこんなものを一気に作ってるんだ? 俺たちに、本当に深刻な危機が迫ってるのか?」
「今のところはな」
アイロンは短く切り捨てた。
「だが、遠からず直面することになるだろう」
少し間を置き、それから言った。
「だから、死にたくなきゃ働け!」
男たちは一斉に息を呑み、残っていた僅かな気の緩みも完全に吹き飛んだ。
「わかった。やるしかないな」
マレクが全員を代表して真剣に答えた。
作業員たちは即座に動き出し、話し合いを打ち切った。
少し離れたところに立っていたクララが、倉庫から必要な鉱石を運び出し、溶鉱炉の坩堝を準備するようにと、大きな声で男たちに指示を出し始める。
作業員たちがそれぞれの持ち場へと散っていく中、テーブルの上で聞き覚えのある衣擦れの音がした。
エリリアがアイロンの元へ飛んできたのだ。
木の表面に残された図面を見つけると、精霊は目に見えて活気づき、エンジニアの顔の真ん前で滞空した。
「あ、あんたの新しいおもちゃね!」
彼女は複雑な図面を好奇心旺盛に覗き込みながら叫んだ。
「前はこういうの嫌いだっただろ」
アイロンが言う。
エリリアは腕を組み、極めて真面目な顔つきで顎をツンと上に向けた。
「私が大人になっただけよ」
(大人になった? 本気で言ってるのか?)
彼女を見ながらアイロンは内心で鼻で笑ったが、その話題を掘り下げることはしなかった。
杖に寄りかかりながら、すぐに本題に入る。
「エリリア、ノアはどこだ?」
「寝てるわ」彼女は短く答えた。
「たぶん、今日はもう目を覚まさないと思う」
「そうか」
「おい、アイロン! 準備できたぞ! 炉に火も入れたし、型枠も埋めた!」
叫び声が響いた。
鍛冶屋の一人が勢いよく手を振り、エンジニアを呼んでいる。
「よし、行くか。お前も少し手伝え」
彼らはドルンハイムの東端へと向かった。
最初の地下砲台の設置場所は、丸太小屋の間に広がる死角をカバーするためのデッドセクターだった。
作業は瞬く間に活況を呈した。
エリリアは重い土台のフレームや、巨大な駆動部のパーツ、そして装甲板を空中に浮遊させ、あらかじめ掘られていた深い穴の中へと慎重に下ろしていく。
アイロンは穴の縁に立ち、その過程を注意深く見守っていた。
彼が直接口出しする必要はほとんどなかった。
マレクとガストンは、型枠への溶けた金属の流し込みを完璧に指揮していた。
他の男たちもほとんど無言のまま働き、ただ図面の設計図と照らし合わせては、歯車を完璧に噛み合わせ、減速機やウォームギアの隙間を確認していく。
数時間後、重いハンマーの轟音と冷えゆく鋼の立てるシューという音を遮るように、クララの声が広場に響き渡った。
「お昼よー!」
煤と灰色の埃にまみれた疲れた作業員たちは、長いテーブルへと向かった。
スプーンを鳴らしながら、男たちは熱い食事をかき込み、『オーシャン』製の土台にリングギアがどれほどしっかりと噛み合ったかを大声で話し合っている。
ダーウィンが得意げに何かの作り話を披露してマレクを野太い声で笑わせる。
その間、エリリアは彼らの頭上を飛び回りながら、みんなの皿の中身を興味津々に覗き込んでいた。
アイロンは少し離れたところに座り、無言で自分の分の食事を噛みしめながら、その喧騒を眺めていた。
クララが空になった食器を集め終えるか終えないかのうちに、作業員たちは次々とベンチから立ち上がり、再び自分の作業場へと戻っていった。




