第194話:次のステップ
疲労困憊した村人たちがそれぞれの家へと帰り、ドルンハイムは徐々に静寂に包まれていった。
エリリアはアイロンの前に少しだけ滞空し、急用があるからと素っ気なく告げた。
アイロンは疲れた様子で短く頷いただけだった。「ああ」
精霊は暗い木々の間に姿を消し、キャンプは完全に無人となった。
誰もいなくなった工房前の踏み荒らされた広場に、ノアだけが残っていた。
真っ暗闇の中、彼は武器を固く握りしめ、微動だにせず立っている。
深く息を吸い込み、目を閉じて、意識のすべてを集中させる。
鋭く気を引き締め、全身の血流を意図的に右腕へと集中させた。
鋭く振り抜かれた刃が風を切る音を立てたが……何も起きない。
ノアは歯を食いしばり、元の構えに戻る。
再び集中し、血を巡らせる。そして、振るう。
「クソッ」
胸の奥から、くぐもった声が漏れた。
もう一度振り抜くが――やはり何も起きない。
「クソッ!」
ノアはさらに速く、さらに力強く同じ動作を繰り返した。
「クソッ! クソッ!」
渾身の振りも空振りに終わる。荒い息をつきながら、ノアの中で何かが弾けた。
怒りに任せ、武器を地面に叩きつける。
「何なんだよ、クソが……!」
虚空に向かって、低く唸った。
ノアは仰向けに倒れ込み、湿った土の上に大の字になった。
数分間、ただ無言で星空を見上げていた。
はるか遠くの光を指先で掴もうとするかのように、ゆっくりと右腕を天へ伸ばす。
その声は、消え入るような囁きへと変わった。
「ごめん、じいちゃん……ばあちゃん……。俺は、二人を救えなかった。それに、あいつらのことも……救えそうにない」
ノアは口をつぐんだ。
己の無力さが胸の奥で煮えくり返るのを感じていた。
「どうすればいい……」
空を見つめたまま一瞬動きを止め、それから両手を顔に押し当てて頭を振った。
ほんのわずかな弱音を、思考から力ずくで追い出すように。
「いや」
立ち上がりながら、自分に言い聞かせるようにきっぱりと言った。
「前に進まなきゃならない」
ノアは投げ捨てた武器に歩み寄り、それを拾い上げた。
刃を衣服で綺麗に拭うと、再び戦闘の構えをとった。
一週間が過ぎた。
ドルンハイムは過酷な労働の活気に満ちており、七日目の終わりには、組み立て広場にすでに四体目のゴーレムが立っていた。
疲労困憊の作業員たちが巨大な機械の周りをせわしなく動き回り、装甲の最後の留め具を締め上げている。
少し離れたところに立つアイロンは、その構造を注意深く見分していた。
「離れろ」
静かに、だがはっきりとした声でアイロンは指示を出した。
この一週間ですっかりその手順に慣れきった作業員たちは、広場の端へと後ずさる。
アイロンは拳銃を取り出し、撃鉄を起こし、ゴーレムの胸のど真ん中に向かって発砲した。
再び耳を劈くような轟音。
見慣れた赤いエネルギーの強烈な閃光と、金属が砕け散る乾いた破砕音。
機械はただの鉄屑と化した。
だが、その直後、組み込まれた物理アルゴリズムが作動する。
一秒後――ゴーレムは傷一つない装甲を輝かせ、再び微動だにせずそこに立っていた。
(一週間で四体のゴーレムか。少なくとも七体は狙っていたが、悪くない結果だ)
武器を収めながら、アイロンは内心で評価を下した。
だが、群衆に向かって口にしたのは、疲労の滲む指示だった。
「今日はここまでだ。皆、よくやってくれた」
男たちは安堵の表情で凝り固まった背中を伸ばし、解散し始めた。
その間、アイロンは杖に重く体重をかけながら、ゆっくりと自分の工房へと向かった。
どうにか作業場にたどり着くと、安堵の溜め息とともに椅子に腰を下ろし、杖を脇に置いた。
(『竹馬』より一本杖で歩く方が、間違いなくきついな)
彼はそう思った。
アイロンの視線が作業台に落ちる。
工具の横には、この一週間で組み立てた四丁の拳銃がきれいに一列に並べられていた。
(七日で四丁か)
こめかみを揉みながら、彼は暗い思考に沈む。
(手作業で組み立てていては、キャンプの全員に拳銃を配るだけで一ヶ月以上かかるぞ)
アイロンは首を振った。
(いや、村の全員か)
遅すぎる。これでは防衛線など構築できない。
桁違いの規模が必要だ。
アイロンは椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見つめながら、頭の中でいくつかの選択肢を検討し始めた。
(巨大なリアクターを設計するか?)
すぐに首を振ってその考えを打ち消す。
ダメだ、今の状況ではただの無駄遣いになる。
(なら、偵察用ドローンはどうだ?)
アイロンは片眉を上げ、鼻で笑った。
なぜわざわざマイクロチップなんかと格闘する必要がある? 俺たちにはエリリアがいるじゃないか。
あいつはドローンそのものだ。飛ぶのは速いし、何でも見えるし、隠密性も完璧。
これは却下だ。
(それなら、敵の目をくらませるための巨大な固定式サーチライトか? それとも、正門用の超大型火炎放射器か?)
その考えに行き着くと、アイロンは手のひらで目を覆い、少しヒステリックに声を殺して笑った。
単なる過労のせいで、とんでもなく馬鹿げたアイデアばかり浮かんでくる。
全く別のアプローチが必要だ。
自動化され、自律的に動き、人間の介入なしで敵を束にして薙ぎ払えるもの。
それでいて大規模なもの――たった五基あれば、ドルンハイムの外郭防衛線を完全にカバーできるような代物だ。
アイロンはパッと目を開き、姿勢を正した。
「自動砲台か?」
白紙を引き寄せ、鉛筆を手に取り、メカニズムの最初のラフスケッチを素早く描き殴る。
「こいつがベストだな」
アイロンの工房で鉛筆の音が激しく鳴り響いていた頃、ダーウィンは医務室に身を潜めていた。
彼の体調は万全だったが、アルバートの静かな診療室は、組み立て広場で地獄のような一週間を終えて息を抜くには最高の場所だったのだ。
二人は雑談を交わし、完成したばかりのゴーレムの技術的な詳細や、銃撃された後に自らを再構築する能力について語り合っていた。
アルバートは清潔な布で医療器具を磨きながら、診療台に座っている青年に横目を向けた。
「本当に今夜は私と話をして過ごす気かい?」
医師は静かに尋ねた。
ダーウィンは思考の海から顔を出し、驚いたように眉を上げた。
「何の話だ?」
「いやね、今は共同キッチンで若い娘さんたちが食事の支度をしているから」
アルバートは遠くから人々のざわめきが聞こえる窓の方へ顎をしゃくった。
「だから……君はあっちにいた方が自然じゃないかと思ってね」
ダーウィンは瞬時に耳まで真っ赤にし、憤慨して背筋を伸ばした。
「俺を誰だと思ってるんだよ!」
アルバートは彼の方に顔を向けすらせず、ただ静かに笑った。
「まあまあ。君の年齢なら、そういう考えを持つのは悪いことじゃない。むしろ年相応だろう」
「そうかもしれないけど」
ダーウィンは急に冷静になり、その顔は普段見せないほど真剣なものになった。
金属の切り屑がこびりついた自分の両手を見つめる。
「でも、今の俺にとって一番大事なのは、アイロンの頼れる支えになることなんだ」
「あんただって、彼がどれだけ自分を追い詰めているか見てるだろ。文字通り設計図の上で眠り、過労で倒れる寸前だ。一体何のためにあそこまでやるんだ? 何があそこまで彼を突き動かしてる?」
アルバートはピンセットを置き、青年に向き直ってじっと彼を見た。
「さあね、ダーウィン。アイロンの頭の中には、彼なりの悪魔が棲んでいるのだろう」
医師は静かに答えた。
「だが、私の意見を言わせてもらうなら、君はもう十分に彼の頼れる支えになっているよ」
「君の腕と、彼のアイデアに対する献身がなければ、あの鉄の機械の半分は、紙の上のただの落書きのままだったはずだ」
ダーウィンはその率直な言葉に目に見えて狼狽した。
照れくさそうに後頭部を掻き、窓の方へ視線を逸らしてボソボソと呟く。
「ありがとう、多分……。でも、俺は自分が十分やったなんて一秒たりとも思ってない。もっと働き続けないと」
一方、共同キッチンでは慌ただしく作業が進められていた。
クララは他の少女や女性たちと一緒に夕食の準備をしている。たき火の上には大鍋が置かれ、空中に煮込んだ肉と根菜の香りが漂っていた。
入口にノアが姿を現した。
彼は森で仕留めた獣の死骸を床にそのままドサリと投げ落とした。
「ありがとう、ノア」
クララは野菜を刻む手元から目を上げずに声をかけた。
ノアは無言のまま背を向け、再び外へと出て行った。
上空からその様子を眺めていたエリリアは溜め息をついた。
彼女はすでに一時間もドルンハイムの上空を当てもなく飛び回り、村の上で円を描き続けていた。退屈のあまり、文字通り眠りに落ちそうだった。
下に見知った姿を見つけると、彼女は石のように急降下し、ノアの顔のすぐ目の前で停止した。
「あんたって、酸っぱい木の実を袋ごと丸呑みしたみたいな顔でいっつも歩いてるわよね」
彼女は行く手を遮りながらからかった。
「一度くらい笑ったらどうなの? あんたのその怖い顔のせいで、もうすぐ木まで怯えて実をつけなくなっちゃうわよ」
「黙れ」
精霊の方を見向きもせず、彼は冷たく言い放った。
エリリアは憤慨して両手を広げ、空中で宙返りをした。
「まず、あんたが黙りなさいよ! それに、なんでそんなにつまらない男なわけ?」
「ちょっと手合わせでもしない? 最近やってなかったでしょ。どうせ寝ないんだから、少しは気晴らしになるんじゃない」
ノアは立ち止まった。
エリリアを見て、それから暗い森の方へと視線を移す。
「……いいだろう」
短く同意した。
その頃、マレクとガストンは組み立て広場で立ち尽くしていた。
二人は黙ってゴーレムを見上げている。
「ガストン、この森にこいつらを倒せるようなモンスターが一匹でもいると思うか?」
マレクは腕を組み、静かに尋ねた。
ガストンは機械の巨大な肩をじっと見つめ、ゆっくりと答えた。
「分からん」
ようやく息を吐く。
「だが、正直なところ疑わしいな。いないだろうと思う」
そこへルナが駆け寄ってきた。
彼女は男たちと同じように首を反らせ、同じ眼差しでゴーレムを見上げた。
「ルナ、お前もこのゴーレムがモンスターの群れに耐えられるか気になってるのか?」
彼女に気づき、マレクは微笑んだ。
「うん」
少女は金属の巨体から目を離さずに頷く。
マレクは少し黙った後、話題を変えた。
「エイデンとカイデンはどうしてる? 元気か?」
「エイデンは家で寝てる」ルナが答える。「カイデンが面倒を見てるよ」
数秒後、彼女は突然ハッとして、小さな足で地面をドンと踏んだ。
「あ、違う! 私、何しに来たんだっけ? 私たちだけじゃ料理の手が足りないから、手伝ってもらおうと思って呼びに来たんだった!」
マレクは迷わず頷いた。
「もちろん、行こう」
そして彼らは連れ立って、共同キッチンへと向かった。




