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第187話:異世界への扉

一週間はあっという間に過ぎ去った。


だが何より重要なのは――ついに、あの忌々しい車椅子とおさらばできたことだ。


今の俺の移動手段は、前腕を支える二本の杖。


俺が冗談めかして「頑丈な棒」、あるいは単に「松葉杖」と呼んでいる代物だ。


毎朝、苦労して敷居を跨ぎ、ポーチに出る。


そこで真っ先にするのは、空を見上げ、塔を眺めることだった。


ドルンハイムにも、ようやく相対的な安全が訪れたのだ。


歩くという単純な動作だけで息を切らしながら、俺は工房へと戻った。


杖を突き直し、安堵の溜め息とともに木製の椅子に腰を下ろす。


ほんの数日前、自分で急造したものだ。


「棒」を作業台に立てかけ、包帯の巻かれた自分の足首をじっと見つめる。


(初日は八歩、二日目は十二歩。今日は倉庫との往復まで歩き切った……)


心の中でそう計算する。


凄まじい進歩だ。


毎日何度も、アルバートの医務室まで治療に通った甲斐があった。


椅子の背もたれに寄りかかり、目を閉じる。


あと一秒もすれば眠りに落ちていたところだが、不意に、ある記憶が脳裏に閃いた。


(そうだ……エリリアに、噴水と『瞑想の庭』を造るって約束したんだった)


せっかく両手が自由になったんだ。図面に向かうには絶好のタイミングだろう。


木炭筆を手に取り、思考を巡らせる。


上質な素材が必要だ――高密度で、多孔性の極めて低い、頑丈な白、あるいは明るい灰色の石。


この土地で採れる、大理石に似た石が理想的だ。


指先が紙の上を滑り、慣れた手つきで最初の線を描き出していく。


水の淀みやノズルの詰まりを防ぐための、液体循環の配置。


一立方メートルもの水圧で土台がひび割れないための、中央の鉢の重量分散計算。


簡単に言えば……こぢんまりとした、美しく整った水盤だ。


中央の装飾部から水が滑らかに湧き出し、下段の石の階層へと穏やかに流れ落ちる。


余計な水飛沫を上げず、心地よい環境音だけを奏でるように。


石の質感に陰影をつけ、最後の仕上げを施して筆を置く。


噴水の水力ユニットと、外装の図面が完成した。


出来上がった噴水の下書きを傍らに避け、俺は再び杖へと手を伸ばした。


プラスチックの袖口カフに腕を通し、力を込めて立ち上がる。


足首に走るいつもの痺れを押し殺し、工房の扉へとゆっくりと歩みを進めた。


ドア枠に肩を預け、扉を押し開けて声を張る。


「エリリア!」


瞬時にして、エリリアが目の前に実体化した。


「どうしたの、アイロン?」


「ちょっと考えてたんだが……お前の庭のプロジェクト、進めるって約束したよな」


「今、図面に向かってるんだが、そのエリアをどんな風にしたいのか見当もつかなくてな。お前の意見が要る。どんなイメージを持ってるんだ?」


エリリアは硬直した。


半透明の羽が一時的に羽ばたきを止め、彼女は空中でぴたりと静止する。


次の瞬間、その体が眩く光り輝いた。


「ええっ!?」


俺の耳がキーンと鳴るほどの甲高い声。


「お庭!? 本当に!? マジで!? アイロン、からかわないでよ、笑えないからね! 本当だって言って!」


「本当だ。マジだよ」


感情を爆発させたエリリアは、弾丸のように俺へ飛びついて抱きつき、俺の頬に顔をぐりぐりと押し当てた。


「やったー! 始めよう! 来て来て、私が全部案内するから!」


彼女は体を離すと、さえずるように言いながら俺の袖を引っ張った。


「待て」と、俺は制止した。


「まだどこにも行かない。まずは図面からだ」


エリリアは途端に頬を膨らませ、腕を組んだ。


「ええー……それってどうしても必要なの? 今すぐ作れるのに、どうして紙切れなんかに時間を無駄にしなきゃいけないのさ?」


「必要だ」


きっぱりと言い切り、俺は身を翻して、再び椅子へとゆっくり歩みを進める。


「机に座って話せ。お前の言うその『永遠の薔薇の庭』ってのは、どんな風に見えるべきなんだ?」


エリリアは膝を抱え込むようにして、作業台の端に座った。


「うーんとね……柔らかい草がいっぱい、いーっぱいなきゃダメ。何時間でも寝転がっていられるようなやつ」


「それから、木。綺麗で透き通った水も絶対!」


「一言で言えば、風が歌う、理想の自然の隠れ家って感じかな」


彼女の話を聞きながら、俺は思案げに指先で木炭筆を回し、それから口を開いた。


「エリリア。キャンプの扉のすぐ外には、森が丸ごと広がってるぞ」


「草も、木も、小川もある。なんでそれでは不満なんだ? 周りに腐るほどあるものを、どうしてわざわざ一から作る必要がある?」


小さな精霊は憤慨したように鼻を鳴らし、感情を露わにして両手を振り回した。


「何も分かってないね!」


「あの森はモンスターだらけじゃない! ガサガサ音を立てて、唸って、足音をドンドン鳴らして、私の瞑想を台無しにするんだから!」


「しかも、周囲のモンスターを皆殺しにするのはあんたが禁止したんじゃない……!」


「それにね、私には特別な空間が必要なの。えっと……百パーセント快適で、安全な場所。あんたなら作れるって知ってるもん、だってあんたは私たちの天才だもの!」


「分かったよ」


彼女の論理を飲み込もうと努めながら、俺は鼻梁を揉んだ。


「なら、精霊界はどうなんだ? 向こうでなら、静かに座って瞑想できるんじゃないのか?」


エリリアは途端にしょぼくれた。


肩を落とし、羽の輝きも失せ、ただ弱々しくぱたぱたと動いているだけになる。


「飽きちゃったの」


自分の指先を見つめながら、彼女は小さな声で白状した。


「あそこは……その、すっごく退屈なんだ。何もかも単調で、面白いことなんて何一つ起きないし」


「なら、向こうの環境を変えればいいだろ」


何を悩むことがあるのかと、俺は肩をすくめた。


「そんなに簡単なら苦労しないよ」


エリリアは深溜め息をつき、足をさらに縮こまらせた。


「それには、ちょっとした問題があってね……」


「どんな問題だ?」


「向こうで環境を変える権利を得るにはね、精霊たちのトーナメントで優勝しなきゃいけないの」


「でも、今の私の姿じゃ、誰が相手でも負けちゃう。向こうでどれだけ仲良しで温かい関係を築いてようと、トーナメントとなれば誰も手加減なんてしてくれないんだから」


俺は後頭部を掻きながら、彼女の言葉を咀嚼した。


状況は明白になったが、だからといって事が簡単になったわけではない。


「なるほど、理解した」


白紙の紙面を見つめながら、俺は息を吐く。


「だが、お前がどれだけ無茶な要求をしてるか分かってるか? 完全に新しい空間を構築するだけじゃない。お前の思い通りに変化する空間だぞ……」


「とてつもなく複雑だ。不可能に近い、と言ってもいい」


「ねえ、そこを何とか考えてみてよ、お願い!」


彼女は胸の前で両手を合わせ、すがるような、一途な瞳で俺を見つめてきた。


「あんたにとって、不可能なことなんてないでしょ」


「……分かったよ」


どのみち引き下がってくれないだろうと悟り、俺は降参した。


「入り口はどうするつもりだ?」


エリリアは唇に指を当て、一瞬考え込んだ。


「うーん……私たちのハイブリッドハウスの、ドアの一つがいいと思う」


「いいだろう」と俺は同意した。


「向こうにはどうせ空き家もあるしな。お前の要望は聞いた。どこかのドアに、空間の入り口を構築しよう」


「だが、前もって忠告しておくぞ。あまり過度な期待はするな。この手の空間魔法を扱うのは俺も初めてだ。苦戦することになる」


「オッケー!」


彼女は一瞬にしてぱっと顔を輝かせ、先ほどまでの沈んだ考えなど瞬く間に忘れたようだった。


「それじゃあ、邪魔しないでくれ。仕事があるんだ」


エリリアは素直に頷くと、素早い火花のように工房から飛び去り、俺を静寂の中へと残していった。


俺は手の中で鉛筆を転がし、まっさらなページを見つめた。


「ルモン。お前なら、やり方を知ってるんだろ?」


頭の中で、即座に声が響いた。


[いいえ]


「……まあ、いいさ」


鉛筆を握り直し、独りごちる。


「その方が面白い」

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