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第185話:第一歩

ドルンハイム中央広場の新しい一日は、何の問題もなく始まった。


巨大な鋼鉄の獣――防衛塔は、すでに驚異的な高さに達している。


作業員たちの動きには隙がない。


締め具の一叩き、梁の引き上げ、ハンマーの一撃に至るまで、秒単位の正確さで遂行されていた。


「始めろ、エリリア」


アイロンが命じる。


エリリアは瞬時に、硬質な木の蔓と柔軟な枝を編み上げ、強固な昇降プラットフォームを作り上げた。


空気魔法の濃密な奔流に包まれ、その構造体はアイロンと車椅子を安定して支える。


塔の紫色の骨組みに沿って、彼は作業階層へと滑らかに上昇していった。


頂上付近で漂いながら、アイロンは組み立ての様子を注視する。


「そこ、隙間が――」


アイロンが言い切る前に、作業員の一人が遮った。


「上部サポートに隙間あり。修正しろ、ベルトラン、ガストン」


「了解」


二人が声を揃える。


その後も、接合部の角を指摘しようとアイロンが口を開くたびに、彼らは指示される前に修正を終えていた。


アイロンは驚いて瞬きをし、やがて呆れたような、しかし納得したような鼻を鳴らして口を閉ざした。


「彼らも慣れたものだな……」


独りごちて、首を振る。


五時間にわたる絶え間なく過酷な高所作業の末、最終階層がついに完成した。


塔はついに設計通りの頂点に到達した。


最終プラットフォームのために、アイロンは半開放型の屋根を選択した。


頂上を完全に密閉することは不可能だが、野ざらしにするのは危険だ。


重量のある金属ドーム状の屋根が、今や防衛システムの中核を風雨や朝露による凍結から守っている。


同時に、側面に壁を作らないことで、将来的に発生する共鳴波が全方位へと滞りなく拡散し、キャンプを守ることを保証した。


エリリアが蔓のプラットフォームを地上へとゆっくり降ろす。


アイロンは一秒も無駄にせず、車椅子を走らせて作業場の中へと戻った。


メインの作業台で、彼は周波数モジュレーター・カプセルを覆っていた厚手の布を引き剥がす。


それを受け取ると、再び外へと転がり出し、エリリアに合図を送った。


今度は、プラットフォームに時間をかける必要はない。


彼女は濃密な見えざる魔力の流れでアイロンの車椅子を包み込み、塔の最頂部まで直接吊り上げた。


半開放のデッキには、金属製の屋根の下でノアが待ち構えていた。


背を支柱に預け、いつもの無愛想な姿で立っているが、アイロンはその瞳の奥に宿る光を見逃さなかった。


エンジニアはプラットフォームの中央、床に空いた技術ハッチの場所へと車椅子を進める。


アイロンはカプセルを溝にはめ込んだ。


カチリと小気味よい音がして、装置が収まる。


彼の指が手際よくテストケーブルをモジュレーターの端子に差し込むと、ルモンのマトリクスが瞬時に網膜の前に展開された。


(ルモン、周波数回路を初期化しろ)


アイロンは心の中で命じる。


フレームの中でカプセルが低い唸りを上げた。


鮮やかな蒼いエネルギーの奔流が滑らかな側面を駆け巡り、塔のネットワークへと組み込まれていく。


アイロンは大きく息を吐き、仮想スクリーン上で周波数グリッドの設定を微調整した。


「完了だ」


静かに告げ、インターフェースを閉じてノアとエリリアを振り返る。


「防衛周波数を固定した。想定されるドームの半径は約一キロメートル。少し短くなるかもしれない。あとは、夜を待つだけだ」


エリリアが嬉しげに声を上げ、再びアイロンの車椅子を魔法で包み込み、穏やかに地上へと降ろした。


ノアは、そのまま塔から飛び降りた。


コン、という鈍い音が広場に響き、作業員たちが肩を震わせる。


ノアは両足で着地し、小さな土煙を巻き上げていた。


エリリアの空気の流れが車椅子のタイヤに触れ、キャンプの堅い地面に戻った瞬間、待ち構えていたダーウィンが興奮した様子で駆け寄ってきた。


背後には作業員たちが集まり、好奇心で身を震わせている。


「で、どうなんだ? うまくいったか?」


ダーウィンが希望に満ちた目で問いかける。


「設定は完了した」


アイロンが答える。エリリアが車椅子の周囲から魔力を散らしていく。


「信号は安定し、回路は閉じられた。あとは夜を待つだけだ。それまで……少しの辛抱が必要だな」


一瞬の間を置いて、彼は穏やかな口調で付け加えた。


「アルバートのところへ行ってくる。ルモンからの報告によれば、俺の足は完全に再生したらしい。今後どうすべきか、診てもらう必要がある」


広場は一瞬にして静寂に包まれた。


ダーウィンが唖然と瞬きをし、それから驚愕のあまり大声を上げた。


「なんだって!? 足が治ったのかよ!?」


魔力を使い果たして荒い息をついていたエリリアが、アイロンの車椅子に飛びつき、拳を振り回して抗議した。


「それなら、なんでさっき塔の頂上まで運ばせたのよ! 自分の足で登れたじゃない!」


「足が治ったからといって、すぐに立って歩き出せるわけじゃない」


その時、マレクが歩み寄ってきた。彼は微笑み、アイロンの肩に手を置く。


「おめでとう。まさに奇跡だ。だが……地獄のようなリハビリが待っているぞ」


「ああ、分かっている」


アイロンは短く切り捨てた。


「じゃあ、行ってくる」


彼は車椅子を反転させ、医務室へと向かう小道を進み始めた。


エンジニアの背中が角の建物に消えると、ダーウィンが不可解そうに頭を掻き、周囲を見回した。


「おい……今こいつが言った『ルモン』ってのは、一体誰なんだ?」


エリリアが不満げに頬を膨らませて空中に浮かんでいる。


「知らない。アイロン、少し頭がいっちゃってるのかも」


マレクはアイロンの消えた先を見つめながら言った。


「おそらく、俺たちに隠している発明品の一つだろう」


アイロンは胸の高鳴りを感じながら車椅子を転がしていた。


医務室に辿り着き、木の扉を押し開けて中へ入る。


室内にはハーブと乾燥した樹皮、そして鼻を突くような薬の匂いが充満していた。


ちょうど一人の作業員が、肩に巻かれた分厚い包帯を気遣いながら、足を引きずってベッドから離れていくところだった。


アルバートは顔も上げず、カルテに素早く何かを書き込んでいる。


「安静にしろ。三日間は重いものを持つな。さもないと筋繊維が完全に切れるぞ」


医師は患者の方を見ようともせず、低く告げた。


作業員が頷き、感謝の言葉を漏らしてドアの外へ消えていく。


アルバートは深い溜め息を吐き、椅子にもたれかかって、充血した目をこすった。


「また地獄の一週間か……」


天井を見上げて呟く。


「よお、アルバート」


アイロンが静寂を破る。


医師は肩を跳ねさせ、振り返って眉を上げた。


「おや、アイロンか。お前がここへ来るのは珍しいな、特に勤務時間中は。どうした?」


アイロンは医師の机へと近づき、端的に告げた。


「ルモンが、俺の足が完全に再生したと報告してきた。今後どうすべきか、お前の指示を仰ぎに来た」


アルバートは動きを止め、驚きで表情を強張らせた。


「なんだと? 本気か?」


彼はすぐに立ち上がり、机を回ってアイロンをベッドへと招く。


「診せてみろ。もし本当なら奇跡だ」


エンジニアがベッドに移ると、医師は徹底的な診断を始めた。


筋肉を触診し、反射を確かめ、皮膚の状態をじっくりと観察する。


「信じられない……」


アルバートは身を起こしながら呟いた。


「組織は無傷だ。筋緊張は……まあ、衰えてはいるが、確かに生きている。よし、始めよう」


アルバートは棚から、ツンとした匂いのする濃厚な軟膏を取り出した。


アイロンの足の筋肉一つ一つに力強く塗り込み、滞った血流を促し、最初の試練に備えて血管を拡張させていく。


次に、厚手の弾性包帯を取り出し、足首と足の甲をしっかりと固定した。


「最初のステップで関節を痛めないためだ」


エンジニアの疑念に満ちた視線を読み取り、説明する。


準備を終えると、アルバートは隅に置かれたリハビリ用の平行棒を指差した。


アイロン自身が設計図を描いた、磨き抜かれた木製の頑丈な構造体だ。


「立ってみよう。支えるから……」


医師がアイロンの脇の下に手を入れ、体重を平行棒に移そうとしたが、エンジニアは首を横に振った。


「待て。ノアを呼んだほうがいい」


アルバートは一瞬考え込み、頷いた。


「ああ、正論だ。探してくる」


医師は外へ飛び出すと、空を飛んでいたエリリアから居場所を聞き出し、塔のそばで資材の片付けをしていたノアを見つけ出した。


「ノア、今すぐついてこい」


アルバートが声をかける。


「なんで?」


ノアは額の汗を拭いながら医師を見下ろす。


「アイロンが立ち上がろうとしている。支えが必要だ」


医師は短く説明した。


ノアは持っていた梁の破片を投げ捨て、無言でアルバートの後を追った。


医務室に入ると、ノアはベッドの上に座るアイロンを射抜くような目で見つめた。


「で、エンジニア」


薄ら笑いを浮かべて言う。


「立つのか?」


アイロンは覚悟を決め、頷いた。


「ああ。引き上げてくれ」


ノアが近づき、脇の下に手を入れ、一気にアイロンを立たせた。


アイロンは滑らかな手すりを掴んだが、その瞬間、視界がぐるりと激しく揺れ、渦を巻いた。


一瞬前まで力強く感じられた足は、まるでゼリーのように力なく震え、外側へと折れそうになる。


「おい、どうしたアイロン?」


頭の中で耳鳴りが激しくなり、ノアの声が遠く感じる。


「大丈夫か?」


アルバートがエンジニアの肩に手を置く。


「普通のことだ。車椅子に長く座りすぎていたんだ、急な姿勢変化は体にくる。呼吸をしろ。平行棒だけに集中するんだ」


アイロンは歯を食いしばり、白くなるほど強く握りしめた手へと意識を集中させた。


「……大丈夫だ、ノア。少し力を緩めてくれ、掴まっているから」


「ダメだ」


アルバートが断固として遮った。


「ノア、離すな。足首が折れないように、足の裏を支えてやってくれ。一人じゃ無理だ」


「本気か、アルバート?」


アイロンが問いかける。


「ああ」


(クソッ……なんて様だ)


アイロンは自嘲する。


「分かった。進もう」


一歩、数ミリ進むたびに戦いがあった。


ノアは慎重だった。彼は腰をかがめ、アイロンの足の裏を掌で支え、体重移動を助け、足首がくじけないよう補助している。


ゆっくりと、一歩ずつ。彼らは平行棒に沿って最初の区間を制覇した。


「よし、そこで止まれ」


アルバートが全神経を研ぎ澄ませて指示を出す。


「ノア、手を離せ。自力で試すんだ」


ノアは従順に手を引き、半歩下がっていつでも動ける体勢を取った。


アイロンは、自分の体と一対一で向き合うことになった。


手すりを掴む指が痺れ、冷や汗が背中を流れていく。


最初の四歩は過ぎた。


アイロンは深く息を吸い、右足を上げ、前に踏み出す。


次の瞬間、脳内で鋭く激しい痛みが炸裂した。


平衡感覚がゼロになり、奥歯が砕けそうになる。


それでも彼は踏み出した。五歩目。


霞む視界を切り裂きながら、六歩目。七歩目……。


八歩目で、彼の体の蓄えは完全に枯渇した。


アイロンの足から力が抜け、彼は崩れ落ちた。


ノアの反応は速かった。


地面に触れる一秒前、脇の下を掴んで支え、慎重に車椅子へと戻した。


アイロンは肩を激しく上下させ、荒い息を吐きながら床を見つめている。


その両手は激しく震えていた。


「今日はこれまでだ」


アルバートが満足げに頷き、清潔なタオルで額を拭う。


「八歩、合計で。初日にしては最高の結果だ!」


医師は近づき、足首の包帯を整えた。


「さあ、戻って休め。軟膏を処方する。定期的にマッサージをして、血流を維持するんだ」


「いや……」


アイロンは歯の間から絞り出す。指が車椅子の肘掛けに深く食い込んだ。


「まだやれる。俺を持ち上げてくれ、ノア。もう一本だ。続けるぞ」


「英雄ぶるなよ」


ノアが鋭く切り捨てた。


彼は近づくと、車椅子から逃げ出せないようアイロンの肩に力を込めて押し付けた。


「お前の天才的な論理はどこへ消えた? 今お前が歩けば、靭帯を切り裂くだけだ。明日まで待って、少しずつ回復しろ」


アイロンが激しく反論しようとした時、頭の中で静かな声が響いた。


[警告:筋肉の疲労値が限界に達しています。被検体ノアの主張を受け入れ、抵抗を中止することを推奨します。]


アイロンはノアからアルバートへ視線を移し、それから車椅子の背もたれに深く体重を預けて息を吐いた。


「お前もか……」


システムに向かって低く呟く。


医務室に静寂が訪れる。


アイロンは長い時間をかけて、現状を分析した。


「……分かった」


彼は不本意そうに、肘掛けから手を放して同意した。

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