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第181話:ドルンハイムへの手紙

三日前。


ヴァルター隊長は、城の高い階段を早足で駆け下りていた。


その手には分厚い革の筒が握りしめられている。


中には伯爵個人の封蝋が押された、極秘の書状が収められていた。


重厚な城門の前には、屋根付きの頑丈な馬車が、今すぐに出発できる状態で待機している。


四頭の屈強な馬がいらだたしげに蹄で地面を叩き、御者台に座る熟練の男が革手綱の張りを確かめていた。


馬車の傍らでは、四人の護衛が真剣な面持ちで自分たちの装備を点検している。


ヴァルターは部隊に近づいた。


リーダーの前に立ち止まると、書状の入った筒を差し出す。


「何としても、これをドルンハイムへ届けろ」


傭兵の目を真っ直ぐに見据え、ヴァルターは厳格に命じた。


「御意。必ずや」


男は短く答え、受け取った筒を懐の奥深くへと慎重にしまった。


護衛たちは無駄口を叩くことなく、スムーズに馬車の中へ乗り込む。


御者が短く口笛を吹き、鞭を鳴らすと、馬たちは一気に駆け出した。


跳ね橋の板の上で、重い車輪が轟音を立てる。


部隊は全速力で城の敷地を後にした。


荒れた未舗装の道を、馬車は轍に揺られながら一定の速度で進んでいく。


周囲には、うら寂しく殺風景な景色が広がっていた。


出口に一番近い席に座っていた護衛の一人が、分厚い幌をめくって御者に声をかけた。


「あとどれくらいだ、クロン?」


クロンは手綱を固く握りしめたまま、振り返りもせずに答えた。


「丸三日だ。休憩と野営を挟めば、四日はかかる」


「わかった」


ラウアンはぶっきらぼうに返し、幌を下ろして座席に戻った。


幌馬車の中は手狭だったが、四人の傭兵はそれなりに快適にくつろいでいた。


道中の暇つぶしに、彼らは雑談を始める。


「なあ、ロランド。お前、前にドルンハイムに行ったことがあるんだろ? 二年くらい前に」


「ああ、あるぜ」


肩当ての革紐を直しながら、ロランドが答える。


「で、どんなところだ?」男は身を乗り出し、目を輝かせた。「未来の嫁さん、見つかるかな?」


ロランドは深いため息をつき、こめかみのあたりで指をくるくると回した。


「お前は本当に、女のことばっかりだな。少しは成長しろよ、トーリン」


「で、女の子はいるのか? いないのか?」


ロランドは呆れたように首を振り、ニヤリと笑った。


「もちろん、いるさ。だが、お前が相手にされるとは思えないね。むしろ逆に、全力で追い払われるのがオチだろうよ」


「なんだと……?」


トーリンは一瞬面食らったが、すぐに勝負師の笑みを浮かべた。


「ああ、そうかい! なら賭けようぜ! もし俺がドルンハイムで『運命の女』を見つけたら、俺の言うことを何でも一つ聞くんだ」


ロランドは満足げに笑みを深める。


「喜んで。だが、もし俺が勝ったら、お前は半年間女断ちだ。乗るか?」


「乗った!」トーリンが即答する。


二人は握手で契約を交わした。


だが、男たちの笑い声は次の瞬間には途切れた。


ラウアンが手を挙げ、沈黙を要求したのだ。


「怪物の匂いがする。総員、戦闘準備」


彼は険しい声で命じた。


「トーリン、お前の魔法でロランドとオスウィンを援護しろ」


「了解だ。任せろ」


トーリンは頷き、すでに指先に魔力を集中させ始めていた。


外から、耳障りな摩擦音が響いた。


馬車のすぐ目の前で、地面が膨れ上がり、ひび割れる。


御者のクロンは手綱を激しく引き、全速力で走る馬車を急停止させた。


馬たちがパニックを起こしていななきを上げる。


(頼むから、馬たちを怯えさせないでくれよ……)クロンの頭をよぎったのは、その一事だけだった。


引き裂かれた土くれの中から、体長二メートルを超える怪物たちが次々と這い出してきた。


その巨大な獣たちの広い肩には、目のない頭部が二つ乗っている。


そして額の中央では、水晶が鈍い光を放っていた。


ラウアンは腰から四角い小型のデバイスを引き抜いた。


手のひらで強く握り込むと、乾いたクリック音とともにガジェットが展開し、瞬時に戦闘用の弓へと変形した。


「行け!」ラウアンが叫ぶ。


ロランドとオスウィンは走行中の馬車から飛び出し、敵に斬りかかった。


最初、彼らの鋼の剣は甲高い音を立てて怪物の皮膚に弾かれた。


だが、その直後にトーリンが魔法支援を発動させ、仲間の武器を明滅するオーラで包み込んだ。


そこからは早かった。


傭兵たちの刃は怪物の肉に深く食い込み、次々と彼らを切り刻んでいく。


ラウアン自身は馬車の傍らに留まり、弓の即席の弦を引き絞っていた。


弦の上に自然と矢が形成され、黄色い光を放つ。


ラウアンは静かに息を吐き、弦から指を離した。


矢は空気を切り裂き、一番近くにいた双頭の怪物の胸の中心を正確に射抜いた。


こもった破裂音が響く。


強烈な一撃は、怪物の巨大な上半身を文字通り消し飛ばした。


生命を失った下半身だけが、ドサリと泥の中に崩れ落ちる。


戦闘がピークに達した頃、手負いの怪物の一体が部分的な再生を果たした。


獣は無言で突進し、死角から、近接戦闘に夢中になっているロランドの背中を直接狙った。


トーリンは即座に反応した。


脅威に向かって腕を突き出す。


純粋な電気エネルギーが瞬時に彼の手のひらで編み込まれ、迫り来る獣のシルエットを完璧にトレースする垂直の柱となって立ち上った。


狙いを正確に定めるため片目を細め、彼は突き出した腕を勢いよく振り下ろした。


次の瞬間、指先から稲妻が消え、耳を劈くような轟音とともに、極太の雷撃が空から双頭の怪物へと直撃した。


獣は瞬時に黒焦げになり、泥の上へと絶命して倒れ込んだ。


「援護感謝する!」


ロランドは走りながら、振り返りもせずに叫び、残りの敵への攻撃を続けた。


「ああ」息を整えながら、トーリンが短く答える。


数分後、すべてが終わった。


馬車の周囲には、戦士たちの荒い息遣いだけが響く静寂が戻った。


道は泥と死体の入り混じる惨状と化しており、ロランドとオスウィンの全身は怪物の血でべっとりと覆われていた。


「血を洗い流してくれ、トーリン」


黒く汚れた小手を見つめ、オスウィンが嫌悪感たっぷりに頼んだ。


トーリンは両手を振り、呪文を発動させた。


純粋で指向性を持ったエネルギーの奔流が瞬時に剣士たちの体を洗い流し、防具や武器からすべての泥と異形の血を完全に拭い去った。


ロランドが安堵の息をつきながら真っ先に馬車へと飛び乗り、綺麗になった刃を鞘に収める。


「怪物をぶっ倒すってのは、いつだって最高にいい気分だ。だろ?」


「ああ、違いないな」


他の護衛たちも同意し、それぞれの席へとついた。


御者のクロンが大きく口笛を吹き、再び鞭を鳴らして、立ち止まっていた馬たちを急き立てる。


重い馬車が轍を乗り越えてガタンと揺れる。


部隊は真紅の夕陽に向かい、ドルンハイムへの旅を再開した。

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