第171話:ノアの限界
昨日の地下探検は、私たちを完全に疲弊させていた。
今日、ノアの部下たちがツルハシを握る手もおぼつかず、文字通り歩きながら居眠りしているのを見て、私は決断を下した。
採掘班の全員に、強制的な休息日を宣言したのだ。
彼らには体力を回復させる必要があったし、私には、一人で思考にふける時間が必要だった。
工房の中に閉じこもり、重いかんぬきを下ろすと、私は作業台の上に三つの特異な鉱石を並べた。
『ネベスナヤ』、『オメガ』、そして『カオス』。
「お前の仕事をしてくれ、リュモン」
私は疲れた声で呟いた。
目の前のスクリーンが、何百もの紺碧の線で瞬く。
一分が経過し、三次元の図面、回路図、そして技術的なコンポーネントの数々が、私の目の前を明滅しながら浮かび上がり始めた。
【素材のシナジー分析完了。コンセプトパッケージ『魔導弾道小火器』を構築しました】
システムが、目の前にある結晶の物理的特性に重ね合わせるように投影し始めた図面を、私は魅入られたように見つめていた。
手は本能的に工具へと伸び、指先は素早く最初の図面の輪郭を描き始める。
私は即座に、この多様な鉱石のパレットを、それぞれの重要な役割ごとに割り当て始めた。
鉱石『カオス』。
この脈動する真っ赤な結晶は、途方もなく不安定なエネルギーを内包している。
コンバーターで溶かそうとするなど、完全に狂気の沙汰だ。
だが、この爆発力を有益な方向へと導けたなら?
私は、極小の密閉カプセルの構造をスケッチした。
もし『カオス』を銃弾の火薬として使えば、撃鉄の打撃によって凄まじい圧力を生み出せるはずだ。
鉱石『ネベスナヤ』。
紺碧の深い色をした金属の塊は、魔力への感受性から、文字通り微細な振動を放っていた。
最初、私は素晴らしいアイデアを思いついた。
『これを使って、高感度の警報センサーを作ろう! ドルンハイムの周囲に配置すれば、わずかな魔力の揺らぎにも反応して、スパイや敵の魔術師を警告してくれる』
スクリーンに回路図を展開しかけたところで……突然、エリリアのことを思い出した。
二十四時間、休むことなく甲高い声で叫び、鳴り響き続ける警報器の姿が目に浮かんだのだ。
「よし、このアイデアは却下だ」
鉱石『オメガ』。
一方で、この重厚な暗紫色の金属は、ガンスミスにとって真の宝物だった。
その構造は、圧力、振動、そして熱変形に対して驚異的な耐性を備えていたのだ。
私はすぐさま、これを銃身と薬室の材料に指定した。
『オメガ』の合金なら、武器の内部で荒れ狂うカオスを抑え込み、凄まじい反動を吸収して、発砲時に銃身が粉々に吹き飛ぶのを防いでくれるだろう。
時間はあっという間に過ぎ去った。
私は新しい兵器廠の設計に完全に没頭し、ボルトアクション、マガジン、そしてトリガーメカニズムの図面を次々と描き出していった。
ドルンハイムの他の住民たちが、建設中の家々の間を散歩したり、ただひたすら眠ったりして休息を享受している間。
岩だらけの台地の端では、全く異なる空気が支配していた。
本陣からはそびえ立つ巨岩に遮られた、平らな石の空き地。
ノアはその中央に立っていた。
彼の右手が、ゆっくりと剣の柄に添えられる。
シャァンッ!
澄んだ金属音と共に、鋼が鞘を離れた。
次の瞬間、ノアの姿がブレる。
「どれだけ訓練を積んでも、まだ自分の技を完璧なものに昇華させられない」
彼は息を吐き出した。
「一体どうなってるんだ?」
鋭い踏み込みの後、彼の剣が定位置で止まるたび、ほんのわずかな鈍い遅れを伴って空間に波紋が走る。
ノアは深く踏み込み、踵を返して、上から下へと斬り下ろす一撃を放った。
鋭い破裂音と共に、空間の残響が彼の目の前にある花崗岩の巨石を真っ二つに叩き割った。
ノアはピタリと動きを止め、重くしゃがれた息をついた。
柄を握る手のひらがわずかに震え、前腕に痙攣の波が走る。
痛みの波が彼を襲い、歯の隙間から低く押し殺したような唸り声が漏れた。
「なぜだ? なぜ?」
「エリアスとの戦いでは、腕が引き裂かれようとも完璧に決まったのに。だが今は……クソッ」
彼はゆっくりと顔の前に剣を掲げ、鋼に映る自分の顔を見つめた。
「彼女を呼ぶしかないか」
彼はかすれた声で言った。
狂ったように打つ心臓の鼓動を少しでも落ち着かせるため、ノアはゆっくりと剣を下ろす。
「エリリア。出てこい。どこか近くをうろついてるのは分かってるんだ」
退屈を持て余していたエリリアが、彼の鼻の先にポンッと実体化した。
腕を胸の前で組み、ふざけるように彼の頭上を旋回し始める。
「あらあらあら! 私の耳、おかしくなっちゃったのかしら?」
小さな精霊は楽しげにクスクスと笑った。
「偉大で、恐ろしくて、いつも文句ばかり言ってるあのノアが、本当に私を呼んでるの? まさか、この小さな精霊の助けが必要だなんて言わないわよね? フフッ! さあさあ、丁寧にお願いしてみて。そしたら、考えてあげないことも……」
ノアの重苦しい空気を感じ取り、エリリアは瞬時に口をつぐんだ。
鈴を転がすような笑い声が、言葉の途中でピタリと止まる。
精霊の小さな顔が真剣なものに変わり、彼女の周りの空気が突然密度を増した。
エリリアは少しだけ高度を上げ、戦闘態勢をとった。
「いいわ。やりましょう」
彼女は言った。
「でも、後でアイアンに泣きつくのだけは無しよ」




