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生きる意志は私の最強のスキルだ  作者: Gambo
死の隣り合う世界
17/20

第17話:完全なるフラッシュ

焼け焦げた絶縁体と、苦い軟膏の臭い。


それが、昨日の「勝利」が残したすべてだった。


俺はベッドに横たわり、包帯が巻かれた自分の両手を見つめていた。


指先が、まるで自分のものではないように思える。


もっとも、無理もないことだった。


本来なら霧散しているはずの環境下で、『生きる意志』が俺の肉体組織を文字通り再構成リビルドしたのだから。


ゼノは部屋の隅に座り、自分の装備を点検していた。


「一時間後には奴らがここに来る」


彼は振り返りもせずに言った。


「リヒターは回復を待ってくれるような男ではない。奴にとってのお前は、無限の容量を持つバッテリー(蓄電池)に過ぎんからな」


「バッテリー、か……」


俺は上体を起こそうと抗いながら、かすれた声を漏らした。


「自分の評価はいろいろ聞いてきたが、俺の本質はどこまでいっても技術者エンジニアだ」


無理やり脚を床へと下ろす。


猛烈な眩暈が襲い、視界がぐるりと回った。


正面の気密扉シュルーズから堂々と脱出することなど不可能だった。


教団オーデンはすべての昇降機を掌握している。


だが、『下層地平』には一つの特異な構造があった。


テクニカル・ドレイン(技術用排水路)だ。


進入点エントリ:第三冷却系統の排水シャフト。


問題点バグ:油圧シャッターが磁気ロックによって閉鎖されている。


解決策ソリューション:配電盤に局所的な共振レゾナンスを引き起こし、自動制御システムに強制的な緊急排出を実行させる。


「ゼノ、ギルの制御盤コンソールまで行く必要がある。ほんの三分でいい」


俺はこみ上げる吐き気を抑え込みながら、ベッドの縁を掴んだ。


「まともに立てもせんくせに、アイロン」


「なら、俺を引きずってでも連れていってくれ」


あと一歩のところだった。


ギルの作業場ワークショップには誰もいなかった。おそらく定期巡回にでも駆り出されたのだろう。


俺は操作端末ターミナルへ崩れ落ちるようにへばりつき、血に染まった包帯越しに、震える指先を鍵盤キーの上で躍らせた。


脳が断続的に駆動し、記憶の底から設計図の断片を強制的に引き出していく。


システムログ:


『致命的なエラー:セクター4-Bにおいて過負荷を検知。


対応:緊急排出バルブを開放します――』


「そこまでだ!」


リヒターの声が、俺の神経を鋭く鞭打った。


彼は二人の護衛を引き連れ、出入口に立っていた。


その手には、例の記録用結晶クリスタルが握られている。


「失望したよ、ゼノ。計り知れない有用性を証明したばかりの道具を、破壊しようとするなど。アイロン、コンソールから離れろ。お前には次の段階フェーズが待っている」


一歩退く代わりに、俺は最後のコマンドを入力した。


「リヒター」


俺は奴の方を振り向いた。


「『生きる意志』は、ギフト(恩恵)なんかじゃない。呪いだ。そして今この瞬間、あんたはその理由を身をもって知ることになる」


俺は配電盤の、被覆の剥き出しになったケーブルへと手を触れた。


『下層地平』の全エネルギーが排水系統へと一気に流れ込み、磁気ロックを破砕し、教団の制御基盤を過負荷で焼き切っていく。


「走れ!」


ゼノが俺の脇を抱え上げながら叫んだ。


作業場が爆発炎上するコンマ一秒前、俺たちは排水管の暗闇へと身を投げ出した。


化学物質の溶け込んだ冷たい水が瞬時に包帯へと染み込み、狂気じみた激痛を呼び起こす。


激流と死闘を繰り広げること三十分、俺たちはようやく地上へと這い出た。


湿った草の上に大の字になり、灰色の空をただ見つめる。


ゼノが隣にどさりと腰を下ろした。彼は青ざめた顔で、長い間俺を凝視していた。


「二度とするな」


ようやく老人が口を開いた。


「二度と己の肉体を導体コードにするな、い


いな?」


「だが、逃げ切れた」


俺は自分の両手に目を落とした。包帯は引きちぎれ、皮膚は赤黒く変色し、無数の細かい亀裂が入っている。


「分かっていないな、アイロン」


ゼノは疲弊しきった声で言った。


「今までは教団がただお前に興味を抱いていただけだ。……だが、これでお前は奴らにとって完全な『脅威』となったのだぞ」


俺は目を閉じた。


『生きる意志』が不気味に拍動し、血液中から最後の糖分リソースまで残さず搾り取っていく。


そして、一つの思考がどうしても頭から離れなかった。


(どうして、こんなことになってしまったんだ。……もしあの時、別の選択をしていたら)


三日前――。

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