第15話:最初の生徒
プルセーターを封印したのは、てっきり昨日だと思い込んでいた。
だが、現実はそう甘くはなかった。あの安定化ピン(スタビライザー・ピン)が機能しておらず、俺たちは今日、やり残した仕事を終わらせるために再びあの場所へ戻る羽目になったのだ。
幸いにもプルセーターの力は弱まっていたが、それでも今回の封印は、俺たちにあまりにも大きな代償を強いた。
俺たちは沈黙の中で歩いていた。
プルセーターが封印されたことで、周囲の森もようやく緊張を解き、俺たちと同調するように深く息を吐き出しているようだった。
霧は薄れ、後には湿った冷たい空気と、鼻の奥にいつまでも残る強烈なオゾンの臭いだけが漂っている。
俺は最後尾を歩いていた。
一歩、また一歩と。
速度は遅い。なぜか、身体が先を急ぐことを拒絶していた。
『生きる意志』は静まり返っていた。
遮断されたわけでも、抑え込まれたわけでもない。それはただ……沈黙していた。
その静けさが、肉体の疲弊よりもはるかに俺の神経を逆撫でした。
「地面に何か借りでもあるような顔をして、下ばかり見るな」
ゼノが振り返りもせずに言った。
俺は呼吸のリズムを崩さないよう、短く息を吐き出した。
「少し、考えていただけだ」
「見ていれば分かる。お前の思考のノイズがうるさすぎる」
それからしばらく、また無言で進んだ。
足元で枝が折れる音が響き、どこか遠くで鳥が鋭い鳴き声を上げた。
「俺から『よくやった』とでも言われるのを期待しているのか?」
ゼノが唐突に足を止め、こちらを振り返って尋ねてきた。
「いいえ」
俺は即座に否定した。しかし、一呼吸置いてから付け加える。
「……あるいは、ほんの少しは、あったかもしれない」
ゼノがニヤリと笑った。
「お前はすべて正しくやり遂げたよ、アイロン。だが、それで状況が楽になると考えているなら……そんなものは忘れろ」
「なぜだ? 拠点は封印した。全員生きている」
「制御とは、報酬ではない」
老人は目を細め、俺の傷ついた鎧を値踏みするように見つめながら言った。
「それは責任だ。それを得たからといって、自動的に強く、あるいは幸福になれるわけではない」
俺は頷いた。
「もし……いつか俺が間違った選択をしたら?」
思考のフィルターを通すよりも早く、その問いが唇からこぼれ落ちていた。
ゼノは長い沈黙を保ち、残り霧の絡みつく木々の梢を見上げていた。
「その時は、代償を知ることになる」
ようやく彼は口を開いた。
「他の誰もがそうであるようにな。そしてな、アイロン。そのツケを払うのは、他でもないお前自身だ」
彼は背を向け、再び歩き出した。
それから野営地に到着するまで、俺たちは一言も交わさなかった。
正午近くになって、俺たちは拠点にたどり着いた。
他の猟師や魔術師たちは、到着するなりそれぞれの場所へと散っていった。
完全に疲れ果てた様子のカイルは、こちらを一瞥することもなく自分のテントへと消えた。
ブレムは集められた枝の山の上に身を投げ出し、そのまま目を閉じた。
「どうしてあのプルセーターは、あんなにしぶといのよ……」
リーナが疲弊しきった声を漏らす。
「本当に腹が立つわ」
俺は鎧を身につけたまま、小屋の壁に背を預けて座り込んだ。
ただ地面に腰を下ろし、土の冷たさが衣服を通じて染み込んでくるのを感じる。
それが……心地よかった。
五分ほど経った頃、両手が小刻みに震え始めた。
「クソが……」
拳を握り締めようと抗いながら、俺は悪態を吐いた。
立ち上がろうと試みる。
脚は動いたが、感覚がひどく歪だった。
まるで操り人形を動かしているかのようだ。
脳の命令に対して、肉体の反応がコンマ数秒遅れる。
この僅かなラグ(遅延)が、俺の正気を狂わせそうにさせた。俺は再び、丸太の壁に寄りかかるようにして座り込んだ。
呼吸が乱れる。
ブレムのアース(短絡回路)を引き受けた際、その体内に流し込んだ膨大な負荷に対する、肉体の遅れてやってきた拒絶反応だった。
『生きる意志』が身動ぎを始めた。
それはまるで、俺にこう語りかけているようだった。
『私がすべて修復しましょう。私を使いなさい。神経の伝導性を正常に戻し、近道を提供します』
それは囁く。
『ただ私に委ねれば、元の状態に戻れます。あなたがこのすべてを苦痛として感じる必要はないのです』
「……断る」
俺は声に出して言った。
「今は駄目だ。自力で処理しろ」
震えはさらに激しくなった。俺は上体を前に倒し、両肘を膝について、ただひたすら呼吸を繰り返した。
吸って。
吐いて。
緩やかに。
脳裏を戦闘の光景が駆け巡る。
もしアノマリーの一撃がもう少し強かったら?
もしブレムが奔流を維持しきれなかったら?
もし俺が鎧の伝導性の計算を誤っていたら?
気づけば俺は、成功ではなく、起こり得た破滅の可能性ばかりを算出していた。
それは戦闘の最中に想定していたよりも、はるかに膨大な数に上っていた。
ようやく手の震えが収まった頃、今度は猛烈な疲労感が押し寄せてきた。
俺は鎧を外し始めた。
壁に立てかけるたび、骨のプレートが微かに硬質な音を立てる。
見たところ異常はない。あれほどの過負荷を受けたというのに、亀裂一つ入っていないのは奇妙なほどだった。
緩衝装置のシステムは機能した。設計は裏切らなかった。
俺は這うようにしてテントの中へと入り、古びた敷物の上に横たわった。
目を閉じても、眠気は訪れなかった。
思考がぐるぐると円を描き、互いに絡み合っていく。
接着するように、一つの思考が脳裏に浮かび上がった。
『もし、俺が生き延びることを望んでいないとしたら?』
その仮定は、俺の心をただただ重く沈ませるだけだった。
「また何か考えているな、アイロン」
俺は激しく身体を震わせ、無意識に手元で支えを探しながら、声のした方へ顔を向けた。
薄暗がりの広がる右側の壁際に、座っていたのは――。
「ゼノ? あんた、ここで何をしてるんだ?」
「寝ている」
老人は不機嫌そうに声を尖らせた。
「だが、お前とその思考の雑音が耳障りでな」
「……すまない」
「何か胸に閊えているものがあるなら吐き出せ。それで死ぬことはない」
俺は沈黙した。
言葉がうまくまとまらず、喉の奥に引っかかっているようだった。だが、やがて絞り出すように息を吐く。
「どうして、俺を拾ったんだ?」
ゼノがわずかに首を巡らせた。
「どういう意味だ?」
「どうしてあんたは……」
俺は適切な言葉を探して一度言葉を詰まらせた。
「俺を囲い込み、鍛え始めた? 飯を食わせ、居場所を与え……そんな真似を」
俺たちの間に、長い沈黙が降りた。
このまま答えないのではないかと思った。
しかし、老人はようやく重い口を開いた。
「お前が、ある男に似ているからだ」
俺は眉をひそめた。
「誰に?」
「そうだな……最初の弟子、とでも言っておこうか」
俺は肘をついて上半身を少し起こした。
「弟子……?」
だが、それ以上の返答はなかった。
ゼノはすでに壁に寄りかかったまま、規則正しい寝息を立てていた。数秒もしないうちにその呼吸は深くなり――彼は完全に眠りに落ちていた。
俺はしばらくの間、暗闇を見つめながら横たわっていたが、やがて静かに息を吐き出して、再び敷物へと身体を沈めた。
弟子、か。




