第141話:灰色の塵の中の小さな光
爆発から四日目の朝は、ノアが危うく首の骨を折りかけるところから始まった。
彼はコンクリート柱の残骸に座り、左手だけでブーツの紐を締めようとしていた。
突然、左側からはっきりとした音が響いた。
誰かが乾いた枝を力任せにへし折ったような音だ。
ノアは反射的に右へ身をすくませ、無残に破壊された右腕を前へと突き出した。
瞬時に、傷跡から鋭い激痛が走る。
だが、彼が睨みつけた先には、灰色の塵と、いくつかの空箱があるだけだった。
「……クソが」
ノアは掠れた声で吐き捨て、ゆっくりと腕を下ろした。
「ご、ごめん、ノア」
ダーウィンがお玉を拾い上げ、汚れたズボンで拭きながら言った。
「手が震えちゃって。死ぬほど寒くてさ」
ノアは右腕を庇うように抱え、立ち上がった。
アルベルトが縫合してくれたものの、包帯の下にあるものはすべて、依然として絶え間なく脈打ち、痒みを伴っていた。
彼は「グリーンゾーン」へと向かった。
そこは比較的静かで、空気も焦げたプラスチックの悪臭が幾分マシだった。
アルベルトがちょうど、ウェイランド伯爵の包帯を替えているところだった。
伯爵は青白い顔をしていたが、呼吸は以前より深くなっている。
ノアは、エリリアの簡易ベッドへと視線を移した。
彼女は柔らかい苔の塊に覆われていた。
突然、刈り取ったばかりの青草の香りが、一瞬だけオゾンと塵の臭いを押し退けた。
エリリアの寝床が揺れた。
即席のベッドの下に生えていた草が伸び始め、その緑の茎がフレームの脚に巻きつき始める。
「くしゅんっ!」
甲高い音が響いた。
エリリアが苔を跳ね除け、勢いよく身を起こした。
すぐさま両手を顔に当てて、もう一度くしゃみをする。
あまりの勢いに、彼女の身体は宙に数センチほど跳ね上がった。
「うぇっ!」
彼女は鼻をしかめた。
「何よ、この悪臭?」
ノアは立ち尽くした。
その唇が、思わず笑みのような形に引きつる。
エリリアは羽を広げた。
辺りをぐるりと見回す。
「ちょっと、あんたたち自分の顔見てみなさいよ」
彼女は文句を言いながら飛び立ち、ノアの顔のすぐ目の前でホバリングした。
「その腕、どうしたの? 気持ち悪いわね、アルベルト、いったい何で縫ったわけ?」
「手元にあったものだよ。私たちが生きているだけでも喜んでくれ」
エリリアはノアのそばまで飛んでいき、彼の左肩にちょこんと座った。
「白状しなさい。いつもの『勝ったけど、状況は最悪だ』ってのは抜きにしてね。ここはどこ?」
ノアはため息をついた。
「街はもうない。アイアンが『心臓』をオーバーヒートさせた。爆発したんだ。ここは今……野営地と呼べるならの話だがな。四十人余りが、泥と灰の中で暮らしている」
エリリアはノアの肩から飛び降り、アイアンの方へとゆっくり飛んでいった。
彼の胸の上で静止し、その額に両の手のひらを押し当てる。
「アイアン……」
彼女は囁いた。
「馬鹿。ほんとに大馬鹿なんだから」
「どうなんだ?」
包帯を置きながら、アルベルトが尋ねた。
「私は医者だから、外傷なら分かる。だがお前には……明らかに別の何かが見えているんだろう」
エリリアは目を閉じた。
「この中、全部……ぐちゃぐちゃよ」
魔法のメカニズムを平易な言葉で説明しようと、彼女は慎重に言葉を選びながら言った。
「森で木に雷が落ちて、中から焼き尽くされることがあるでしょ? 外側の樹皮はまともに見えても、芯がないの」
「彼の意識は……そこにあるわ」
彼女はアイアンの額を指先でトントンと叩いた。
「戻る道を探そうとしているけど、信号が通らないのよ」
「歩けるようになるのか?」
天幕に入り、入り口で立ち止まったヴァルターが尋ねた。
エリリアは彼の方を振り向いた。
「はぁ。歩く、ですって?」
彼女は苦笑を漏らした。
「今の彼は、小指の先すら動かせないわ。自分の中で道を新しく作り直す時間がいるのよ」
「よし、おしまい! めそめそするのはやめなさい。あんたたちがそんなしかめっ面で立ってたって、彼がベッドから飛び起きてくるわけじゃないんだから」
「ダーウィンはどこ? 酷い臭いがするんだけど。あの子、あれを『ご飯』って呼んでるつもり?」
彼女は弾丸のように天幕から飛び出していった。
外ではちょうど、ダーウィンがブリキの椀に灰色のレンズ豆のスープを注いでいるところだった。
列に並ぶ人々は、うなだれて深く頭を下げている。
「ちょっと!」
呆然とするダーウィンの鼻先で、エリリアがホバリングした。
「あんた、こんなものを皆に食べさせるつもり?」
「エ、エリリア!?」
ダーウィンはお玉を鍋の中に落とした。
「目覚めたんだね!」
「当然でしょ!」
彼女は鍋に近づいて中を覗き込み、嫌悪感に顔をしかめた。
「ここには生姜の根と、活力をつけるためにせめて少しの松葉が必要よ。それに塩! あんたたちの塩はどこ?」
「塩はないよ」
ダーウィンは困り果てたように肩をすくめた。
「何もないんだ。この小麦粉と乾燥レンズ豆しか」
「役立たずね」
エリリアは鼻を鳴らした。
「ノア! ちょっと来なさい! まともな根っこを探すのを手伝って。あの丘の向こうに、無事だったキイチゴの茂みを見たわ」
夕方には、野営地の空気は一変していた。
エリリアはダーウィンにスープを作り直させ、そこに香草をいくらか放り込ませた。
味は好き嫌いが分かれるものだったが、少なくとも今は焦げた塵ではなく、食べ物の匂いがしていた。
日が暮れると、彼女は天幕に戻り、アイアンの胸の上で小さく丸まった。
「私はここに残るわ」
彼女はノアとヴァルターに宣言した。
「彼の意識を、正しい方向へ導いてあげるから」
アイアンの胸の上で横たわり、エリリアは眠りの中で静かに寝息を立てていた。
彼女が息を吐き出すたび、緑色の光の小さな火花がアイアンの皮膚の下へと入り込み、彼の神経系の生き残った糸を探り当てていくのだった。




