第135話:指揮者
息を吸おうとすると、肺が細かい石の粉塵で満たされた。
ルモンは沈黙していた。
使い慣れたデータグリッドのない世界は、平坦で、くすんでいて、窮屈だった。
「アイアン……立て。頼むから」
アルベルトの声が、まるで深い井戸の底から響いてくるように聞こえる。
俺はうつ伏せに転がった。
左腕が言うことを聞かない。
肩が、鈍く脈打つ激痛の塊に変わっていた。
上階、市庁舎のロビーで何かが重く轟いた。
崩落の音ではない。
何かが叩きつけられる音だ。
「奴が入った」
ウェイランドが囁いた。
伯爵はドアの枠に肩を押し当てて立っていた。
視線は一階へ続く階段に釘付けになっている。
手には重いリボルバーが握られていたが、銃身が目に見えて震えていた。
「地下へ行け」
ウェイランドが俺の方を向いた。
「『心臓』へ。この男がジェネレーターに辿り着けば、ドルンハイムも、俺たちも終わりだ。俺たちが食い止める」
「何で?」
俺は血を吐き出し、義肢を支えにして起き上がろうとした。
金属が、石の床を擦って耳障りな音を立てる。
「行け。命令だ」
彼が近衛兵たちに野太い声で号令をかけると、彼らは階段へと続く狭い廊下でファランクスを組み始めた。
壁にすがりつき、俺は百年以上も停止している貨物リフトの方へと這い出した。
技術者用の梯子を降りるのに、永遠のような時間がかかった。
一歩進むたび、頭の中で鐘が鳴り響く。
地下室は、冷媒と湿った土の臭いがした。
主発電室は、緊急用の赤い光に満たされていた。
「ダーウィン! エリリア!」
呼びかけたが、咳き込んで声が潰れた。
配電盤のそばで二人を見つけた。
ダーウィンは膝をついていた。
腕は肘まで、どろりとした腐食性のオイルで汚れている。
冷却パイプの亀裂を防水布で塞ごうとしていたが、凍りつくようなフロンガスが彼の顔に直撃し、皮膚を霜で覆っていた。
「マスター! 彼女が意識を取り戻しません! レンズがオーバーヒートしています、自動制御がシャッターをロックしました! どうすることもできません!」
エリリアが袋の山の上に転がっていた。
肌は灰色に染まり、閉じられた瞼の下で眼球が激しく動いている。
「退け、ダーウィン」
俺はパネルの前に重く腰を下ろした。
「布切れじゃ無理だ。直接接地するしかない」
「ですが、自動システムが……」
見習いは泣き言を漏らした。
「アクセスコードが受け付けられません!」
「コードなんてクソ食らえだ。物理的にバイパスする」
俺は配電ユニットを見た。
本来なら最後の一撃のためにエネルギーを送り込むはずだった巨大な銅製のバスバー(母線)が、重いブレーカーのスイッチによって遮断されていた。
あれを押し込むには、損傷したボイラーのせいで失われた、三十気圧の蒸気圧が必要だ。
あるいは……接点を手動で繋ぐしかない。
端子間の距離は、約三十センチ。
頭上で最初の銃声が響いた。
続いてもう一発。
そして、静寂が訪れた。
どこか港のあたりで、ノアがすでにスキフに辿り着いているはずだ。
奴が船からのエーテル光線で補給を受けている限り、エリアスに対して俺たちに勝ち目などないことを、奴も理解しているはずだと祈った。
「アイアン、何をするんですか?」
ダーウィンの声が、俺の思考停止を突き破った。
俺は義肢の保護カバーを剥ぎ取っていた。
鋼鉄のプレートが、重い音を立ててコンクリートの床に落ちる。
複雑な駆動構造、銅の導線、そして前腕に埋め込まれた『心臓』の小さく脈打つ核が露わになった。
「俺がジャンパーになる」
バスバーを見つめながら言った。
「焼けますよ! 義肢が耐えられたとしても、あなたの肩が……心臓の魔力が、内側からあなたを引き裂きます!」
「八時間なんてないんだ、ダーウィン。八分だってない」
頭上で、地下室へと続く重い樫の扉が崩れ落ちる音が聞こえた。
エリアスが発電室に入ってきた。
その顔には落ち着きがあった。
彼はダーウィンを、意識のないエリリアを、そして最後に俺を見た。
「技術的な異端だな」
静かに彼は言った。
彼の声は、地下室の圧力計のガラスを震わせる周波数で響いていた。
「お前たちは錆びた鉄で祭壇を築き、それが真の光に取って代わると考えた。悲劇的だ」
俺は義肢を最初の端子に押し当てた。
金属が火花を散らす。
失われたはずの指先に、幻の痛みと、盲目的な閃光が突き抜けた。
「貴様らの街はエラーだ」
エリアスが光り輝く杖を持ち上げた。
「不均衡を生み出すエラーだ。お前たちを罰しに来たのではない。方程式を正しに来たのだ」
その瞬間、市庁舎の上空で何かが短く鳴った。
異端審問官のスキフが震えた。
部屋からエーテルの圧力が瞬時に消え去るのを、俺は感じた。
(ノア。お前、やり遂げやがったな)
俺は心の中で呟いた。
エリアスの杖の光が揺らぎ、密度を失う。
最高処刑人が眉をひそめた。
「今だ!」
俺はダーウィンに向かって叫んだ。
「塔への給電を入れろ!」
俺は義肢を前方へと力任せに押し込み、二つの巨大な銅のバスバーの間の隙間を塞いだ。
腕の中で絶縁体が溶けるのを感じた。
肩の血が沸騰し、目の毛細血管が弾け飛ぶのが分かった。
白青の炎の巨大な柱が市庁舎の塔から噴き上がり、垂直に空を突き抜けた。
それは異端審問官のスキフを貫通し、さらに数隻の艦船を巻き込んだ。
一瞬、ドルンハイムの空が、真昼の太陽よりも明るく輝いた。
発電室内で、放電が俺の体を突き抜け、床へと逃げていく。
エリアスが後方へと弾き飛ばされた。
船からの補給を絶たれた彼のシールドは、共鳴に耐えられなかった。
処刑人はコンクリートの壁に激突し、俺は骨が砕ける音をはっきりと聞いた。
俺は崩れ落ちた。
義肢はバスバーに焼き付いて離れず、そこから濃く、刺激的な煙が上がっている。
体の左半分は、完全に麻痺していた。
エリアスが立ち上がった。
白いカフタンは引き裂かれ、額には深く、血を流す傷がある。
彼は自分の手を見つめ、それから俺を見た。
「天の火を己の肉体を通して接地したのか」
静かに彼は言った。
「野蛮だな」
処刑人はくるりと背を向け、歩いて出口へと向かった。
俺は床に横たわり、天井でゆっくりと揺れる赤い非常灯を見つめていた。
(バカが。俺を殺すことだってできたはずだ……もっとも、船からの補給なしじゃ、大したことはできないだろうがな)
俺はあきらめ混じりにそう思った。
ダーウィンが何事か叫びながら駆け寄ってきたが、耳には届かない。
突然、ルモンが動き出した。
[システムエラー。肉体の構造損傷:42%。義肢の致命的なオーバーヒート。緊急シャットダウンを実行します]
「やってたまるか……」
俺は囁いた。
「まだ終わりじゃない……」
俺は首を動かした。
エリリアが袋の上で身じろぎをする。
彼女は目を開けた――その瞳はガラス玉のようだった。
――そしてすぐに、また目を閉じた。
「俺たちは……勝ったのか?」
ダーウィンが、溶け落ちた銅から俺の腕を剥がそうとしながら尋ねた。




