第105話:未来の礎
西側の外壁の頂上に、俺は立っていた。
壁は今や、森を見下ろすように五メートルの高さまでそびえ立っている。
この高さから見下ろす村は、まるで動き出した設計図のようだった。
曲がった柵も、乱雑に建て増しされた小屋もない。
直角に交わる街路。
軍隊が迅速に移動できるように計算されたグリッド。
そして、最初の週に村人たちを駆り立てて掘らせた排水溝。
『対象ステータス:ドルンハイム。外周整合性:94%。物流効率:87%。住民の士気:緊張を伴う安定』
脳内に響くリュモンの声は、すでに聞き慣れた背景音となっていた。
システムは俺の視界に半透明のアイコンを投影し、兵糧の備蓄や門の耐久度を示している。
「またそこに立っているのか、アイアン」
振り返る。
眼下、踏み固められた訓練場の土の上に、ノアが立っていた。
その手には、俺が彼のために特別に鍛え上げた重い木剣が握られている。
俺は壁から下りた。
「喋りすぎだ、ノア。実際にどれだけ上達したか、見せてもらおう」
俺たちは対峙した。
ノアが地を蹴る。
その一撃は、俺の装甲の隙間を正確に狙ってきた。
スキルを使うつもりはなかった。
だが、本能がそれよりも早く動いた。
俺は義手で彼の剣を受け止め、少年の手首をねじ切りかねない勢いで弾いた。
『警告。ニューラルネットワークに深刻な負荷。同期率:52%』
彼の刃から手を離した瞬間、激痛が俺を襲った。
肘の関節を強烈に引き裂くような痛みが走り、込み上げる吐き気に襲われる。
身体がぐらつき、背中を冷たい汗が伝うのが分かった。
「おい、どうしたんだ?」
ノアは剣を下げ、心配そうに俺を見た。
「僕は、君に触れてもいないのに」
俺は息を吐き出し、手の震えを抑え込もうとした。
「何でもない」
すっかり回復した精霊が、俺の頭へと急降下してきた。
「つべこべ言わないの、ノア! 鉄の男はあんたには強すぎるだけだよ!」
「何を言っているんだ?」という顔をノアがする。
「それより鉄の男、わたしの『とこしえの薔薇の庭』はいつ作ってくれるの? 瞑想する場所が必要だって言ったでしょ!」
「安全を確保してからだ。薔薇はそのあとだ」
俺はにべもなく告げた。
朝の静寂を、角笛の音が切り裂いた。
地平線、森の方角から一隊が姿を現す。
重装甲に身を包んだ五人の騎士と、きらびやかな衣服をまとった男。
俺は一人で門へと向かった。
背後の壁の上にはノアが立ち、その手は剣の柄に添えられていた。
「ここの責任者は誰だ?」
外套を着た男が、明らかに驚いた様子で新しい外壁を見回しながら、尊大に問いかけてきた。
「私はウェイランド伯爵の管理官だ。ドルンハイムが灰の中から蘇ったという噂を聞きつけてな。伯爵閣下は慈悲深くも、滞納していた数ヶ月分の税を受け取る用意がある。それから……領主の許可なくこのような強固な砦を築いた理由を説明してもらおうか」
俺は彼を見上げた。
リュモンが即座に計算結果を弾き出す。
『外交的成功確率:4%。推奨行動:主権の誇示』
「ドルンハイムは、もうウェイランドに税を支払わない」
俺の声から感情を排した。
「三ヶ月前、ここに魔物が押し寄せた時、伯爵は民を見捨てて死なせようとした。この村はゼノの保護下で生き延びた。今やここは自由な土地だ」
役人の顔から血の気が引いた。
「自分が何を言っているのか分かっているのか? 君は戦を望むわけではあるまい? なあ?」
「猶予は一ヶ月だ」
俺は背を向けながら答えた。
「虚勢にその時間を使うな」
彼らの一隊が視界から消えると、村に死のような静寂が降りた。
「アイアン……」
ノアが俺に近づいてきた。
「敵は何百人も来る。僕たちはたった五十人だ。武器をまともに扱える者なんて、十人もいない」
「奴らのルールで戦うつもりはない」
俺はノア、ガラット、そして精霊へと向き直った。
「エリリア!」
俺は森の方向を指差した。
「北の火山泉にある純度の高い硫黄が必要だ。運べるだけ持ってきてくれ」
「ノア! 槌を握れる者を全員集めろ。『鉄の筒』の鋳造を始める。ガラット、硝石と木炭を粉砕するための人員を出してくれ」
俺は昨日完成したばかりの鍛冶場へと向かった。
その日は、俺の振るう槌のリズミカルな音と共に更けていった。




