241「『四つ柱』(2)」
「お前は前回もやったろ〜? だから今はちょっと待っとけや、マグダラぁ〜」
マグダラの前に立ちはだかったのは長身ピエロ男だった。
「アザゼル⋯⋯。何よ、邪魔する気? 何ならあんたと先にやってやろうか?」
そんなことを言われたマグダラは引くどころか、『アザゼル』⋯⋯と呼ぶ長身ピエロ男に対してむしろ挑発的な態度で応戦。
「へ〜、殺れんの? お前ごときが本当に俺を殺れんの?」
そんなマグダラの返しにアザゼルも全く引く気がない様子。
それを見ていたアーサーや櫻子ら探索者チームは、
(((((いいぞ、もっとやれ!)))))
と心を一つにしてマグダラとアザゼルの取っ組み合いが始まるのに期待していた。
しかし、そんな二人のピリピリとした一触即発の空気が一瞬にして霧散することとなる。
「いい加減にしろ、二人とも」
「「っ?!」」
ビリビリビリビリビリビリ⋯⋯!
突然、二人より少し奥のほうから腕を組んで仁王立ちする『4本腕の巨漢』が威圧を込めた一声を上げると二人が少し焦った表情を浮かべて一瞬で口論をやめた。
しかもその『4本腕の巨漢』の威圧の一言は、場に彼の実力がどれほどのものかを否応なく実感させることとなる。
(な、なんじゃ、こやつ! あのマグダラやアザゼル以上の威圧が! あいつらよりさらに格上の相手⋯⋯じゃと?!)
(⋯⋯う、嘘だろ? あいつらよりもさらに《《上が》》いるのか⋯⋯)
櫻子やアーサーも奥にいる『4本腕の巨漢』の威圧にかなり動揺していたが、他の探索者たちは二人以上に動揺しており中には、
(あ、あれを倒すってのかよ?! む、無理だ!)
(あ、あああああ、殺される⋯⋯)
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)
とガクガク体を震わせるなど完全に戦意を喪失している者もいた。
しかし、そんな探索者らの動揺など気にすることなく『4本腕の男』が言葉を続ける。
「我々の使命は人間どもにヴァルテラ様の計画の邪魔をさせないようにすることだ⋯⋯わかっているのか?」
「も、もちろんだよ、オーディン! 当たり前じゃん! な、マグダラ?」
「あ、ああ、そうだとも! さっきの私とアザゼルのやり取りだってあれはヴァルテラ様から受けた使命をしっかりと遂行しようとお互いを励ます意味で鼓舞した⋯⋯ただそれだけのことなのだよ、オーディン!」
二人が必死にオーディンに対して苦しい言い訳を展開。
そんな二人の言葉を傍目で見ているアーサーや櫻子ら探索者らは、
(いや、それは苦しいじゃろ)
(いやその言い訳無理筋ぃ〜!)
(そんなでごまかせるか〜い!)
(よ、よし! これで揉めろぉぉぉ!!!!)
と二人の下手な言い訳に「そんなの通用するわけないだろ」とつっこみ、同時に「『四つ柱』同士で揉めろ!」と期待が膨らんだ。⋯⋯しかし、
「む? そうだったのか? それは失礼した!」
(((((⋯⋯え?)))))
その『4本腕の巨漢』⋯⋯オーディンは二人のだいぶ無理矢理な言い訳を全面的に信用したようですぐに自分の否を認めると全力で頭を下げ謝罪。
これを見た探索者らは、
(((((⋯⋯ただの純粋な脳筋だったぁぁぁ!!!!!)))))
とオーディンの気持ちいいほどの謝罪に全員がさっきまでの期待を見事に打ち砕かれた。
「それではどうするのだ? どちらがやるというのだ?」
「わたしが⋯⋯」
「いやここは俺が行かしてもらう。マグダラは前回琉球ダンジョンでも戦って大変だったろうからな(ニィィ)」
「なっ?! き、貴様⋯⋯! それは私が琉球ダンジョンで苦戦したと言って⋯⋯」
「む? 確かにそうだな。マグダラは琉球ダンジョンではだいぶ苦戦したようだからな」
「なっ?! オーディンまで⋯⋯」
「だろう? だから俺が彼女の分も頑張って人間どもに俺たち『四つ柱』の強さを思い知らせようと思うんだ!」
「くっ!? アザゼル⋯⋯どの口が⋯⋯」
「おお、そうか! それは素晴らしいっ!!」
「え? オーディン?」
「なるほど、そうだったか! うむ、アザゼルの心意気しかと受け取ったぞ!!」
マグダラが唖然とする中、オーディンはアザゼルの巧みな話術にあっさりと嵌まったようでアザゼルに対してむしろ全面的に応援するような雰囲気に変わった。
「あ、ありがとう、オーディン! じゃあここは俺に任せてくれよな?!」
「ああ、いいだろう。頼んだぞ、アザゼル!」
そう言ってオーディンを完全に陥落させたアザゼルが櫻子たちに振り返る。
「てことで、こっからもまた俺が相手だ」
「「「「「⋯⋯っ!!!!!」」」」」
アザゼルがニタァと笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。
「一応忠告しておこう。今、お前らに望むのはこの中の『最強』を出せ⋯⋯それだけだ。じゃないと俺がオーディンを《《けしかけて》》一気にお前ら全滅させるぞ? 俺の言っていること⋯⋯わかるな?」
アザゼルが櫻子たちにだいぶ近づいたところでそんなことを小声で言ってきた。
それを聞いた櫻子らもさっきのアザゼルの話術を持ってすればあの『四つ柱』の中で最強だろうオーディンという奴を唆すのは容易だろうと理解する。
(どうする? もはやここはワシが出るしか⋯⋯)
そんなことを考えた櫻子がアザゼルに向かって一歩踏み出そうとした、その時だった。
「引っ込んでろ、櫻子」
「⋯⋯ア、アーサー?」
「この中の最強は⋯⋯世界最強は俺だろ?」
「っ?!」
ニッと少しの笑みを浮かべたアーサーが櫻子よりもさらに前に出てアザゼルの目の前に立った。
「俺が相手だ、ピエロ野郎」
「誰?」
「アレクサンドル・アーサー⋯⋯⋯⋯『世界最強』だ」
「! いいねぇ〜」
アーサーの宣言にアザゼルが醜悪な笑みを浮かべながら嬉々とした返事を返す。
世界最強の男と『四つ柱のアザゼル』が激突する。
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『TS転生者の生存戦略〜Transsexual Reincarnation's Survival Strategy〜』
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