240「『四つ柱』(1)」
「やあやあ、どうもどうも。ようこそ8階層へ〜」
おどけた口調で姿を現したのは、2メートル近いピエロのような厚化粧をした男。
「あ〜ん? なんだてめぇは!?」
先頭のパク・ハサンがこめかみをピクピクさせながら荒い口調で声を掛ける。
「俺らは『四つ柱』っていうんだけど知ってる?」
「あ? お前らが『四つ柱』だ〜?」
「あ、知ってるんだ。いや〜まいったなぁ〜」
パクの怒気を含んだ言葉にも特に意を介さず、相変わらずヘラヘラしながらやり取りを続ける長身ピエロ男。すると、
「⋯⋯パク。下がれ」
「ああっ!?⋯⋯⋯⋯アーサー」
パクを止めたのは、人類最強の男アレクサンドル・アーサー。
「見た目に騙されるな。こいつ⋯⋯相当強いぞ」
「⋯⋯」
普段、冷静さを纏うアーサーが思ってる以上に険しい表情を浮かべているのを見てパクが黙る。
「パク、一旦後ろに下がって覚醒ポーションを飲め」
「⋯⋯それほどかよ」
「ああ」
「!」
アーサーの即答に驚くパク。しかし、
「わかった⋯⋯⋯⋯な〜んて言えるかよ」
「!」
「まずはやってみなくちゃ⋯⋯わからねーだろうが!」
そういうや否や、パクが振り向きざまスキル技を放つ。
「おらぁぁぁ! 疾風連撃っ!」
パクの体がブレる⋯⋯と同時に目の前の長身ピエロ男に一気に接近すると数十の手刀による連撃を繰り出した。
ガガガガガガガガガ!
長身ピエロ男は両腕をクロスさせ、パクの攻撃をすべて受けている。
「おらぁぁ! どうしたぁぁ! こんなもんかぁぁぁ!!!!」
「おお! パクのスキル技すげぇぇ!!」
「やっちゃえ〜!」
他のS級ランカーたちがパクの攻撃に盛り上がる。しかし、
ガシッ⋯⋯!
パクの両腕をしっかりと掴む長身ピエロ男。
「なっ?!」
「うんうん。なかなか良いよ〜。でも⋯⋯⋯⋯この程度じゃ全然ダメだね〜」
「!」
ググググ⋯⋯。
長身ピエロ男がパクの腕を無理矢理外側に開かせる。そして、
ゴガッ!
長身ピエロ男がパクの顔に頭突きをした。
「がぁっ!?」
頭突きを受けたパクが後ろにいたS級ランカーたちのほうへ飛んでいき、さらには、
ドドドドドド!
「「「「「うわぁぁぁぁ!!!!」」」」」
その勢いは止まらずS級ランカーを巻き込んではるか後ろへ飛ばされる。
ピクピクピク⋯⋯。
「パクぅぅっ!?」
パクは体を痙攣させそのまま気を失った。
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「なっ?!」
「そ、そんな、まさかっ!」
パクの優勢だと思い余裕を感じていたほぼ全員が言葉を失う。
「ひゃひゃひゃひゃ! いや〜良い攻撃だったけど俺らを殺るには全然パワー不足だよぉ〜」
探索者らが呆然とする中、長身ピエロ男の煽り全開の笑い声が階層内にこだまする。
「う、嘘だろ! パクのスキル技が全然効いてないだとっ!?」
そんな悲痛な声を上げたのは世界ランカー第4位のルーシー・フェアチャイルド。
「⋯⋯強い」
パクの惨状に苦い顔で呟くのはアーサー。
そんな場が静まる中、声高々に長身ピエロ男が言葉を続ける。
「それで〜? 今のが君たちの最高戦力? だとしたら俺たちには逆立ちしたって勝てないよ〜? ねぇどうなのぉ〜? 終わり〜? ひゃひゃひゃひゃ」
そんな感情を逆撫でするような笑い声が起こる中、
「⋯⋯おい。勝手に何やってんだ、お前」
「そうよ。いきなり始めてんじゃないわよ」
長身ピエロ男の後ろからさらに2人現れる。
「あれは⋯⋯オメガが戦っていた⋯⋯」
「ああ。下半身が蛇の女は『四つ柱のマグダラ』じゃな」
「となると、もう一人が別の『四つ柱』の奴か。しかしそれにしても⋯⋯」
アーサーと櫻子が警戒しながら敵を分析する。
現れた一人は、以前オメガとカルロス具志堅、そして越智ら過疎化ダンジョン凸り隊が琉球ダンジョンでやり合った『四つ柱のマグダラ』。
そして、もう一人は2メートル近い長身ピエロ男よりもさらに身長も体もデカい男でしかも彼は4本の腕がありその腕には短剣が握りしめられていた。
「腕が4本⋯⋯まさしく魔物じゃな。しかもどの手にも剣を持っているとは⋯⋯やっかいじゃ」
「腕がどうこうよりも緑色の肌のほうが魔物らしいと思うのだが? あれはゴブリンの変異種とかなのか?」
「さあな。ただ少なくとも奴らは何らかの魔物を掛け合わせて作られているのは間違いない」
「合成獣⋯⋯みたいなもんか」
「うむ。しかし、この『四つ柱』ども、まだ全然力を出していないようじゃが今の時点でもかなりの魔力を有しているのがわかるのじゃ」
「ああ」
アーサーと櫻子がそんなやり取りをしながら、『四つ柱』の次の動きを警戒していたその時だった。
「櫻子様ぁぁぁぁ!!!!」
「っ!? おおお、おぬしらは⋯⋯」
後方から櫻子の名を叫ぶ《《オネエ》》が姿を現した。
「「「「「カ、カルロス具志堅っ!?」」」」」
ここで6・7階層で戦っていたカルロスたちが櫻子たちと合流した。
「ソフィア様ー!」
「エレーナ!?」
パクがやられたことで意気消沈していた探索者たちだったが、カルロスたちの合流により少しだけ士気が上がる。
そんなテンションが上がる探索者に、
「あら? あなた、もしかして前に琉球ダンジョンでいた人間?」
と声を掛けたのは『四つ柱のマグダラ』。そして、その指摘した人物はもちろんカルロス具志堅。
「覚えてくれてたのね⋯⋯『四つ柱のマグダラ』」
合流していきなりマグダラに声をかけられたカルロスが一気に緊張感を走らせる。
「当たり前じゃない? あなたたちを殺し損ねたんだもの⋯⋯忘れるわけないでしょ」
ゴォォォォ!
マグダラが一気に魔力を放出させる。
「なっ?!」
「いきなりじゃと!」
マグダラのいきなりの魔力放出に驚くアーサーと櫻子。
そんな二人のリアクションなど気にすることなく、マグダラはさらにカルロスに怒気をぶつける。
「ちょうどいいわ。今ここでお前を⋯⋯⋯⋯殺してあげる!」
マグダラがいきなり戦闘体勢に入った。
誰もが「来るっ!」と思った⋯⋯その時、
ザザッ!
マグダラの目の前に立ちはだかった者がいた。
「! 何の⋯⋯つもりかしら?」
マグダラがビキビキと今にもキレそうな形相で止めた相手を睨みつける。
「お前は前回もやったろ〜? だから今はちょっと待っとけや、マグダラぁ〜」
マグダラの前に立ちはだかったのは長身ピエロ男だった。
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