235「合流(3)」
「え? 櫻子⋯⋯様?」
「な、何で、ここで櫻子様の名前が出てくんだよ!」
突然カルロスの口から『櫻子』の名前が出て困惑する二人。
「櫻子様は⋯⋯恐らくオメガやマーレと同じ世界の存在だってこと」
「「ま、まさか⋯⋯っ?!」」
カルロスの言葉にさらなるショックを受ける2人だったが、
「そうか〜? 俺からしたらあんな『のじゃロリキャラ』が異世界の存在って言われたらすげえ納得なんだけど?」
「あ、ああ。まあ⋯⋯」
「う、うん、たしか⋯⋯に?」
「だろ?」
と、越智の説明を聞いて妙に納得がいったようなリアクションを見せる2人。そんな二人にカルロスがさらに説明を加えて行く。
「あのマーレと櫻子様の会話をよく思い出してみなさいよ? 櫻子様はオメガ以上に異世界の存在であることは間違いないと思うわ」
「「⋯⋯」」
カルロスの話しに静かに耳を傾ける二人。カルロスの説明は続く。
「⋯⋯で、櫻子様の持つ能力『空間転移』なんだけど⋯⋯私的にはあれはオメガと同様スキルじゃなくて『魔法』なんじゃないかと思うの」
「何っ!?」
「さらにオメガも櫻子様もどちらも持っているスキルは世界に二つとないスキルなのよ? そんな偶然ある? でもそれが『魔法』だと考えれば納得いかない?」
「た、たしかに⋯⋯」
「⋯⋯つまりカルロス、あんたは櫻子様がオメガと同じマグダラって奴の幻影を消せる魔法を使えると?」
「ええ、そうよ」
「⋯⋯なるほど」
「うん。たしかにその可能性はかなりあるんじゃないかしら!」
「ああ、俺もそう思うよ!」
カルロスの話に3人が盛り上がる。
気づけばさっきまで我王とエレーナを包んでいた大きな絶望のような何かはすっかり消えてなくなっていた。
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「それにしてもオメガ様が異世界にいただなんて⋯⋯。しかも魔法も使えるなんてやっぱりすごいですっ!!」
カルロスの話に一番テンションが上がったのはエレーナ・ツヴァイコフ。
伊達に『オメガ様ガチつよ勢の長』ではないということだろう。
「あー、もうわーった、わーったから! だからそのハイテンションはやめてくれや!!」
我王がストレートにエレーナにクレームを上げる。
しかしそんなのどこ吹く風とエレーナはお構いなしに「オメガ様マジ神!」と一人で盛りに盛り上がっていた。
「さてと、まーとりあえず現状はそんな感じね。でも、櫻子様が本当にマグダラの幻影を消す魔法が使えるかどうかはわからないわよ」
エレーナがハイテンションで騒ぎまくる横で、カルロスが一応の懸念点を皆に伝える。
「大丈夫だカルロスの旦那。実際そうなったら俺が突っ走ってオメガを捕まえてくるから」
そんなカルロスの懸念する言葉にすぐに頼もしい返事を返したのは越智大輔。すると、
「いえ、オメガ様は私が捕まえに行きますので越智はステイで! そしてオメガ様を捕まえた暁には一生離れませんっ!!」
と、ほぼ即答レベルで越智の発言に反応したのはエレーナ。そして、
「「いや、主旨変わってるじゃねーか(じゃないの)!」」
と、エレーナのだいぶ主旨から離れた私的理由の立候補にツッコミを入れる越智とカルロス。
そんな3人のやり取りを外野から眉間にシワを寄せながら「はぁぁ」と大きなため息を吐くのは我王。
「あーうるせー、うるせー! とりあえずそれを確かめるのも含めて急いで8階層に行くぞっ!!」
と、半ば呆れとキレ気味な我王が檄を飛ばすと皆がぞろぞろと我王を先頭に動き出した。
(ふふん、やっぱ我王の奴リーダーシップあるわね。見直したわ!)
こうして一人の脱落者もなく6・7階層の攻略に成功した一行は、櫻子たち世界トップ10ランカーとS級ランカーが進んだ8階層へと向かった。
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——池袋ダンジョン 入口
「ううぅ、本当に来るのでしょうか⋯⋯」
池袋ダンジョン入口にて《《ある人物》》を待っているのは加賀見 響子——彼女は櫻子がいる新宿御苑ギルドの情報室の室長という肩書きを持ち、且つ探索者としてもかなりの実力者である。
普段の彼女は仕事も効率よくこなすため人より2倍3倍と働く。
かといって他人に厳しいこともなくむしろ自分以上に他人には輪をかけて丁寧に接するため部下はもちろん上司からの信頼も厚く、彼女と一緒に働く情報室の多くは『加賀見 響子』を目標にしている者が多い。
そんなキャリアウーマンで向かうところ敵なしに見える彼女も、自分より高ランカーの探索者相手にはずっと苦労してきている。
とはいえ彼女の能力は高いのである程度の高ランカーくらいの相手なら問題なく対応するのだが、しかし、《《ある一定以上》》の高ランカーにはいつも苦労している。
そして現在、彼女はその中でも特に扱いに神経を使う《《最高レベルの高ランカー》》を待っていた。
「ううぅ⋯⋯櫻子様たちがダンジョンに入ってすでに30分経過しているのに⋯⋯本当に来るのだろうか⋯⋯」
加賀見は櫻子の指示でその者を待っているのだが、しかし一向にその気配はしないため彼女は一人焦っていた。
「ど、どうしよう⋯⋯こちらから迎えに行った方が早いかしら? でも行き違いになってでもしたら⋯⋯」
そんな加賀見が判断を迷っているその時だった。
「あれ? あんたたしか櫻子たんの部下の⋯⋯」
「ひあっ!?」
突然、加賀見は背後から声をかけられたことに驚き変な声を上げながら振り返った。
「オ、オメガ様っ!?」
振り向くとそこにはオメガとマーレが立っていた。
加賀見の実力はB級上位またはA級下位に匹敵するほどの実力であるため、そう簡単に彼女が後ろを取られるようなことはなく、実際本人もまたそう自負していた。
しかし今、オメガとマーレの二人が自分の背後に現れたことに1ミリも気づかなかったことを受け、自分とオメガやマーレの実力差が『自分がまったく把握できないレベルでかけ離れていること』に気付かされた彼女は、
「は、はは、まったく気づきません⋯⋯でした⋯⋯」
ただただ笑うしかなかった。
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『TS転生者の生存戦略〜Transsexual Reincarnation's Survival Strategy〜』
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