シカクイ生活
丸く突き出たおなかをさすりながら、自分が四角くなったときを想像してみた。
頭は小さく、足もけっこう細い。おなかだけ出ているので、きれいな四角になれるのか? きっとひし形になるのではないか、などと考えていると、会社に着いた。
やはり、みんな四角くなっていた。
「おはようございます」
「おはよう」
受付嬢の美樹まで四角いことにはショックだった。四角くなっても美人は美人だ。
上司、後輩たちの四角い姿は、滑稽だったり、あわれだったりした。
中でも、部長は台形のようになっていで、歩きにくそうにしている。
「あ、私がやります」
部長の危なっかしい動きは黙ってみていられなかったのだ。
「今日は朝からやけに気がきくな。何かいいことでもあったな?」
部長は少しいやらしい目をして訊いてくる。
四角い人たちを見ているのは飽きなかった。
仕事をするにも、電話をするにも、四角い指や、四角い頭でこなしていく。
午後三時。
だいぶ四角い環境にも慣れてきた。人間の順応能力に感心した。
先週から準備していたプレゼンもうまくいき、順調だ。
外回りの帰りに、コーヒーを飲んだ。四角いコーヒーカップを持つと寒さで失いかけていた指先の感覚が戻ってきた。
会社に戻っても、やはり部長は台形のままだった。
日報を提出し、足早に岐帰路に着いた。




