夜明けとともに
暑いですね。
なかなか大変ですが頑張りましょう。
テントを張り一晩休む。
ちなみにテントは一つだ。俺は男女別にした方がいいだろうと2つのテントを用意していたのだが。
「ばらばらのテントだと何かあった時に対応できないからダメ」
とか
「緊急事態の対処に困りますし、誠也の事を信じていますので問題ありませんよ」
とか言って押し切られてしまった。
俺としては年頃の男女が一緒のテントの方が問題では?と思うのだがそうでもないらしい。
サラが言うには
「一般的に冒険者はテントなんて張りません。誠也みたいに魔法で結界を張れるものも少ないですし魔道具は使い捨てで高価です。普通は焚火を焚いて見張りを置きますよ。私たちの様に結界を張ってテントを張るのは超一流のパーティーだけでしょう。それでも万が一はありますからテントは一つでみんな一緒にが原則です。一般的に男女が一緒にパーティーを組んでいることは少ないですからね。冒険の旅は危険が付きまといますし男女が一緒だと問題も多くなります。特に女性は本当に信頼できる男性としかパーティーは組みませんよ」
との事だ。
確かにな、とは思った。男とはともかく女性は魔物だけじゃなく男に襲われるかもしれないしな。
そういう意味では俺は信頼されているのか? もしかしたらそんな甲斐性は無いから安心とか思われてるのか? どちらにしても嫌われない様にはしようと思った。
そんな感じで一晩を過ごし夜明けとともにテントをたたみ食事をとる。
朝食は俺がアイテムボックスから出したパンとコーヒーと目玉焼きだ。
アイテムボックス内は時間が止まっているのでどれも作りたての味である。
二人とも最初の頃は驚いていたが、すぐに慣れてしまいサラは
「もう誠也としか冒険の旅には出られませんね」
と言っていた。
空が明るくなると昨日見た町の景色がさらに鮮明に映し出される。
まだ結構な距離があるものの、今日中には着きそうである。
問題は草原のように一気に駆け抜けていくと魔物を連れて町に行くことになりそれはとても迷惑だという事。なので少し慎重に魔物を避けて。場合によっては倒しながら進むしかないという事。しかも魔物は結構多いようで、パッと見た感じでも巨大な枯れ木が歩いていたり、岩がゴロゴロ転がって動いていたり。巨大な陸亀が歩いていたり。大変そうである。
食事の後片づけをして装備を整える。
「さていくぞ、今日中にダンジョンシティに着くようにできるだけ魔物を避けて歩いて行こう」
「そうね」
「いきましょ」
先頭はサラ、後ろに俺と遥香がついていく。
サラには魔物の気配を感じる能力があるらしく完璧ではないものの、ある程度は魔物を避けられるとの事だった。
サラの能力のおかげかしばらくは何事もなく進んだ。
ところが、どこからともなく地面が揺れる感じがしたかと思うと、
「二人とも後ろへ飛んで!」
サラが叫んだ。
俺達は反射的に後ろへ飛ぶ。同時にサラが風魔法を使う。
『フライト』
この風魔法は空を飛ぶ魔法ではない。だが、落下速度を極端に遅くする風魔法である。この魔法を使う事でとても遠くまでジャンプ出来たり、長時間空中に留まっていられるが難易度は高く中級魔法である。時価も本来は自分用の魔法をサラはパーティに一度にかけたのであるからかなりの腕と言える。
俺達のいた場所の足元の地面がどんどん崩れていく。見ると地面が円形に崩れていき細かい砂となった地面は円の中心へ吸い込まれるように流れていっている。その真ん中には巨大な蟻が現れていた。
俺達が地面に着地すると目の前まで地面が崩れたものの、ぎりぎり逃れられたようであった。
蟻は崩壊する地面の真ん中に立ちキリキリと口を動かしてこっちをにらみつけている様に見えた。
大きさは高さが2メートルくらいだろうか。長さは5メートルくらいありそうだ。要は人を丸かじり出来そうな大きさの蟻である。たかが蟻でもこの大きさは怖い。
蟻との距離は15メートル程と思われるが、足元は一歩でも前に出ると砂に足を取られて蟻の思うつぼという物だろう。さながらこの砂の範囲がアリの巣という事か。蟻地獄や蜘蛛と似たような感じなのかもしれない。選択肢としては遠距離攻撃で仕留めるか、足元の流砂を止めるか巣を避けて通るくらいなものだろうが、巣をよけても追いかけてこないとも限らない。なので倒しておく方が安全だろうと思う。
とりあえず強化魔法をみんなにかける。
『ミラクルブレス』『マインドスペクトラルオーラ』
このパーティは全員が魔導士である。なので精神力を上げておく。
『ライトアロー』
ニルヴァーナを左から右に横に振りながらライトアローを放つと、連続で光の矢が現れ蟻に向かって飛んでいく。その数15本。サラも弓に風を纏わせて連続で放つ。
光の矢が次々と蟻に命中しその直後にサラの矢も命中する。命中の衝撃で砂ぼこりが舞い蟻の姿が一瞬見えなくなる。しばらくして砂ぼこりが消えるとそこにはダメージを受けた様子のない蟻が変わりなくいてお返しとばかりに口から液体を飛ばしてくる。
反射的に俺は左にサラはみぎによけた。そして遥香は後ろに飛んだ……
液体は地面に落ち煙を上げた。幸い三人とも直撃は避けた。
「きゃぁぁ」
後ろから遥香の悲鳴が聞こえる。振り返ると遥香の服が煙を上げて解け始めていた。
「遥香、服を脱げ早く!」
慌てて叫ぶ。おそらくさっきの液体がかかったのだろう。
遥香は慌てて服を脱ぎ下着姿になる。俺は慌てて駆け寄って怪我がないかを確認する。
サラはその間弓を撃ちながら敵の牽制をしうまく気を引いてくれている。
幸い遥香に怪我は無いようだった。安心して顔を上げると……
”バシッ”
遥香の強烈なビンタが飛んできた。
「なんでだよ……」
「いつまで見てるのよ……エッチ」
「……」
顔を真っ赤にした遥香が手で胸を隠しながら顔をそむける。
「いつまでやってるの? 速くあれを何とかして!」
サラの声で正気に戻る。
「悪い」
そういって俺はアイテムボックスからエアリーボードを取り出す。せっかくもらっておきながらいつも誰かが一緒なせいで滅多に使う事が無かったアイテムだが、練習はかなりやっていた……趣味で。普通のスケートボードと違い浮かんでいるのでできる事が多いのだ。そしてこれに『スペクトラルオーラ』をかけると、とんでもないスピードとパワーで走れるようになる。もちろん扱いは難しくなるが今では十分に使いこなせていた。
俺はニルヴァーナから剣を引き抜き蟻に突撃する前に遥香の方を見た。
遥香は服を着ているのかと思いきや杖を天に掲げていた。
「水竜の羽衣」
杖から水があふれ出したかと思うと遥香にまとわりつきそのまま水のドレスのようになった。
が……俺はすぐに目をそらす。見ていられなかった。
確かにドレスになって遥香を守ってくれているのだろう。防御力も高そうだ。だが、中身が見えるのだ。ドレスの中身が見える。そして、どう見ても中身が裸だとわかる。下着も流されて無くなっているのがわかる。たとえるなら透明な波立つお風呂に入っている姿を眺めているようなものだ。丸見えではないが破壊力はなかなかのものだ。
「遥香それ……人前ではあまり使うなよ……じゃ、行ってくる」
俺は強化したエアリーボードに乗ると蟻の方に向かっていった。
後ろから遥香の悲鳴が再度聞こえた事は言うまでもない。
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