草原の巨人
遅くなりましたすみません。
俺達が小笠原南門を出て三日目。大樹海を抜けた。
どこまでも続くかと思われた大森林は突然消え目の前には広大な草原が広がっていた。
ここまでほとんど魔物には遭遇しなかった。おそらくは小笠原の冒険者や自衛隊が処理しているからだろう。俺と遥香が小笠原に来るときにゴブリンに襲われたのは本当に運が悪かったという事なんだろう。
草原では視界が開けた分巨大な魔物は遠くからでもわかるのだが、そういう物はほとんどいなくて実際の所背の低い小型の魔物や魔獣が多く潜んでいると聞く。油断は禁物である。
「森を抜けたね」
「そうだな、でも油断はするなよ初心者はここでよく大怪我して町に引き返すことになるらしいからな」
「大丈夫です。私がそんな目には合わせません」
「それはそうと、ここで一度休憩しよう」
「え、まだいけるよ?」
「まだお昼には早いと思いますが……」
そう、まだ朝10時半くらいだ普段の休憩のペースから行くと少し早い。なので二人から意外そうな声がでる。
「そうだな、まだ早いんだけどここから少しペースを速めたいし広い所に出たので試しておきたい事もあるんだ。要は作戦会議かな?」
「そういう事でしたら、解りました」
「わかったよ」
二人とも納得してくれたようなので俺は早速魔法で結界を張り、アイテムボックスから椅子やら机やら出して休憩の準備をする。二人には町から出て少ししたところで魔法アイテムボックスの話はした。そして二人が重たそうに背負っていたリュックを取り上げていた。さすがに男の俺が手ぶらで女の子二人がリュック背負ってたりしたら……まずいだろ?
「二人に渡しておきたいものがあるんだ」
そういって俺は以前ダンジョン攻略の時に手に入れたアイテムを取り出す。
「遥香、この杖とカバンを持っていてほしい」
遥香に水竜の杖と時留のカバンを渡す。
「これは?」
「これは以前お前に心配かけまくったダンジョンで手に入れたものなんだけど、俺が持っていても役に立たないからお前に持っていてほしい」
「この杖とんでもない杖に見えるんだけど……かばんもこれマジックバッグよね?」
「ああ、その杖は水の魔法を特に強化してくれるらしい。お前が使うのが一番いいだろうと思う。鞄には予備の食料とかテントとか色々入れてある。100万円分くらいは入ってるから無くすなよ?」
「ふぇ? ひゃくまんって言った? そんな大金どこから……てかそんなの私が持ってていいの?」
「お前が持つのが一番なんだよ。俺は魔法でいろいろ持ってるからそんな鞄はいらないし食料も大量に買い込んでる。サラは前に聞いたんだがサバイバルは得意らしいしいざとなったら魔法で水も食べ物も作れるらしい。万が一俺達がバラバラになった時、そいつの中身が一番必要になるのは遥だからな。無くすなよ?」
「わかった……てか、何度も無くすなって言わなくても……誠也からのもらい物は無くさないわよ……」
「で、サラにはこれをつけていてほしい」
そういってウロボロスの腕輪を渡す。
「これは……ウロボロスの腕輪ですか?」
「知っているのか? さすがだな」
「いえ、見るのは初めてです。というか伝説のアイテムではないですか? さっきの杖と言いどうしてこんなものを持っているのですか?」
「まぁ、そこは気にしないでくれ。それよりこれをサラには付けていてほしい。俺も遥香も治療魔法が使えるから自分の怪我もすぐ治せるがサラは苦手だろう? しかも普段は魔法と弓で戦うようだけど腰のレイピアで直接戦闘もするんだろ? ならそれをつけていてほしい。それをつけておけばそう簡単には死なないからな。でも、油断はするなよ痛みはそのままだから……怪我したら痛いぞ?」
「こ、こんな希少なもの頂けません! それにそういう物なら前線に立つ誠也が付けるべきです」
「いや、俺は魔法で回復できるからさ、問題ないんだって。それにやるとは言ってない。貸すだけだ。せっかくあるんだから使わないともったいないだろう?」
「しかし……」
「いいからつけて置けよ。でないと、お前に何かあった時に俺が後悔する。わかったな」
「はい」
そういって、半ば無理やり押し付けた。
しぶしぶ受け取ったサラは左腕にウロボロスの腕輪を付けた。
その姿はとても似合っていた。
その後、軽く食事をした後、遥香に魔法の試し撃ちをしてもらう。
杖による効果アップの確認をしておかないと本番でいきなりは危険と思われるからだ。
結果は……
ほとんどの魔法が倍程度の効果となっていた。水系統魔法は三倍ほどになっているようだった。巨大な『アイスジャベリン』を頭上に掲げる遥香は怖かった……
「それじゃ、そろそろ行くぞ」
そういって強化魔法をかけると一気に草原を駆けだした。
多少の石や木などはあるが障害になりそうなものは無いので一気に駆け抜けられるはずである。
魔物や魔獣には注意が必要だが、全力で走れば振り切れると思われる。
三人で全力で走っていると遠くに人影が見えてきた。
「誰かいるよ?」
遥香が言う。
徐々に近づいていくとどうも距離感がおかしい……
「あれは巨人だ。特に襲われる事は無いはずだけど念の為後ろの方を抜けるようにするぞ」
そういって少しだけ進む方向をずらす。
「襲われないの?」
「大丈夫らしいな、一つ目巨人のサイクロプスと呼ばれているらしいが、意思疎通は出来ないが特に襲われるという事も無いらしい。こちらから攻撃した場合とこの草原に建物なんかを建てようとした場合はぼこぼこにされるらしいけどな……」
「建物を建てるのもダメなのですか?」
「ああ、多分自分たちの縄張りという事なんだろうな。この草原に道や町が作れない原因があの巨人なんだってさ」
俺達は休むことなく一気に草原を抜け小高い丘の上に着いた。
日は暮れかけて綺麗な夕焼けが広がり目の前にはだだっ広い荒野とそのはるか向こうに街の明かりが見えた。
さすがに夜の移動は危険が伴うため手ごろな場所を見つけて休むことにする。
夜明けとともに街まで一気に駆け抜けるつもりであった。
不定期で申し訳ありません。
引き続き応援していただいている方々には感謝しかありません。
今後ともよろしくお願いいたします。




