マスコミ
翌日……
たまたま土曜日で学校は休みだった。
遥香と加藤さんそして秋野までもが俺と日下部の部屋に来ていた。
「誠也、何があったのか洗いざらい白状してもらいますからね!」
遥香が怖い……
というか女性陣がみんな怖い……
助けを求めるように日下部を見ると、だまって首を横に振られた。
どうやら助けは期待できないらしい。
仕方なく俺はぽつぽつと話始める。
別に悪い事をしたわけでは無いはずなのだが、昨日の様子を見る限り俺が思っていた以上に心配をかけた事は容易に想像できる。だからこそ心に若干の良心の呵責というのだろうか、負い目を感じる事になった。
それゆえに、英雄譚を語るようにとはいかなくて言い訳をするように淡々と話す形になってしまった。
次元の狭間での事とスキュラ戦の後半戦を省いてそれ以外は素直に話す。
すべてを話し終わった後、沈黙が訪れる……
暫くして……
「最後の所は嘘だよね?」
「そうやな」
「嘘」
遥香、日下部、秋野に指摘される。
「誠也がそんな状態で黙って後ろで見ているだけとかありえない」
「お前が補助魔法かけてみてるだけなんてありえへんて」
「絶対一緒に戦ったはず」
三人とも全く信じていない。加藤さんだけがぽかんとしている。
「なんでだよ、向こうは仮にもNo1冒険者のパーティーだぞ? 俺の出る幕なんてあるわけないだろ」
「関係ないと思うな、誠也は一緒に戦った。もしくは誠也が戦ったと思うな」
遥香が怖い
俺は思わず周りを見渡すが、”正直に吐け”という目でみんなが見ている様にしか見えなかった。
助けはやはり無いらしい……
また沈黙が訪れる……
「みんながどう思うかは勝手だが、俺から話せる事はもうない。あきらめてくれ」
話してしまったほうが楽になるだろう。だが、それによって面倒事に巻き込む可能性があるのだから話す事はできないと思った。
「わかった、もうええ。その代わり話せるようになったら話すんやで」
「ああ、そうする」
「それじゃ誠也、来週には冬休みが始まるしすぐにクリスマスとお正月があるけど予定はないよね?」
「さすがに昨日まで行方不明だった身だからな、昨日今日で予定は埋まらねーよ」
「じゃ、冬休みはこの中の誰かと必ずいるようにして、もういなくなったりしたら承知しないんだからね」
「わかったよ、じゃ日下部予定空けといてくれな」
「「「なんでそうなる」」」
総突っ込みを食らった……
”トントン”
ドアがノックされた気がした。
「はい」
「あ、いますね。御剣君表にマスコミの方々がいらしてまして、はっきり言って迷惑なので何とかしてもらえませんか?」
寮長さんだった。
しかしマスコミって……学生寮に押し寄せるとかほんとに常識無いんだな。
「解りました、すぐ行きます」
どうなるか解らないし心配だが、行かないわけにもいかない。少し話をして帰ってもらうしかないだろう。俺は部屋を出て玄関に向かった。
そこはまるで戦場だった。
警察と自衛隊の人達が来てくれていて、何とか抑え込んでくれているが今にもなだれ込んできそうな雰囲気である。野次馬も相まってすごい事になっていた。
「お、来たぞ!」
「御剣さん、一言お願いします!」
「噂の真相はどうなんでしょうか?」
「鳳凰旅団の戦いぶりはどうでしたか?」
色々な質問が一気に飛んでくる。が、いっぺんに答えられるわけが無いだろーが。と思うが声には出さない。とりあえず、ここではまずいので場所を変えたい。
「ここでは他の人の迷惑になりますので皆さん外に出てくれませんか?」
「質問に答えてください」
「本当事をぜひ」
「うちに独占インタビューを」
まったく聞く耳を持ってくれない。混乱に拍車をかけてしまったようだ。
そんな状態の中途方に暮れていると人の山をかき分けてくるモヒカンが見えた。
そのまま俺の横に立つ。
「お前らいい加減にしろ! 相手は高校生の子供だぞ。話は明日、記者会見を開いてやるからそこで聞け。場所はこの学校の体育館、時間は朝の10時からだ。わかったら帰れ。残ってるやつは入れないからな」
大声でそういって場を収めると手を振って”シッシ”と追い払う。
さすがは一流冒険者、こういうのにも慣れているようだ。
「ありがとうございます清成さん」
「ああ、街で話を聞いてな。全くあいつら学習能力無いよなぁ」
「いつもあんな感じなんですか?」
「ああ、マスコミってやつはこっちの事情はこれっぽっちも考えてないからな。特ダネを上げられるなら何でもしやがる。最低な連中だ」
清成さんは相当に怒ってくれていた。
「そういう訳で、すまないが明日記者会見をやる。面倒だと思うが付き合ってくれ」
「仕方ないですね、放っておいてもろくでもない事にしかならない事は俺にでもわかります」
「まぁ、そういう事だ」
そういって俺の肩を叩くと、颯爽と去っていった。
本当にマスコミを追い返すだけの為に来てくれたようだ。
見た目と違って本当にいい人だと思った。
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翌日。
朝から学校の方は大騒ぎになっていたようだ。
朝からマスコミ関係者だけでなく、噂を聞きつけた町の人なども押しかけ、整理券を配布するような騒動になっていたらしい。
2000人が入れる大きな体育館なんだが当然満員になったらしい。
そんなところで記者会見とかどんな罰ゲームだよ、と思うが仕方ない。
寮を出た所で以前の女性の自衛官の高木さんと安藤さんが出迎えてくれた。
危険なので体育館まで送ってくれるらしい。
「大変な事になりましたね」
「ええ、ほんとに最悪です」
「ははは、まぁ私からは頑張れとしか言えませんが、これで終わるといいですね」
「終わるんでしょうか?」
「頑張ってください!」
「……」
そんな話をしている間に着いた。
体育館の裏手から中に入る。
中はすでに超満員であり、ガヤガヤと騒がしく多くの人が忙しく働いていた。部隊のセッティングも完了しており。ものすごく大事になっていた。
「お、来たな少年!」
「少年じゃないですよ、全く何ですかこの騒ぎは?」
「俺は昨日校長に混乱を収めるために記者会見やるから体育館を貸してくれと言っただけなんだが、いつの間にかこうなってたんだよ」
「清成さんのせいではないと?」
「ああ、断じて俺の仕込みじゃない」
「しかし、こんな広い場所でこんなに大勢いる中で記者会見とかしても声とか全体に届かないでしょう?」
「それがな、こういう所にやってくる専門のクリエイター集団がいるんだよ。声を風魔法で拡張して全体に響かせたり、あの客席の真ん中に広く空いてる所があるだろ? あそこに水魔法でウォータースクリーンを張って光魔法で対象の光景を拡大表示させたりな。いろいろやってくれてると思うから安心しな」
「ずいぶん、大きなお世話ですね……」
「まぁそういうな、昨日の今日でこれだけ揃えてくれたんだからありがたく思うべきところだろうよ?」
「遠慮したいです……」
「はははは、さぁ時間だ、行くぞ!」
そういって舞台の方に連れていかれる。
暫く待つと舞台の方からお呼びがかかる。
覚悟を決めて舞台に上がる俺は、スキュラと対峙するときよりも緊張していた……
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