天使たちの輪舞
またしても遅くなりました。
仕事が忙しくなってきたのでちょっと更新が遅れそうです。
次回更新は多分日曜日になると思います。
スキュラの攻撃は続いていた。
無限の魔力と体力を持つかのように終わりの見えない戦いが続いている。
ウリエルが艶っぽい声を上げながら嬉々として攻撃を受け続け、ルシフェルが上空からスキュラの動きを観察しながら状況を分析しつつ援護を行い、5柱の天使が後方から連続攻撃でダメージを与えていく。
危なげない戦闘ではあるが決め手に欠けスキュラはすぐに回復し戦闘は膠着していたのだが、そこでルシフェルからの檄が飛んだ。
「ラムエル少し下がって蛸足を観察しろ、足の再生時に奥の方で光ってるやつがいる。そいつを倒せ」
「はい」
五柱の天使の中からラムエルが離れて蛸足の観察を始める。
「ウリエル、ラムエルが蛸足を切り飛ばしたら狼の中の一体が回復魔法を使おうとするはずだ、光ったら即座に潰せ。絶対に回復させるな」
「わ、分りましたぁ」
ラムエル以外の天使たちが蛸足を切り飛ばしていく……
やがて奥の方でわずかな光が発し蛸足が再生していく。何かは見えないが確かに奥で蛸足を再生させているものがいるようだ。
「見つけました、吶喊します」
ラムエルが突撃していく。ほかの天使たちも左右に分かれラムエルを支援しているが、数十本に増えている蛸足に阻まれなかなか成功しない。
「ラムエル何をしている。腕がなまっているんじゃないのか? 帰ったらお仕置きだぞ!」
「そんなぁ、でも確かに3000年も暇してましたから腕はなまっているかもです。帰ったら訓練やり直しますからお許しを……」
「まぁ、なまっているのはお前だけでもなさそうだからな、全員纏めてお仕置きの上再訓練だな」
「「はいぃぃ」」
天地たちの悲痛な声がこだまする。
「とはいえ、やむを得ん。今回は我が手を貸す。10秒後に道を作ってやるからタイミングを合わせろ」
「ありがとうございます」
そう言うとルシフェルは一秒ごとに一本ずつ真上に弓を撃っていく。もちろんスキュラの魔法攻撃を華麗にかわしつつだ。その間もほかの天使たちへのフォローもスキュラへの牽制も忘れない。
5柱の天使たちはその間にも必死に蛸足を切り飛ばし光る何かを見失わないように攻撃を加えていた。
10秒後……
ルシフェルの撃った矢が10本同時に落ちてくると5本づつ2列に並び蛸足を打ち抜き奥へとつながる道ができる。その奥には光る蛸足ではなく光る小さな蛸の頭(正確には胴)であった。光っているのはその根元なので頭でよさそうだ。どのみち蛸足の本体であることは間違いなさそうである。
露出された蛸本体にラムエルは突撃していく。ルシフェルの矢で作られた光の回廊を通ってまっすぐたどり着くと、蛸本体を一刀両断に真っ二つにした。
「やりましたぁ」
嬉しそうに叫ぶラムエルだったが、あっさりと数十本の蛸足にからめとられ蛸足の中に埋まっていく。
「きゃぁぁぁ」
「油断し過ぎだ、あのバカめ」
「ラムエルー」
慌てて他の天使たちが助けに向かう。
そんな中、正面ではウリエルが狼の猛攻を受けていた。
「いやん、もう、すごいんだからぁ」
などと言いながらしっかり攻撃を受け止めている。そうこうしていると突然真ん中の狼が光りだす。
「あれだウリエルやれ!」
「はい、いきまーす」
彼女が言うとちょっといやらしく聞こえる返事の後、ウリエルは噛みつこうとしてきた向かって左の狼の頭を殴り飛ばし、右手を後ろに引くと手の中に輝く槍が現れる。その槍を思いっきり真ん中の狼に突き刺すと、巨大な光の槍となりあっさりとスキュラの体ごと貫通してしまった。真ん中の狼は消えてなくなりスキュラの体には穴が開いていた。
回復能力を失ったスキュラに対し後はダメージを与えていけば倒せるはずと天使たちは一斉攻撃を仕掛ける。
5柱の天使たちは武器を槍に持ち替え光の矢を後ろからスキュラ本体に投げつけ、ウリエルは左手の盾で向かって左の狼を殴りつけ右の狼に槍を叩き込む。ルシフェルも光の弓を撃ち続けている。
そして、ウリエルが左の狼を倒したときにそれは起こった。
スキュラが輝き始め足元にあった蛸足と狼の死体が霧となって消えていく。
その後人の下半身が現れる。
これがスキュラの完全体というよりは呪いの解けた姿なのだろう。
しかしながらさすがに魔物でいる時間が長すぎたのか、それとももともとただの魔物であるのか……
人の意識が覚醒している様子はなく魔物のままであった。
スキュラは右手に氷の杖を作り出しそれを一度左から右へと振るうと水の羽衣を纏った。その激しい水流は光を乱反射し天使たちの攻撃が跳ね返されていく。
さらにスキュラの攻撃は激しさを増し杖を真上に掲げると全方位に氷の槍が飛ぶ。
縦に振るうと巨大な水の刃が大地を切り分けていく。
天使たちはそれでもなお攻撃を続けているが、彼女たちの攻撃は光主体であるためそのことごとくが水の羽衣で反射されていく。
”ゴン”
「あん!」
俺達の所に氷の槍が届きレミエルが色っぽい声を出す。
「なんかやばくなってきたか?」
「そうですね、彼女たちはまだ余力を残していますが有効な攻撃手段が物理だけになってちょっと手をこまねいている感じですね」
「大丈夫なのか?」
「うーん」
俺はちょっと考える。
このまま任せても何とかなる気もするが時間がかかりそうだし、単調な戦闘に彼女たちが飽きたら帰るかもしれない。ここは俺もちょっと手出しするべきだろうか?
「レミエル、ルシフェルに連絡は取れるか?」
「はい、私たちは遠距離でも問題なく意識を共有できますから問題ないです」
「ならルシフェルに聞いてほしい。スキュラの動きを止めればとどめはさせるか? と」
「解りました」
「動きが止まれば『メギドの炎』で焼き尽くすそうです」
「そうか、ならこれから奴の動きを止める。必ず仕留めるように伝えてくれ、チャンスは一回だけだ!」
「解りました」
「何とかなるのか? 俺の得意魔法は炎だからなあれには効果が薄い。それでもできる事があれば何でもするが……」
「大丈夫ですよ」
清成さんに答える。周りのみんなも不安そうだ、それはそうだろうここで失敗してあの状態のスキュラに追いかけられたら逃げ切れる気がしない。全滅は必至である。
「10秒後に『グレイプニール』で奴を拘束する。多分10秒くらいしかもたないが確実に仕留めてくれ」
「了解しました」
「ニルヴァーナもいいか?」
【はい】
初めて使う魔法で失敗は許されない。しかも遠い。俺はイメージを固めて魔力を練り上げる。ニルヴァーナの力も借りて発動する。
『グレイプニール』
ニルヴァーナを地面に突き立てると足元に巨大な魔法陣が浮かび、同時にスキュラの足元にも同様の魔法陣が浮かぶ。スキュラの足元の魔法陣から光り輝く鎖が伸びていきスキュラの手足を拘束する。同時にニルヴァーナが巨大な力で振り回されそうになる。俺はそれを必死に押さえつける。
「いまだ、やれ!」
ルシフェルがスキュラの真上に向かう。レミエル以外の天地たちもルシフェルの方に集まる。
スキュラの真上に陣取った天使たちはルシフェルを中心に円形に陣を敷く。
そのまま何かを詠唱しているようだったが、やがて六柱の天使たちを頂点に六芒星を形作って光の魔法陣が浮かび上がる。一重、二重、三重……
三重の輪が現れた後巨大な光の柱が空から降り注ぎ魔法陣を貫いて真下のスキュラを焼き尽くす。
その光景はとても美しく幻想的で、しかし焼き尽くされるスキュラには残酷であった。
その瞬間世界に音はなく衝撃もなく。光の世界のみが広がっていた。
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