モヒカンとの再会
ダンジョンの地下5階にあると思われる大森林で俺は途方に暮れていた。しかしながら事態は待ってくれない。目の前で食事に夢中な恐竜達はいつこちらに向かってくるかもわからない。この場所で留まるのはどう考えても悪手に思える。俺はそっとその場を離れる。
とはいえ、どちらに向かうのが正解かもわからない。地上までどれくらいかかるかも不明だ。手元には杖しかなくアイテムボックスの中に水筒と少しの非常食があるだけだ。
「アイテムボックスにいくらでも物が入るんだから食べ物詰め込んどけばよかったな」
後の祭りである。とはいえ、ただの高校生にそんな大量の食事をストックするお金はないのだが……
「ニルヴァーナにも出口の方向は解らないか?」
【さすがにそれは私にもわかりません】
「だよなぁ」
樹海の中では洞窟攻略の基本壁伝いも使えない。かといって飛べる訳でもない……
あ、自分で飛ぶ必要はないのか。
ちょっと思いついた。
とはいえまずは安全確保だな。
そういってしばらく森の中を散策する。もちろん恐竜に見つからないよう慎重に。
そうして10分ほど歩くとちょうど巨大な木の根が浮いていて人ひとりが入れそうな入り口があった。
『ウィル・オ・ウィスプ』
一つ出すと中に入れて確認してみる。
何もいないしちょうどいい広さがある。
とりあえず安全そうだ。
俺は中に入るとさらに念のため結界を張ることにした。
『ライトクロス』
光の十字架を作り出す。それも5本。それらを五芒星の頂点になるようにして地面に突き立てる。そうすると地面に魔法陣が広がり結界が完成する。これはニルヴァーナ先生の教えだ。
「これでしばらくは安全かな」
次に偵察の為に召喚魔法を使う。
『五位の光』
この魔法は5つの光でも5倍の光でもなく鷺を呼び出す魔法だ。ゴイサギと言う鷺らしい。細かい事は知らないが光つながりで過去の誰かが作った魔法らしい。これもニルヴァーナ先生のイメージから頂いた。
この鷺、戦闘力はあまりないらしいがその目を共有することで空からの偵察が可能になるらしい。ただし、使用中は自分の視界が無くなるので自分が危険にさらされる。なので使い勝手は悪い。とはいえ単なる魔力体である彼には攻撃は一切通じないし、いつでも消せる利点があるためこういう時の偵察には最高の魔法である。
召喚後空に放ち自分は魔法陣の中に戻る。そのまま座ると視界を鷺に移す。
瞬間的に空を飛ぶ景色に代わる。とても不思議な感じだ。とりあえず自分のいる場所を確認してから周辺の探索に映る。空から見てもダンジョンの端が見えないとんでもない広さであることがわかる。
少し離れた所に湖が見える。とりあえず、そちらに向かってみる事にした。
湖に向かう途中でも森の木々をなぎ倒しながら進む巨大な恐竜らしき生き物や巨大な陸亀。二本足で歩いている象や陸上を八本足で歩いている蛸なども見えた。やはり普通のジュラシックパークではなくダンジョンの中なんだと思えた。
湖以外には遥か遠くにうっすらととてつもなく大きい木が見えた。何の木かはわからないが目印になりそうなものはそれくらいしかないようだ。
”ドーン”
そんな中いきなり後ろの方から爆発音が聞こえた。
振り返ると遠くの方で多くの木々がなぎ倒され火の手が上がり、戦闘音の様な物が聞こえた。さらによく見ると魔法らしき光も見える。
「人がいるのか?」
とりあえず見に行くことにする。目は鷺と同化して飛んでいるので鷺を向かわせる。近くに着くと上空から様子を見る。すると、どうも冒険者らしき一団がさっきモグラを食べていたラプトルらしき恐竜の一団と戦闘をしているようだ。善戦しているようではあるが何しろ数が多い。放っておくと危険ではないかと思われた。
敵の強さも解らないし、ここがどこかも解らないが、見てしまった以上放っておくと寝覚めが悪いというか、後で気になって仕方ない気がしたし、自分の様に飛ばされてきたのでなければ帰り道を知ってる可能性が高いと思った。ここは一人でいても危険な事は変わらないので一つ合流してみるしかないと腹を決め、行動する事にする。
とりあえず『五位の光』を解除し鷺を消す。視界が自分に戻ったところで立ち上がらり自分に強化をかける。
『ミラクルブレス』『スペリオルオーラ』
「さて、いくか」
これから危険な戦場に向かうと分かっているものの意外と冷静だった。
(もう少しで人に会える)
そんな思いが体を動かす。自分が思っていた以上に人恋しかったらしい。
大急ぎで戦闘音の響く方向へ走っていく。
10分ほど走ったところで合流する。
向こうのメンバーは4人パーティーのようだった。
一人は髪の長い女性ですらっとした感じ色白で20代半ばくらいだろうか? 杖を持っているので魔法使いなのだろう。
もう一人も女性でショートカットのよく似合う茶髪というか栗色な髪の健康的に日に焼けたお姉さんだこちらも20代半ばくらいだろうかこちらは大きな両手剣を持ち振り回している。意外と力持ちだ。
もう一人も女性だが少し若く見える。高校生と言われても納得できるくらいに若く見える。彼女も杖を持ち魔法を使っていた。
最後の一人はモヒカンだった。どう見てもモヒカンである。あの時見たモヒカン、確か清成さんだったか? しかしあの人こんなハーレムパーティー作っていたのか。なんであのモヒカンでモテるんだ?
それはともかくあの人燃えているんだが大丈夫なんだろうか?
そんな事を考えながら近づいていく。
最初に俺に気づいて声をかけてきたのは髪の長い女性だった。
「大丈夫ですか?」
「誰? こんな所に私たち以外の冒険者がいるなんて……」
「とりあえず、あれをかたずけましょう。話はそれからです」
そう言うと彼らをパーティメンバーと認識して強化魔法をかけなおす。
『ミラクルブレス』
その場の全員が一瞬光に包まれうっすらと輝きだす。
「何これ? すごい」
「あなた光魔術師なの? ありがとう助かるわ」
「どういたしまして」
そんなやり取りの間にも戦闘は続いている。みんなそれなりにダメージも受けているようだ。
『聖域』『ヒーリングフィールド』
聖域を広げ前衛の二人も包むようにして発動する範囲型継続回復魔法であるヒーリングフィールドを発動する。足元に魔法陣が広がりそれが消えるとうっすら地面が輝きだす。この上に乗っていれば回復し続ける仕組みである。本来のヒールよりも弱い言わば小ヒールの様な物をかけ続ける様な物なので大ダメージには向かないが今回の様にパーティーメンバーすべてが傷ついている状況では有用な魔法だ。
ちなみに俺はまだ魔法の階級分けを受けてないし、どの魔法がどの階級なのか知らない。それはニルヴァーナも同じで今の人達が決めた区分けは解らないとの事だ。なのでこの魔法も初級なのか中級なのかは解らないのである。
「これでこの光っている地面の上で戦う限り回復します。できるだけこの上で戦ってください」
そう声をかける。
そのまま俺はニルヴァーナの剣を引き抜く。ラプトルは早い、前衛の二人はともかくこっちに向かってくると危険かもしれないので後衛の二人の護衛に着く。
今見える敵はラプトルが五匹の様だが後続がいるように思える。喧騒と血のにおいが魔物を呼び寄せているように思える。とはいえ逃げる事も出来そうにないので向かってくる魔物を片っ端から倒していくしかない。
とりあえず、本来の光魔法使いらしくここは補助に徹しようと各自に『スペクトラルオーラ』をかけていく。いきなり速さを上げると制御できなくなる可能性が高いので前衛二人には力を後衛二人には精神を強化するようにしておいた。武器にかけると武器の負担が増し壊れてしまうかもしれないので武器には掛けないで置いた。自分の剣にだけこっそりかけておく。
さすがはNo1と言われる冒険者の率いるパーティーだ。俺が突然入り込んでも臨機応変に対応してくれている。混乱する事もなく目の前の敵をひたすらに倒していくモヒカンとその仲間達はやはり強かった。
とはいえ、いつまで続くか解らない泥沼の戦闘に陥っている。油断は出来そうになかった。
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