次元の狭間
誠也視点に戻ります
気が付くと真っ黒な空間に浮いていた。ぼーっとした頭で何があったのか思い返してみる。
確か寮のそばのダンジョンが騒がしくて外に出てダンジョンに向かってみたら巨大なモグラが向かってきていて。俺はそいつを切りつけたんだっけか。そこでモグラに殴られそうになってとっさに左手の魔法で防ごうとして……暴走させたんだったか……
ゆっくりと目を開ける。
【主様! ようやくお目覚めですか】
「ああ、まだ少し頭はぼーっとしているが生きてはいるみたいだな」
【ご無事で何よりです】
「所でここは何処なんだ? なんとなくは察しているがちゃんと知りたい」
【ここは次元の狭間と言われている所ですね。無限の広さがありますが時間の概念がありません。そんな空間です】
「時間の概念がない?」
【はい、無限の時間があるとも言えますし、停止しているとも言えます】
「よく解らない話だな」
【あまり気にする事はないと思ます。それよりもあのモグラを何とかしませんと】
見ると少し先の方でバタバタと手足をばたつかせている巨大モグラがいた。
【幸い遠距離攻撃はしてこないみたいですし、この空間では動けない様なのでこちらから近づかなければ安全だと思いますが、流れてこないとも限りませんので何とかしたほうがよろしいかと】
「そうはいってもだな、俺も動けないからどうにもならねーよ」
【そうですねぇ、それならこの際魔法の練習台にでもなってもらってこの空間でいろいろ試してみればよろしいのでは? 幸いこの空間にいる限り時間は無限にありますし、ここから脱出するためにも魔法の腕は磨かないといけませんし。まさにやりたい放題ですよ】
「すぐには出れないのか?」
【今の主様ではもう一度同じように魔力を暴走させても3割くらいで抜けられるかどうかです。それに偶然抜け出せたとしても、元の場所、時間に出られる確率は皆無でしょう。少なくとも数十年は訓練してここに入ってきた入り口を探し出せないと元の時間と空間には戻れません】
「数十年って……こんなとこだと数日で飢えて死ぬと思うんだがどうなんだ?」
【そこは心配無用です。時間が止まってますから見た目の成長もありませんし。何も食べなくても死にませんよ。ただ……】
「ただ……?」
【普通はこの空間に迷い込んで何年もいたら精神的におかしくなってしまうでしょうね】
「ダメじゃん!」
【大丈夫です、主様の場合一人じゃありませんし、精神力も普通の人よりもずっと強いのできっと……】
「適当だなぁ」
そして修行の日々が始まった。
周囲は真っ暗で何も見えないように見えるが、俺の姿もモグラの姿も視認出来ているので光がないわけではなく何も無い空間がどこまでも広がっているのだと思う。魔法を撃っても反動もなく今いる位置は変わらない。時間の概念が無いからなのかそれとも溢れる魔素のせいなのかいくら魔法を撃っても疲れない。ひたすら訓練するには絶好の環境であった。
ニルヴァーナの教えを受けモグラ相手に魔法を撃ち続ける。ついでという事でたまに剣技の指導も受け型の練習を行う。魔法だけずっとしていては飽きるからな。モグラはずっと同じところに浮かんでいてじっと俺の事を見ていた。たまに動こうとバタついているが動けないのは変わらないが、目には”絶対にお前を殺してやる”と殺気が漲っていた。
どれだけの時が流れたのだろう。まぁ、ここには時間の概念が無いから時は流れないかもしれないが俺はニルヴァーナから得た戦闘知識のほとんどをマスターしていた。剣技に関しては型のみで技も覚えはしたが試すことができないのでマスターしたとは言えないが、使える様にはなっていた。
「なぁ、ニルヴァーナ」
【はい、主様】
「今日で何日くらいここにいる?」
【わかりませんね】
「だよなぁ、もう感覚がマヒしちゃってるんだけどそろそろ出れねーかな?
【そうですね、ここを出るにしてもあのモグラは何とか倒しておかないと出てから大変ですよ】
モグラはこっちを見ていた、相変わらずの殺気がすごい。
まぁ、俺が向こうの立場でも同じようになるよなぁ、いきなりこんなところに飛ばされて、身動きできないままに魔法の練習台にされて……
いい加減終わりにしたいな。
「よし、本気で潰しに行こう」
【はい】
まずは自信に強化をかける。
『ミラクルブレス』『マインドスペリオルオーラ』
それぞれ『ブレス』『マインドオーラ』の強化版である。因みに強化版なので『ブレス』『ミラクルブレス』を重ね掛けなんかは出来ない。当然、上位の魔法で上書きされる。
「そうだ、ニルヴァーナにもかけとくか」
『ミラクルブレス』
ニルヴァーナにもかけておく。剣の時にかければ切れ味が上がったが杖の時にかければ魔法の強化率と集中度が増すようだった。どうも武器の形状で効果が変わるらしい。
「さて準備はこれくらいでいいかな、いくぜ!」
「まずは小手調べ」
『ショットブラスト』
そういって杖を前に出す。円形の魔法陣が現れたかと思うと無数の光線がモグラに殺到する。一瞬モグラが見えなくなるほどの爆発に包まれるが倒すことは出来なかったようだ。巨大モグラはほぼ無傷である。
「やっぱ固いな、今の状態なら以前の100倍の威力はありそうなんだけどな」
【何と比べての100倍かはわかりませんが……】
「硬いこと言うなって、誰も聞いちゃいないんだしな」
次の魔法の準備に移る。高位の魔法になるほどイメージが難しく魔力の操作も指数関数的に難しくなっていく。故に集中する時間も必要になる。
集中しイメージが固まったところで杖を掲げる。
『ミーティアストライク』
これは闇魔法だ時空間をゆがめ隕石をぶつける。とはいえここで呼び出せているのだからもしかするとそう言うイメージが具現化しているだけかもしれない。あたった後の隕石は消えるし魔法ダメージみたいだしな。
そして、これでもモグラは無事だった。正確にはダメージは受けたようだがあっという間に修復されている。
「やっぱこれでもダメか? 結構な魔法だと思うんだけどな」
【地上では使わない事をお勧めします】
「上位の魔法は使えないのが多いよな」
【大陸ではすぐに修復されるはずなのでそれほど問題ではありませんが、他人を巻き込んだりはしますからね】
「さて、つぎいってみよーか」
『聖域』
今度は杖の頭で地面を叩くように振るう。そうすると足元から魔法陣が広がりうっすらと輝く空間が作られる。モグラを包み込んだところで拡張を止める。
「2段階魔法って面倒だな」
【手間がかかる分だけ効率がいいですからね、こういう時に使っておくのもいいと思いますよ】
「そうだな」
二段階魔法というのは、目的の魔法に対して前提の魔法を使っておく必要がある魔法。手間がかかる上に範囲が限定されるが、その分強力であったり魔力の使用量が少なくて済む。
『天使降臨』
天から光が降り注ぐ。5本の光の柱となった後5柱の天使が立っていた。5柱とも超美人である。神はブロンドで長く肌は真っ白でとても美しい。背には2枚の白い翼があり、頭には天使らしく輝く輪が浮かんでいた。
「我らを呼び出したのはお前か? 人の身で我らを呼び出せるものがまだいたとはな」
「範囲限定ですけどね」
「それでも大したものだ。して、倒したい相手はあれか?」
「はい、普通の魔法だとダメージが入らないんです」
「そうか、まぁあのくらいなら余裕だろうが殺してしまって構わないのか?」
「ええ、俺もそろそろここから出たいのでサクッとお願いします」
「わかった」
そういうと天使たちの手に光の槍が現れる。その槍を一糸乱れぬモーションで5人の天使が投擲を行う。槍はまっすぐモグラに向かうとそのまま貫通していった。
「ほぉ、なかなかしぶといではないか」
そう言うともう一度手に槍が現れる。そしてもう一投、そのままモグラは絶命した。
「これでよいか?」
「はい、ありがとうございます」
「では、我らは帰るが、何かあればまた呼ぶがよい。今の天界は暇なのでな気にせず呼び出すと良いぞ」
そういって消えていった。
天界は暇なのか? てか天界があるのか?
まぁ、今は考えないようにしよう。
とりあえず、モグラは倒したから今度は空間を破壊して脱出しないといけないな。
どうしたものかと考えていた。
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