避難所(遥香視点)
遥香視点はここでいったん終わります。
避難所に着くとそこはごった返していた。
町中の人が集まっているのだろう、みんな心配そうではあるが比較的落ち着いている。この辺りはさすがは日本人だというべきか。おそらく自衛隊、警察、冒険者たちの普段の努力による安心感のなせる業という所なのだろう。きっと誰もがすぐに解決して町に戻れると信じていると思われた。
駐屯地の奥の方では土魔法を使った大規模な避難用建物の建築が進み南の方では食料の配給がされているが、水は殆どの人が自分で出せるので特に配られていないようだ。
ほとんどの人が生活魔法や基礎魔法くらいは使えるのでみんな適当な所で椅子を作ったり地面を固めて座ったりして大きな混乱もなく過ごしているようだ。
その間を時々自衛隊の人やボランティアの人が声をかけながら通っていく。光魔法使いの方々はここでもやはり忙しいようで北側に張られたテント内で人々の治療にあたっているようだった。人口に対して数が少ないせいなのだろう。水魔法や土魔法でも治療は出来るとはいえつかる人は少ないし即効性もないためみんな光魔法使いの人達に集まるようであった。
そんな中私たちも避難所に到着した。コハルさんと共に無事に着いたのはいいが私は不安で仕方がない。いてもたってもいられず北のテントを目指す。光魔法使いの人たちが集まっている所なら誠也か秋野さんがいるかもしれない。もしいなくても知ってる人がいれば話が聞けるかもしれない。そう思って歩き出す。本当なら風魔法を使って一気に走り抜けたい衝動にすら駆られるが、人が多すぎて危険なのでそれは出来ない。
私が黙って北の方に歩き出すとコハルさんも黙ってついて来てくれた。私のことを心配してくれているようだが、そんなに私は危険な存在に見えるのだろうか?
テントに着き中に入ろうとすると自衛隊の人に止められた。
「すみませんが何か御用でしょうか? いまは非常時なので特に怪我などが無いようなら後にして頂きたいのですが」
「すみません、人を探しているんです。中に入れてもらえませんか?」
「今は怪我をした方の治療を最優先にしております。重傷者もしくは子供の方のご家族以外はご遠慮いただいているのです。そうしないとすぐに中がいっぱいになってしまいますので……」
「そんな、でも……何とかならないですか?」
「すみません」
入れてもらえない。ここまで来たのにどうしたら……
泣きそうになってくる、せめてここにいるのかいないのかだけでもはっきりしてほしい。どうすればいい? どうすれば……
そんな私を見かねたのかコハルさんが聞いてくれた。
「それなら中にいるボランティアの光魔法使いの方を調べてもらう事は出来ませんか? 彼女の友達らしいのです」
「そういう事ならあちらの登録所で聞いてみてください、もしかしたらわかるかもしれません」
「わかりました。ありがとうございます」
そこには小さなテントと長机があり二人の自衛官の方が座って受付をしているようだった。私達もそちらに向かう。
「すみません、ちょっとお伺いしたいのですが……」
「はい、なんでしょう?」
「こちらで今ボランティアに来ている光魔法使いの方々の名簿を見せてもらったりは出来ませんか?」
「それは出来ません。今は人手も足りませんし何より個人情報保護が義務化されていますので名簿をすぐにはお見せできないのですよ」
「でしたら、知り合いがここにいるか調べてもらう事は出来ませんか?」
「今すぐには無理ですね。一応お名前と連絡先を教えて置いていただければわかり次第ご連絡いたしますが、この状態ですのでいつになるか……」
「そうですか……」
連絡先と言われても寮の部屋くらいしかない。しかもそこにはいつ戻れるかもわからない。電話もないここでは連絡を待つというのはかなり難しい。
どうしようもなくなりテントの前で入り口から出入りする人たちをぼーっと眺めていた。
「斎藤さん?」
後ろから声をかけられ振りむくとそこには秋野さんがいた。
「秋野さん! 無事だったんですね。それで、誠也は?」
「御剣君ですか? まだここには来ていない様です。私は彼に言われて救護施設にいた人たちを案内しながらここまで来たので、今どこにいるかは……」
「そんな……」
遥香の顔が絶望に染まる。遥香には分かっていた、誠也はきっとダンジョンの方に向かったのだと……
それからしばらくして事件は終息したとの知らせが届く。事件の詳細についての説明は調査中として特になかったが、念のためと避難指示は翌日まで続き安全が確認された所で翌日の朝には避難指示は解除。人々は町へと帰っていった。
さらに翌日、避難指示から2日後の朝の新聞朝刊で事件の詳細が公表された。内容によると、ダンジョン二階にて探索していた冒険者の一行がフロアボスと思わしき巨大なモグラと遭遇。そのまま逃げだしたことで被害が拡大する。誰もが全く歯が立たずダンジョンの外まで逃げ出し騒ぎを聞きつけた冒険者や自衛隊にて応戦するも効果がなく巨大モグラは暴走を続ける。その後、西校の寮に向かっていたところ突然向きを変え森の奥へと進み始める。多くの人がこの戦闘に参加し魔法も飛び交っていた為に、未確認ではあるが何者かがモグラに攻撃を行い引き付けてることに成功していたとの話がある。その後さらにスピードを上げ多くの人を振り切った所で真っ黒な球体に飲み込まれ消滅したとの話があると。この事件での負傷者は56人。死者は奇跡的にいなかったとされていた。
だが、その後の自衛隊と冒険者ギルドの調査で新たな事実が判明する。最後の瞬間を目撃していた者は複数人おり、彼らの証言によると黒い服を着た少年が剣を持って切りかかっていたという。また真っ黒な球体も彼の魔法のようでありモグラと共に消えてしまったという。
さらに同時期に行方不明になった少年がいると西校からの通報と同級生の証言などから戦闘していたのは『御剣誠也』という少年ではないかとの推測が建てられた。しかしながら現時点では証拠もなく目撃者も当人であるかは確認できず、発表はされなかった。ただし、噂としては広がっていき巷では、『御剣誠也』が命を賭して町を守ったのだと話が誇張され、尾ひれがついて大変な事になっていく。
事件を受け、準備されていた祭りは中止となり。町全体に影を差した。
その後、日本政府と冒険者ギルド及び小笠原の話で全力でダンジョンの制覇を行うと決定。冒険者ギルドからトップランクであるSランク冒険者を集結させて自衛隊と国家のバックアップで早急に対処する事が決定される。ダンジョンへの侵入はAランク冒険者以上しか認められなくなり、ダンジョン周辺は24時間体制で自衛隊が固める事になった。
それから3か月が過ぎていたが、未だにダンジョンは制覇されず。冒険者達にもけが人や犠牲者が目立つようになる。それでもあきらめる事無く探索を続け地下5階の探索もようやく半分くらい進んでいたが、地下6階への行き方はいまだ不明のままであった。
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