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【第4章】そういう大人に私はなりたい


 さて、いかがでしたでしょうか。

第3章では、小学1年生の頃の性自認エピソードから、大学を卒業して数年間にわたるまでのジェンダーに関する自分語りをつらつらと行いました。


 こういう悩みは、ジャンルがジャンルなだけに身の周りに同じような人を見つけることは難しいものです。

よって、自分が抱える問題をどのように解決していけばいいか、共に考えていくような仲間にもそうそう巡り会えません。

だから、ただの一個人の体験談ではありますが、こうしてインターネットの匿名性を利用して情報を発信することに、ちょっとは意味があればいいなと思っています。



 子ども時代からのエピソードをまとめながら、私は昔から「いかに自分のマイナーな個性を隠して、社会に適応するか」を模索して生きてきたのだなあと思いました。

でも、要所要所で譲れない強い主張を持っているせいで、鬱憤を溜めに溜めこんだあげく引きこもったり、死んだり、個性を完全に殺そうとしたり、まあなんとも要領の悪い人生を送っています。



 一通り心が荒む経験をした今だから言えますけど、結局は「本当の自分で生きる」これに尽きます。

嘘の自分を装っていれば、自分の周りにはどんどん“嘘”が積み上がっていき、いずれ大きな苦悩となって自身を阻む壁となってしまいますから。

これがこの一連の文章の結論です。




 ……ただ、だからといって私はトランスジェンダーなどのマイノリティの人たちに「本当の自分を出すべき!」なんて言う気はありません。


 マイノリティは絶対数が少ないから、心無い批判で傷つけてくる大勢の他人から、自分ひとりで身を守らねばならない、そのために「嘘の自分」を装っておかねばならない、そんなこともしばしば。

自分を隠して「普通」を演じておかないと、なんとなくクラス全員から避けられる、バスの隣にはいつも誰も来てくれない、重要なお知らせがなぜか自分にだけ回ってこない、孤独なだけじゃなくて実用的な面でめっちゃ困る、そんなこともしばしば。

「ちょっと他と変わっている」ただそれだけで陰口、悪口、笑いものにされることは当たり前。

無視、仲間外れ、いじめ、もちろん大人同士でも起こります。

むしろ、知恵がついて思考力の低下した大人同士での方が起こるかも。


 これらの現象は、こっちがどれだけ道徳的に、誠実に生きていようが、なんと関係なしなんです。

「数が少ない」ただそれだけの事実が「罪」のように扱われることがある、それがマイノリティの宿命なのかもしれません。

「あいつは自分勝手だから」とか「あいつは人の話を聞いていないから」とか、そんな理由らしい理由なんてなく「ただ存在するだけ」それだけ。不利益を被る理由など。


 そんななか、ただでさえ見つかりづらい自分の居場所……嘘をつかなくてすむ居場所を、自分で探しに、あるいは作りに行かなければならない。

批判や無関心、無理解に晒されるかもしれないことを覚悟して、「本当の自分」を出していかなければならない。……


 そんなことを他人に強要できません。

私はジェンダーの問題以外にも、そうそう他人には共有できない問題を抱えているので身をもって知っているつもりなんですが、「たまたまマイノリティに生まれた人」が「本当の自分」として生きるのはマジで大変です。

環境にもよりますが、うまくウソをつき続けながら生きていく方が良い場合だってきっとあります。



 でも、私はつい夢をみてしまうんですよね。

たまたまちょっと“変なカンジ”に生まれてしまった人たちでも、世間に理解してもらえて、ひとりの人間としてコミュニティに受け入れられてもらえたら嬉しいなって。

私も皆と同じように友だちの輪の一員としてキャッキャしたかったし、お化粧をしていなかったから、服装が女らしくなかったからといって貶されたり、無視されたりしたくなかったです。



 まあ、トランスジェンダー云々に限らず、ヒトが人間として社会生活を送るにあたって、「集団」になじみつつ「個性」をどう出していくかというのは、多くの人が悩んでいることかもしれません。

生命を維持することそのものだけに全力を尽くさなくてもよくなった現代社会における人類の共通課題ですよ。(適当)




 第3章のエピソード集は、当時の気持ちをリアルに思い出しながら綴っていたので、ついつい熱が入ってしまう部分もありました。


 チャラチャラ大学生のくだりなんて特に。気を悪くされた方がいたら申し訳ないです。

人には人それぞれの生き方があるので、当時こそ授業の悪口を言いながら飲み会ウェーイしている学生たちを毛嫌いしていましたが(被害も受けたし…)、今はそんなことありません。

良い部分を認め合ったらあとは互いに干渉せず、うまく住み分けていけばいい話です。


 私の知り合いには、ウェイウェイ暴れる系の大学生でありながらも、異なる価値観を持っている人を潰しにかかりはせず、誰に対しても優しく平等に接することのできる人もいました。

他人を潰す必要のないぐらい、強い信念をもって生きている人はカッコイイですね。


 そういう大人に私はなりたい。なりたいよパトラッシュ。




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