第七話
1939年九月二十日、ソ連の首都であるモスクワで日ソ停戦協定が結ばれた。
「ジューコフ、この被害は一体何なんだ?」
「……申し訳ありません書記長。予想より遥かに日本軍は強力な軍でした」
クレムリンでジューコフはソビエト連邦の書記長であるヨシフ・スターリンに謝罪をしていた。
「言い訳はいい。ジューコフ……君には暫くシベリアに行ってもらおう」
『ッ!?』
スターリンの言葉にジューコフ以下、出席していた者達の表情が変わる。
「……分かりました」
「では下がってよい」
スターリンの言葉にジューコフは頭を下げて退室した。
「会議は終了だ。暫く私を一人にしてくれ」
スターリンの言葉に出席者達は退室していった。
「……おのれヤポンスキーッ!! やはり先の戦争と同様に我々を苦しめるかッ!!」
スターリンは机を叩いて興奮する。
「それに……ドイツだ。あのちょび髭め、ヤポンスキーなんか義勇軍なんぞ送りおって……スペイン内戦の時でも我々ソ連義勇軍を叩きおった……」
漸く冷静になったスターリンが椅子に座る。
「今に見ておれちょび髭め、必ずベルリンを占領して共産主義国にしてくれるわ……」
スターリンはそう呟くのであった。
――ベルリン――
「ヒトラー総統の秘書を募集しているみたいよ」
「貴女がやってみたら?」
「流石に無理よ。それに総統が近くにいる問いうことで気絶しそうよ」
秘書募集の紙に数人の女性が群がっていた。その群がっている近くを一人の女性が通り掛かった。
「……あら、これは……」
女性は募集の紙を見て驚きの声をあげるのであった。
「それで誰か秘書募集を電話してきたのはいるのかね?」
「いえ、未だにいません」
ふむ、バイトの紙みたいに秘書募集の紙をベルリン市内に貼ったのはマイナスだったかな?
ジリリリリリンッ!!
その時、電話が鳴って部下が相手した。
「そ、総統ッ!!」
「何だ?」
「ひ、秘書募集の紙を見て連絡したという女性が……」
「面会出来る日時を聞け」
「……はい、はい。総統、今からでもいけるとの事です」
時刻は……二時か。
「分かった、三時に総統官邸に来るように言っておけ。警護している親衛隊にも伝えろ」
「ヤー」
さて、どんな奴かな……。
「………」
「そ、総統。どんな人が来るのでしょうか……」
「……何でお前らが緊張しているんだ……」
何故かゲーリングやレーダー達も参加していた。いやお前ら参加する意味あるのか?
コンコン。
「ん、入れ」
「失礼します」
ん? 何処かで聞いたような声……。
「お久しぶりです総統」
「……エリカさん」
入ってきた女性は髪色は黒でポニー、瞳は青色で日本へ行った時に出会ったエリカ・キリシマだった。
「何故……秘書募集に?」
「総統のお手伝いが出来ればと……」
「……採用する」
『えぇッ!?』
何故か俺の言葉に驚くゲーリング達。
「よ、宜しいのですか総統ッ!?」
「構わんよ」
「で、ですが彼女は日独の……」
「ハーフだが私は気にしない。むしろアーリア人と優秀な日本人のハーフだぞ」
「それは……そうですが……」
渋るなゲーリング。
「それじゃあ秘書の話は無しに……」
『彼女を採用しましょう』
お前ら……。
「エリカさん。詳しい説明はまた後日にしましょう」
「分かりました」
「それとエリカさん……この後暇でしたら御茶でも飲みませんか?」
「はい、御一緒させていただきます」
そして俺達(何故かゲーリング達も)は数時間の御茶を楽しんだのである。
エリカさんが帰った後、ゲッベルスが俺に寄ってきた。
「総統」
「どうしたゲッベルス?」
「……あの人に惚れてますね?」
「……なんの事だ?」
「隠しても無駄ですよ。レーダーやゲーリングも気付いてます」
………。
「総統、恋をなさるのは私もとやかくは言いません。ですが、今は大事な時期です。恋に走っては困ります」
「……忠告ありがとうゲッベルス」
そう言ってゲッベルスは総統室から退室した。
「………」
前途多難……かな。
それから数日後。
「総統、ドイツ義勇軍から戦果報告が纏まりました」
「よし聞こう」
「戦車部隊は二両を失いましたが、ソ連戦車と装甲車を合わせて三八両を撃破しました」
「ふむ、グートだな」
「次に空軍ですが、戦闘機隊は三機が高射砲で被弾しましたが全機無事です。シュトゥーカ隊は戦車と装甲車合わせて八七両を撃破しました」
「ふむ。そんなに撃破したのか?」
「は、そのうちの約半分を撃破したのはハンス・ウルリッヒ・ルーデルです」
……マジで?
「ちなみに何両破壊した?」
「戦車二三両、装甲車三一両です」
……ルーデルは覚醒した? 確かにルーデルがいる部隊を調べて義勇軍にと出したけど……。
「どうしましたか総統?」
「……いや何でもない。そのルーデルに勲章でも挙げねばなならんな」
「はぁ、それと日本からなのですが、アハトアハトを購入したいと……」
「アハトアハトを?」
輝義の指示だろうな。
「それくらいは構わない。購入を許可しよう」
「分かりました」
「そうだ、購入で思い出した。スウェーデンのボフォース四十ミリ機関砲を購入してライセンス生産しよう」
「四十ミリ機関砲ですか?」
「うむ、対空は勿論水平射撃をして敵歩兵を蹴散らすのに有効だろう」
「分かりました。そのように手配しておきます」
ボフォースがあれば少しはマシかもしれんな。
「失礼します。御茶をお持ちしました」
そこへエリカさんが人数分の御茶を持って入室してきた。
「どうもエリカさんッ!!」
「御茶、いつも美味しいですッ!!」
「今日は何色のパンツですかッ!?」
途端に顔が下心満載の表情に変わるゲーリング達。
「お前らは学生かッ!! そしてゲッベルス、お前はこの間俺に注意してきたのにそれかよッ!!」
ゲーリング達と共にゲッベルスもエリカさんに寄っていた。
「み、皆さん落ち着いて下さい……」
『ハイルッ!!』
「なんでやねん……」
思わずツッコミを入れた俺は悪くない。
「何だこのドイツ国防軍は……いや原因は俺か……」
そういやこいつらに漫画を見せてから少し狂ってきたからなぁ。
「そ、それでは……」
エリカさんはそう言って退室した。
「では総統。次に軍需工場の建築ですが……」
「何でエリカさんが退室したら表情変わるんだよッ!?」
決めた、今日は早く寝よう。それに限る。
「総統」
「何だ?」
「『白の件』の事ですが……」
「……聞こう」
そして俺とゲーリング達の表情が変わった。
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