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『ヒトラーに憑依しました』連載版 作者:零戦
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第三十六話




 季節は八月。世界大戦は枢軸側の有利が続いていた。
 日本は太平洋をほぼ手中に収め、オーストラリアにその手を伸ばしはじめていた。その手始めがニューヘブリデス諸島の攻略だった。
 輝義の指導で史実より風通しがある陸海軍は協定でオーストラリアを降伏させて枢軸側陣営に引き入れる決定をしていた。ニューヘブリデス諸島攻略はその手始めなのだ。
 ニューヘブリデス諸島には米軍も駐留していたが、戦艦と空母がいない米太平洋艦隊は小沢治三郎の第一機動艦隊に手を出さずにニューヘブリデス諸島を放棄してニューカレドニアまで後退した。
 ニューヘブリデス諸島は無血占領となり、日本は準備が済み次第ニューカレドニアに向かう予定だ。日本の輸送能力を考えればソロモン諸島で限界であるが、ニューカレドニアは是非とも欲しい島だ。
 その理由は二つあり、一つは航空機の製造に必要なニッケルが採取出来る事だ。もう一つはオーストラリアの首を絞める事だ。
 オーストラリアはアメリカからの輸送に頼っており日本がニューカレドニアを攻略して潜水艦隊を常駐すれば後は判るだろう。
 通商破壊作戦でオーストラリアはボロボロになるのは必須だった。そもそもオーストラリア海軍も艦艇は開戦前から少なく、開戦後は度重なる戦闘で貴重な艦艇を喪失していた。
 それに連敗の報道で国民感情も下がっていた。オーストラリアは正に風前の灯に近い状況だったのである。

「それでドイツだ」

 ドイツはアフリカから中東に侵攻しようとしていたが、俺が今のところ停止させていた。その理由はアラブの人々だ。
 二十一世紀のアメリカみたいな事をすれば彼等は聖戦ジハードと言って抵抗するだろうな。そのために外交で彼等の独立を保証する必要があった。
 そうしないと自爆テロでもされそうだからな。独立後の政権運用には一切介入しない事で内密に双方が合意している。
 ドイツを支援すれば武器も供給する。その代わり石油くれよと一種の物々交換だけどな。

「失礼します総統」
「フリッチュか。何用かね?」
「兵器の報告です。対中東用の装甲師団等に配備していた三号戦車は全て五号戦車パンターに更新しました」
「そうか、現場から不満の声はあるかね?」
「今のところはありません。やはり実験部隊で実践を兼ねていたのが幸いしたようです」
「そうか」

 史実だと初期のパンターはエンジンとか故障が多かったが大丈夫みたいだな。

「戦線の火消し部隊として四号戦車のティーガーの配備も進んでいます」
「うむ」

 今のところは大丈夫だな。何処から歯車が狂うか判らんけどな。

「……総統」
「どうしたヒムラー?」

 そこへヒムラーが部屋に入室してきた。顔を見るとかなり焦っている表情をしているが……。

「……ソ連がフィンランドの国境に兵力を送り続けているようです」
「何……?」

 その言葉を聞いた俺は直ぐに主だった者を招集させた。

「……総統、まさかソ連はフィンランドに侵攻をする気ではないですか?」
「今更かね? 前回の屈辱を晴らすなら我々がバトルオブブリテンをしている時にするはずだが……」
「高級将校の粛清で軍を統制出来る将校が少なかったのでしょう」

 ……一理あるな。

「フィンランド側の対応はどうだ?」
「全軍に警戒警報を発令したようです。先の戦争で予備役に編入した兵員を招集しているようです」
「……ハルダー。義勇軍は送れるか?」

 俺は参謀総長の上級大将フランツ・ハルダーに問う。ハルダーは報告書を見ながら席を立つ。

「現時点の段階で一個歩兵師団、一個戦車連隊をフィンランドに送れます。時間をくれるのであれば更なる戦力が送れます」
「……そうか、それなら義勇軍司令官にはマンシュタインをしよう」
「……左遷ですか?」

 俺の言葉にフリッチュはそう聞いてきたが俺は首を横に振る。

「左遷ではない。左遷するなら予備役だフリッチュ。というよりもソ連が相手ならマンシュタインが適任だろう」

 恐らくソ連側はジューコフを出すだろうな。そのためのマンシュタインだし……。

「ゲーリング、空軍も派遣するぞ」
「構いません総統」

 よし、ゲーリングの言質は取った。そしてフィンランド派遣義勇軍の戦力が整った。


「マインフューラーは私の事をよく判っておられる。行くぞヘンシェル、ガーデルマン」
「ヤー、ルーデル隊長」
「……本職は医師なんですけど……」

 カイロの航空基地に駐屯していたルーデルはいつもの面々を率いてフィンランドへ向かった。なお、空軍からは対ソ戦で活躍した撃墜王(ハルトマンやバルクホルン等)がフィンランドに派遣された。陸軍はミハイル・ヴィットマンや泥まみれの虎、必敗の名指揮官で有名な人物を送り込んだ。
 ただし、この義勇軍はソ連が侵攻すれば機能が発揮出来るのでソ連が侵攻するまではフィンランドで休暇という形だった。
 義勇軍は三個歩兵師団、二個装甲師団、二個航空隊の陣容である。



「同志スターリン、フィンランドの国境に兵力の集結が整いました」
「うむ、数は?」
「凡そ百万であります」

 部下からの報告にスターリンは頷いた。

「全く……葉巻野郎からの要請でなければこんな事はしないものだが……」

 部下を下がらせた後、スターリンは一人になった部屋でそう呟いた。実はソ連の一連の動きはイギリスからの要請であった。

「ドイツが中東に侵攻する兵力を一兵でも削ぎたい……か。確かにドイツが中東に侵攻すれば奴等が西と南から我が国に侵攻する恐れもある」

 ドイツが中東に侵攻してイランを占領すれば油田地帯であるバクーが近くなる。スターリンはそれを恐れた。(実際にヒトラーはソ連を恐れたが……)

「まぁ良い。ドイツがフィンランドに義勇軍を派遣しても捻り潰せばいい。我々の兵器は前回とは違う」

 ソ連の兵器は更新しており、特に戦車と航空機は新鋭だった。戦車はオーパーツとまで呼ばれるT-34やKV-1、KV-2であり航空機はYak-1やIl-2シュトルモヴィクが待機していたのだ。

「クックック……あのチョビ髭の驚く顔が目に浮かぶ」

 そう笑うスターリンだったが、スターリンはこの時知らなかった。義勇軍には後にスターリンが懸賞金まで出すほどのタンクキラーがいた事を……。

「ヘックシュン!!」
「風邪ですかルーデル隊長?」
「心配いらん。牛乳を飲んで体操すれば治癒する」




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