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第十八話






「失礼します総統」


 昼食後、総統室でコーヒーを飲んでいるとゲーリングが部屋に入室してきた。


「どうしたゲーリング?」

「は、イギリス爆撃の思案が大体纏まりましたのでその報告に参りました」


 ゲーリングはそう言って書類を俺に渡してきた。


「イギリス爆撃には五個航空艦隊のうち、三個航空艦隊を投入します」


 ゲーリングはフランスの地図を出して場所を説明する。投入する航空艦隊は史実通りに第二、第三、第五航空艦隊だな。


「五個航空艦隊だけではこの大戦は乗り切れないと思われますので、第八航空艦隊までを新設しています」


 ゲーリングがそう補足してくれた。


「爆撃目標ですが、第一目標は敵レーダー基地です。レーダー基地は航空偵察の結果、英仏海峡に多数建設されています。シュトゥーカ隊が徹底的にレーダー基地を叩いてジョンブルにレーダーを使わせません」

「うむ、それは良い事だな」

「そして第二目標は敵航空機の生産工場です。敵空軍の関連する施設は全て攻撃目標に入れています」


 ふむ、大体が史実通りだな。


「第三目標に敵航空基地を視野にしています」


 ゲーリングはそう説明を終えたが……俺は何か釈然としなかった。


「……何か不満な点でも?」

「いや……それは無いのだが……何か釈然としないのだよ」

「釈然……ですか?」

「イギリスが何もしていない事だ」


 イギリスはダンケルクからの撤退後、何一つアクションを起こしていない。

 していると言えばアメリカとのレンドリース法(武器貸与法)が史実より早めに制定されてアメリカからイギリス向けの輸送が活発化されている事だな。

 勿論、Uボートにより通商破壊作戦をしている。


「北部フランスの割譲でイギリスは焦っているはずだが……奴等は動じていない」

「……確かに妙ではありますな」


 ゲーリングが同調するように頷いた。ふと俺はヨーロッパの地図を見ていて北海を見た。

 北海での戦闘はノルウェー沖海戦とノール岬沖海戦くらいだよな……ノルウェー沖海戦?


「……ゲーリング、第四航空艦隊をノルウェーに移せ」

「は? ノルウェーに……ですか?」

「杞憂であればいいのだが……イギリスはノルウェーを攻略するつもりかもしれん」

「ノルウェー……まさかイギリスはッ!?」

「……恐らくはノルウェーのナルヴィクを攻略するかもしれんな。ノルウェー政府には通知せずにな」


 ドイツは鉄鉱石の輸入をスウェーデンから頼っていたが、船からの輸送はノルウェーのナルヴィクから運んでいたのだ。

 ナルヴィクを攻略されるとドイツは鉄鉱石の補給を絶たれるのは間違いなかった。


「レーダーにも連絡をしてUボートを北海に投入させるしかない」

「私はノルウェー政府と交渉をしてきます」


 善は急げとゲーリングは部屋を退出した。




――ロンドン――


「作戦は順調かね?」

「は、上陸船団は間もなく出港します。護衛には本国艦隊が護衛します」


 チャーチルの問いに第一海軍卿のサー・ダドリー・パウンドはそう答えた。


「うむ、それの陽動のためにH部隊がヴィシーフランス艦隊を攻撃するからな」


 地中海にいたH部隊は日時は違えど、史実通りに北アフリカのメルス・エル・ケビールに在泊中のフランス艦隊を攻撃する予定であった。


「手筈は整っております」

「うむ、上手くいけばヒトラーに楔を撃ち込む事が出来るからな。何としても成功させるのだ」


 そして七月十五日、カタパルト作戦ことメルセルケビール海戦が発生した。損害は史実通りである。

 俺は直ぐにゲッベルスを呼び寄せた。


「総統、御呼びですか?」

「ゲッベルス。メルセルケビール海戦は知っているな?」

「耳には挟んでおります」

「宜しい。直ぐにフランス国民に向けてイギリスへの非難をしろ。フランス国民の感情を盛り立てて、フランス国民を完全に枢軸寄りにさせるのだ」

「ヤーッ!! お任せ下さい」


 ゲッベルスはニヤリと笑って退出した。そしてゲッベルスは直ぐにフランスのパリへ飛んで演説をした。


「フランスの皆さんッ!! 貴殿方は我がドイツと戦いましたが残念ながら敗れました。フランスは立派に戦ったのは我々も認めています。フランス軍は確かに強かったッ!! その事に偽りはありません。ですが、イギリスはあろうことにも友好国でありながら友人である筈のフランス艦隊を攻撃して多くの犠牲者を出したのですッ!! 貴殿方はこのような暴挙が許されるのでしょうかッ!! 昨日の敵は今日の友とも言います。今こそドイツとフランスは手を握って猛然とイギリスと戦うべきではないでしょうかッ!!」

『ワアアァァァァァァァァーーーッ!!!』


 フランス国内でメルセルケビール海戦の事は大々的に報じられており、フランス国民の反英運動は高まる一方であった。そして止めにこのゲッベルスの演説である。

 ヴィシー政府のペタンは国民の反英感情を押さえられる事は不可能と悟った。そしてヴィシー政府は枢軸国側への加入を宣言した。


「……上手く事が運ぶのは良いが、些か怖いな」


 俺はボルマンからの報告にそう呟いた。まぁフランスが枢軸国側に入るなら構わないけどな。

 問題は……。


「レーダー、海軍はどうしている?」

「は、ノルウェーに第一機動部隊とシャルンホルスト級二隻、リュッツォを派遣しています。ノルウェーにも空軍の第四航空艦隊が移動して偵察飛行を繰り返しています。偵察にはUボートも十八隻を投入して警戒しています」


 キール軍港を出港した第一機動部隊は司令長官にギュンター・リュッチェンス大将にしていた。シャルンホルスト級二隻とリュッツォの指揮官はヴィルヘルム・マルシャル中将である。

 キール軍港を出港して今はノルウェーのスタヴァンゲルの沖合いを航行している。

 空軍の第四航空艦隊は二部に分かれてナルヴィクとトロンヘイムに駐留していた。


「何も無ければいいんだが……」


 俺はそう呟いたが、直ぐに現実となった。




 イギリス本国艦隊に護衛された上陸船団はスカパ・フローを出港してシェトランド諸島の沖合いを航行していたが、此処でUボートに発見された。


「ジョンブルの艦隊だッ!! 直ぐに第一機動部隊へ知らせるんだッ!!」


 Uボートの艦長は史実同様にスカパ・フローで戦艦ロイヤル・オークを撃沈したギュンター・プリーンである。

 プリーンは船団が遠ざかってから第一機動部隊に打電した。




――第一機動部隊旗艦デアフリンガー――


「総統の言われた通りに出てきたな。攻撃隊の準備をしろッ!! 空軍の第四航空艦隊にも知らせるのだッ!!」


 第一機動部隊司令長官のギュンター・リュッチェンス大将はそう叫んだ。








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