第十六話
ダンケルクでイギリス軍とフランス軍は大量の兵士と重装備を喪失した。
兵士はそう簡単に出来る事ではない。イギリス軍はかなりの痛手だろうな。
クックック、ざまぁみろチャーチルめ(笑)
そしてダンケルクの包囲戦を終了したドイツ軍はパリへ向かって進撃を開始した。
フランス政府は六月三日にパリを無防備都市宣言してパリを放棄、政府を史実通りにボルドーに移した。そして同日、 ムッソリーニのイタリアが英仏に対して宣戦を布告。
……イタリアの軍備は大丈夫なのだろうか?
六月十日にはドイツ軍がパリに無血入城した。そして六月二十日に、フィリップ・ペタンを首班とするフランス政府はドイツに休戦を申し込み、フランスは降伏した。
独仏休戦協定が結ばれたが、交渉の場所として俺はコンピエーニュの森を指定した。
コンピエーニュの森はドイツが第一次世界大戦を惨敗で終えた1918年の休戦協定を交わした場所でもある。
フランスをある意味で屈服させるのにこれが必要だと思うからな。俺はドイツが1918年に第一次世界大戦の休戦協定に署名したのと同じ鉄道車両で休戦協定に署名することを決めた。
なお、途中で国防軍最高司令部総長のヴィルヘルム・カイテル 大将を残して車両から退出するような行為はしていない。
最後まで車両にいた。一応ながら戦って負けた相手なのだから敬意を表すべきだからな。
独仏休戦協定の内容はほぼ史実通りだが、占領経費の負担は半年で四億フランにしておいた。更に食糧の提供も追加させた。
また、フランスの海外植民地のジブチとマダガスカルを譲渡してもらった。
なるべく友好的にしておかないとな。ノルマンディー以降のフランスの戦いで反旗を翻しそうだからな。
それと艦艇もリシュリュー級二隻をドイツに譲渡させる事で解除は免れた。史実では降伏前に逃げていたが、シュトゥーカ隊が爆撃をして中破に追い込ませていた。
空母ベアルンも欲しかったがこの時ベアルンは西インド諸島にいたので恐らくアメリカに拿捕されると思ったので止めといた。
勿論、ベアルンがフランスに帰還したらドイツに譲渡する約束になっている。
フランス側は協定が厳しすぎると反論したが、俺はヴィシー政権には必要以上な干渉はせず(レジスタンスの取締りは例外)、百万人以上の捕虜を返還する事で何とか協定に合意した。
こうして協定が結ばれてフランスは南部にヴィシー政権を樹立させて北部をドイツに譲渡した。
――ベルリン、総統官邸――
「諸君、漸く第一次世界大戦の屈辱を晴らす事が出来た。俺からありがとうと言わしてほしい」
俺はそう言って総統室に集まったフリッチュ達に頭を下げた。
「マインヒューラー、頭を上げて下さい。マインヒューラーがいなければドイツは立ち直る事は出来ませんでした。これは我々の勝利です」
祝勝のパーティにマンシュタインも参加していた。
「そうか……では乾杯しようではないか。そろそろ皆も飲みたい事であろう」
俺の言葉に皆は苦笑してグラスを上げた。
『乾杯ッ!!』
その後、パーティが始まるのであったが誰かがエリカさんにワインを飲ましたためエリカさんが暴走。
ハチャメチャなパーティになった。
「うぅ〜ん……総統ぉ……」
エリカさんは顔を真っ赤にし、俺の膝で寝ていた。暴れて力尽きたんだな。
「総統」
「ん? その声はゲーリング……」
不意に久しぶりにゲーリングから声をかけられたため、振り返るとそこには太っちょじゃない誰かがいた。
「……誰だお前は?」
「御冗談をお止め下さい総統。私です、空軍大臣のゲーリングです」
『………』
その瞬間、時が止まった。
『……何ィィィーーーッ!?』
開いた口が塞がらない……何せ、目の前にいるゲーリングはニュルンベルク裁判時のような姿をしていたのだ。
「総統のおかげでモルヒネから抜け出せる事が出来ました」
聞けば、ゲーリングの夫人達が積極的に奮闘したらしい。
「……グートだゲーリング。これからは宜しく頼むぞ」
「お任せ下さいマインヒューラー。既にミルヒやウーデットと相談しまして防空態勢の構築に勤しんでおります」
……何かゲーリングは覚醒したな。
「ところで総統。対フランス戦で漫画の更新が停止しておりましたので是非とも更新してほしいのですが……」
「……抜け目が無いというか何というか……分かった。新作を出すようにはしておく。それとだ、ゲーリングが見事にモルヒネから抜け出せれたのを記念してお前に氷の妖精を描いたBf109を一機贈呈しよう」
その瞬間、ゲーリングが吼えたのは言うまでもなかった。これが後のドイツ空軍で流行した痛戦闘機の始まりであった。
――六月二五日、東京――
「……ドイツがフランスを降した」
「ヒトラーの予定通りです。それにオランダがドイツの味方になりました。石油不足も解消されると思います」
東京の参謀本部で足利達が会議をしていた。会議には陸軍から東條、杉山、永田が参加して海軍からは山本五十六、岡田、井上、堀、そして足利が参加していた。
「正式に四国同盟を結ぶべきではないか? ドイツとは技術、軍事同盟が結ばれてはいるが、史実通りにオランダを加えた四国同盟を締結させるのが無難だと思うが……」
杉山はそう主張した。陸軍側も頷いている。
「だがアメリカがどう出るかは分からんぞ?」
「やはり今のままで良いのではないかね?」
山本や井上がそう反論した。彼等も同盟を結ぶのは賛成していたが、イタリアが同盟に参加するのは気が進まなかった。
史実での体たらくは足利から聞いているため、あまり良い好感は持たなかったのだ。
「大丈夫でしょう。確かにイタリアは体たらくではありますが、やる時はやる奴等ですし(主に女性にだが……)」
足利はそうフォローしたが、内心はそう呟いていた。
「イタリア軍の兵器は強いとは言いませんが此方から九七式中戦車を提供したり強化するのが無難でしょう。ドイツはインド洋の拠点を設けましたからスエズ攻略も出来やすいでしょう」
足利はそう補足した。結局、四国同盟を締結する事を決定して大島大使を通じてドイツに伝えられた。
「……史実の+オランダか……」
総統室で俺はそう呟いた。恐らく輝義の差し金だな。
あいつも上手くやっているみたいだな。
「……イタリアとオランダが心配だがやってみるか。ソ連とはまず無理だしな」
俺はそう思い、リッベントロップを呼び寄せて四国同盟の準備に移らせた。
そしてそれから七月七日、ドイツのベルリンにて日独伊蘭の四国軍事同盟が締結されたのであった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m