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第十話






――モスクワ、クレムリン――


「……チョビ髭め、中々やりおるわ」

「は……」


 スターリンの言葉にモロトフはそう答えた。


「モロトフ」

「は」

「お前にはもう一度ベルリンに行ってもらう」

「分かりました。しかし何故ですか?」

「……ドイツと不可侵条約を結ぶためだ」

「ッ!?」


 スターリンの言葉にモロトフは驚いた。あれほどフィンランドに肩入れをするヒトラーを嫌っていたはずである。


「敵の敵は味方……という言葉がある」

「はぁ、ですがヒトラーは不可侵条約を結ぶでしょうか?」

「……結ぶだろう。いや結ばざる得ないのだよ、何せ……」


 そう言ってスターリンは世界地図のポーランドを見た。


「……種は蒔いた。後は咲かせるだけだ」


 スターリンはニヤリと笑う。スターリンの表情にモロトフは冷や汗がでるのであった。




――ベルリン、総統官邸――


「我がドイツと不可侵条約の締結を……?」

「は、同志スターリンはそのようにと……」


 俺の呟きに目の前にいるソ連代表のモロトフはそう言った。

 ……何が狙いなんだソ連……いやスターリンは……?

 条約を締結すれば史実のようにポーランドに侵攻してポーランドを二分割で第二次世界大戦が幕を開ける。

 けど、戦争はまだ無理だ。まだ海軍の補充計画は終わっていない。

 出来れば四個水雷戦隊が戦列化するまでは無理だろう。今のところは一個水雷戦隊しか出来ていない。(他にも第一機動部隊の護衛艦隊もいるため)


「……モロトフ外相。いきなりの事なので重臣達と相談がしたい。後日、また改めて返事を返そうと思う」

「分かりました。よい返事を期待しています。それと書記長からのなのですが『ドイツは必ず我がソ連と条約を締結するだろう』と言っておりました」

「……そうか」

「それでは失礼します」


 モロトフ外相はそう言って部屋を退出するのであった。


「エリカさん、済まないがゲーリング達を呼んできてくれないか?」

「はい、分かりました」


 隣の小部屋で控えていたエリカさんが俺に頭を下げて退出した。

 そして数分後、ゲーリング達が入室して条約の説明をした。


「……スターリンは何を考えているのでしょうか?」

「それが判れば苦労はしないな……」


 フリッチュの言葉に俺はそう呟いた。結局、条約の話は一旦無視する事にした。


「スターリンの真意が判らん。ここは慎重になるべきだろう」


 俺の言葉にゲーリング達は頷いた。しかし、三日後に俺は予想にしない報告を聞くのであった。




――ポーランド回廊、ダンツィヒ――


「もうこれ以上、住民の不満を払拭する事は出来ないぞ」

「総統は一体何をしているのだろうか……」


 ダンツィヒのナチ党支部ではそのように話されていた。


「武装蜂起出来る弾薬や銃は十分にある。後はドイツがポーランドに……」


 ナチ党員はポーランド回廊の住民の不満を出来るだけ押さえていたが、日に日に増していく怒りを払拭するのは完全に出来なかった。


「一体どうすれば……」


 その時、ダンツィヒの街に爆発音が響いた。


「どうしたッ!? 何があったんだッ!!」


 黒煙を見ながらナチ党員が叫ぶ。そこへ別のナチ党員が走ってきた。


「大変ですッ!! 住民達が武装蜂起しましたッ!! 倉庫に保管しておいた爆弾や手榴弾を使って警察署を攻撃していますッ!!」

『ッ!?』


 党員の報告にその場にいた党員達は困惑した。


「どうしますか?」


 若い党員は年長の党員に指示を仰いだ。年長の党員は暫し悩んだ後に決断をした。


「……こうなれば徹底抗戦しかない。全員武器を取れェッ!!」


 ダンツィヒのナチ党支部も抗戦を決意したのであった。

 ポーランド回廊の反乱に驚いたのはポーランドとドイツであった。


「おのれドイツめ、直ぐに軍を派遣して鎮圧しろッ!!」


 ポーランド大統領のイグナツィ・モシチツキはそうポーランド陸軍に指示を出してポーランド陸軍は二個師団をダンツィヒに派遣した。

 結果、ダンツィヒで武装蜂起したドイツ系市民とナチ党員合わせて三百名余りが戦闘で死亡し、六百名余りが捕らわれてドイツへの見せしめとして虐殺された。

 更に蜂起に参加していないドイツ系市民も多数が虐殺されたのである。




「……誰が武装蜂起をしろと言ったッ!! ポーランド回廊の支部にはまだ動くなと厳命していたはずだぞッ!!」


 俺はヒムラーを呼び寄せて激怒していた。マジで。


「総統、私もそのような命令をしておりません」

「じゃあなんだこれは? 何故武装蜂起をしたのだ?」

「……総統、これは生き残った支部党員からの報告なのですが……」

「申してみよ」

「は、実は武装蜂起の現場でロシア語を聞いたと……」

「ロシア語……? まさか……」


 その時、俺はパズルの最後のピースが填まったような気がした。


「……そういう事か。そういう事だったのかッ!!」

「総統、やはり……」

「……恐らくはそうだろうヒムラー。我々は嵌められたのだよ。あの銀行強盗になッ!!」


 俺はそう叫んだ。いや、叫びざるをえなかった。


「あの銀行強盗はポーランド・ソビエト戦争で敗北してから雪辱の機会を伺っていたのだろう。そして雪辱の機会がこの反乱だ」

「……総統、最早歯車を止める事は……」

「……もう限界だろうな。問題は国民にどう知らせるかだ」

「開戦を目論んでいたとなるとイギリスやフランスが抗議してくるでしょう」


 ゲッベルスはそう判断したが、それは俺もそう思っていた。


「ポーランドからの抗議は適当に受け流しましょう。それか逆に此方も抗議してはどうです?」

「ドイツ系が反乱する原因になったのは回廊に道路を作らなかったからだと?」

「ヤー。開戦日が来るまではそれで凌ぐないかもしれません」

「……分かった。ゲッベルス、その方向で頼む。それとリッベントロップ」


 俺の言葉に外相のヨアヒム・フォン・リッベントロップが立ち上がる。


「君はモスクワに飛んでくれ。不可侵条約を締結しよう」

「それでは……」

「……本当ならばもう少し時が欲しかったがやむを得ない。開戦する」


 俺の言葉にゲーリング達は遂に来たかと表情を変えた。


「フリッチュ、直ぐに兵士の動員をしろ。ポーランドの国境付近に奴等に気付かれないように配備させるのだ」

「ハイルッ!!」

「レーダー、第一機動部隊でポーランド海軍を攻撃する計画を急ぎ作れ。全て沈めてしまうのだ」

「ハイルッ!!」

「ゲーリング、空軍は総動員して陸海の援護をするのだ。初戦でポーランド空軍の航空部隊を壊滅させろッ!!」

「ハイルッ!!」


 三人は次々に叫んだ。


「諸君、やるぞッ!!」

『ハイルッ!!』










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