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第9話(弟子入り)

 爽やかな陽の光が窓から差し込んでいる。

 渚は少し早く起き、カッペト達がいる部屋の前に立って、ドアをノックした。


 「カッペトさん、メティルトさん、おはようございます!」

 

 透き通った朝の空気に乗って、カッペト達の耳に渚の声が届く。

 メティルトは、ドアを開ける。


 「ナギサ様! おはようございます! 体調、よくなったのですね! よかったです!」

 「メティルトさん、ご心配をおかけしました」

 「お師匠様ー! ナギサ様がいらっしゃいましたよー!」


 メティルトは、部屋の奥でタンクトップを着て体操をしているカッペトに向けて、元気いっぱいに言葉をかけた。


 「ふぉっふぉ。 お嬢さん、今日は、ずいぶんと晴れやかな顔じゃのお」

 「カッペトさんも、その節はありがとうございました」

 「ふぉっふぉっふぉ。 ワシは何もしとらんよ。 それで、ワシらに何か用かの?」

 「カッペトさん、お願いがあります。 私にもメティルトさんのように魔法を教えてください」

 「ほお。 これはまた急にどうしたのじゃ?」

 「私、ルリーシヤさんと冒険に行きたいんです。 その時に、ルリーシヤさんにご迷惑をかけなくて済むような力が欲しいのです」

 「ふぉっふぉっふぉ。 ルリーシヤと冒険がしたいじゃと? これはまた物好きがいたもんじゃのお。 いいじゃろう。 お嬢さんは、ワシの店を強盗から守ろうとしてくれたからのお。 メティルトもよいかの?」

 「ナギサ様なら、あたしも歓迎です!」

 「ふぉっふぉ。 それじゃあ、決まりじゃのお」


 渚は、カッペトのもとで、魔法を学ぶことになった。


 朝8時を知らせる鐘が鳴る。


 「おお、そうじゃ。 ルリーシヤを働かせに連れて行く時間じゃ。 お嬢さん、ちょっと待ってておくれ」


 そう言って、カッペトはルリーシヤのいる部屋に向かった。

 カッペトは30分程度でルリーシヤを送り届け、戻ってきた。


 「それでお嬢さんは、どんな魔法を使ったことがあるのじゃ?」

 「何も…… ありません。 ルリーシヤさんから杖をお借りして試してみたことはありますが、魔法は使えませんでした」

 「ほお。 あのルリーシヤが持っている杖か…… お嬢さん!! その杖、まさか……」


 カッペトはそう言って、机の上に置いてあったメモ用紙に杖の絵を描き始めた。

 杖の輪郭、模様が徐々に浮かび上がってくる。


 「そ、そうです!! これです!」


 カッペトが全体像の7割ほどを描き終えた頃、渚はそう言った。


 「やはり、そうじゃったか…… ふぉっふぉっふぉ。 そういうことなら、魔法が使えなかったというのも無理はないのお」

 「どういうことですか?」

 「その杖は、この世界が始まって以来、最も偉大な魔法使いノクフィーが使っておった杖じゃ。 数多の魔法使いが手に取って杖に語りかけたが、奴以外の者は誰も声すら聞くことができなかったんじゃ。 ルリーシヤは、全ての杖の声が聞こえないから、どれも同じじゃと思っておるようじゃが、杖にも扱いやすさというものがあるでのお」

 「それは、カッペトさんも…… ですか……?」

 「そうじゃよ。 昔、ルリーシヤから、自分が持っていても仕方がないから使ってくれと渡されたことがあったんじゃ。 その時、ワシにも杖は語りかけてこんかったのお」


 渚は、とても驚いた。


 「カッペトさん! 実は、私、その杖を持った時、声が聞こえたんです! 『才能がない』と言われ、呪文は教えてくれませんでしたが……」

 「なんじゃと!! それは本当か?! もしかしたら、お嬢さん、とんでもない才能があるやもしれんぞ! 杖は、本当に見限っている者に対しては、声すらかけてこないんじゃ。 あの時のワシのようにのお」


 ここで、メティルトの腹の虫が鳴いた。


 「ふぉっふぉ。 それでは、続きは昼食後としようかのお」

 

 メティルトは、腹部を手でおさえ、恥ずかしそうにしている。


 「そうじゃ、たまには皆で、外に食べに行こうかのお。 お嬢さんの復帰祝いじゃ」

 「やったー! お師匠様、ありがとうございます!」

 「カッペトさん、ありがとうございます」

 「決まりじゃ。 そうとなれば、ルリーシヤも連れて行くかのお」


 そう言い残し、カッペトはルリーシヤを迎えに行った。





 「なによ。 私を監視しに来たの? 心配しなくても、ちゃんとやっているわ」

 「ふぉっふぉっふぉ。 ワシがそんな暇老人に見えるかのお」

 「見えるわ」

 「お前さんも、お嬢さんの復帰祝いに連れて行ってやろうかと思ったが、嫌ならいいんじゃ。 ふぉっふぉ」

 「ちょっと!! 誰もそんなこと、言ってないじゃない!!」

 「ほお。 というと、それはいったいどういうことじゃ? 最近、頭の回転が悪くて困っとるんじゃ」

 「私も、行きたい……」


 ルリーシヤは、小声でそう言った。


 「私も? なんじゃ? 聞こえんのお」

 「わ、私も連れて行きなさい!!」

 「ふぉっふぉっふぉ。 お前さんは相変わらずじゃのお」


 ルリーシヤとカッペトは、渚たちが待つ宿へと足早に向かった。

 渚の復帰祝いの昼食会が、今始まる。


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