↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/16

第7話(後始末)

 「まったく、やりすぎじゃわい……」


 そう言いながら、カッペトは周囲を見渡した。


 「メティルトや。 覚悟せい。 そこそこの力を持った魔物が、ここに向かってくるぞ」

 「お師匠様、あたしは準備万端です!」

 「ふぉっふぉっふぉ。 ワシとあのバカ女でお嬢さんを見ておくから、魔物は任せてよいかのお?」

 「もちろんです! お師匠様!」


 ルリーシヤがカッペトの言葉に反応する前に、メティルトが返答した。

 ルリーシヤは、メティルトの膝の上に頭を乗せ、横たわっている渚を抱きかかえる。

 メティルトは、カッペトの期待に応えようと、勢いよく立ち上がり、魔物の気配がする方向に対し、杖を構えた。


 「あの子1人で大丈夫なの? まだ小さい子どもよ?」

 「ふぉっふぉ。 お前さんと一緒で期待されると伸びるタイプなのじゃ。 良い機会じゃし、ここは、いっちょ協力してくれんかのお」





 更地となったカッペトの土地に、亀裂が生じ始める。

 亀裂がルリーシヤとカッペトの足元まで迫った時、先刻焼失した家と同程度の大きさのヒルのような魔物が3体、地下から現れた。

 ナイフのように鋭い歯が、同心円状に整列し、口の中に生えている。


 3体の魔物は、現れるや否や、一番近くにいたメティルトに向け、同時に火を吐いた。


 メティルトは、それに呼応し、魔法を発動させる。

 運河のように大量の水が、3体の魔物に向け放たれる。

 放たれた水は、魔物の目前に迫った。


 「やるわね」

 「ふぉっふぉ。 そうじゃろ。 魔法の規模じゃと、ワシとそう変わらぬからのお」


 しかし、メティルトが放っている水の量は徐々に減少し、魔物の吐いた火に押し返されはじめた。


 「手伝うわよ!」


 ルリーシヤは、メティルトに聞こえるよう、大声でそう言った。


 「大丈夫です! あたし、まだまだいけます!」


 ルリーシヤは、渚を地面に優しく寝かせた後、フゥっと息を吐き、構えた。


 「【勝痰流 吐出の拳】」


 吐出の拳は、痰を吐くかの如く猛スピードで拳を繰り出し、相手の肉体を貫く技である。

 これは、勝痰流を極めし者にしか使用できない奥義である。

 この世に吐出の拳を使用できる人間は、ルリーシヤ、そしてカッペトの2名のみである。


 ルリーシヤの拳は、最も近くにいた1体の魔物を貫いた。

 その勢いのまま、2体目、3体目の魔物の身体にも巨大な穴を空けた。

 身体を貫かれた3体の魔物は、瞬く間にドミノのように倒れていった。


 「あ、あれは…… お師匠様の……」


 眼前の敵をルリーシヤに倒されたことにより、カッペトの期待に応えられなくなったと思ったメティルトは、「助けてくれなんて言っていないです!」と少し不機嫌になる。


 「カッペト、見てごなんなさい。 あなたの弟子が一撃で倒したわよ」


 カッペトは、レンズ全体に炭の粉が付着した大きな銀色のサングラスを外す。


 「ふぉっふぉっふぉ。 流石じゃのお!」


 カッペトの言葉を聞いたメティルトは、「ありがとうございます!! バカ女様!」と、純粋な眼差しでルリーシヤに感謝を伝えた。


 「あぁのジジイ…… 私は、バカ女ではないわ! ルリーシヤよ!」

 「ルリーシヤ様! 私、もっと修行に励みます! そして、ルリーシヤ様に負けないくらい強くなります!」


 メティルトは、夕日に照らされるルリーシヤを見上げて、そう言った。

 メティルトの尊敬する人物が1人増えた。





 魔物を討伐したルリーシヤは、気を失っている渚を抱え、宿に戻った。

 渚をベッドに寝かせ、布団をかける。


 「ひどい怪我だわ…… これは、しばらく安静が必要ね」


 氷の入った袋を顔の患部に固定し、渚の様子をしばらく確認した後、ベッドの近くにある椅子に腰かけた。

 その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


 「はーい。 なにかしら?」


 ルリーシヤは、ドアを開ける。

 そこには、カッペトとメティルトが大量の果物を持って立っていた。


 「ふぉっふぉ。 ちょいと見舞いにと思っての。 様子はどうじゃ?」

 「ナギサ様が心配です!」

 「ありがとう。 しばらくこの宿で休ませることにするわ」

 「そうか…… ワシらもこの宿にしばらく世話になることになったからのお。 何かあれば言うがよいぞ」


 そう言って、カッペトとメティルトは、自分たちの部屋へと向かおうとする。


 「え? 今なんて言ったのよ?」

 「誰かさんが、ワシらの家を消し炭にしたでのお。 あえなく宿暮らしってわけじゃ。 後で、しっかり働いて弁償してもらうからの。 覚悟しとくのじゃぞ」

 「あ、あれは…… あいつらが悪いのよ! カッペトだって、『清々したのお』って言ってたじゃない!」

 「まあの。 じゃけど、それはそれ。 これはこれじゃ。 また明日、様子を見に来るでのお。 ふぉっふぉっふぉ」


 カッペトとメティルトが立ち去る姿を、ルリーシヤは呆然と眺めていた。


 「お師匠様! あたしたちの部屋はここです!」


 メティルトは、部屋番号の書かれた紙を確認しながらそう言った。


 「おお、ワシらの部屋は、お前さんらの隣か。 ふぉっふぉ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。