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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
8章 探索者になろう
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19話 最終試練

卑怯とも言える巨大迷路を攻略してから、更に1日を費やして何とか10ステージまで来れた。9ステージは、今までの集大成のようなステージで連続するトラップ群にプチ迷路、そして忘れもしないあの無数の穴の中から正解を探す奴。それを見つけたときのアサギの顔は、今後一生忘れないと思う。人って、心に闇を抱えると本当に目からハイライトが消えるのな。あんなのラノベとか漫画の中だけだと思ってたよ。そして、いよいよ10ステージ目。俺達の予想が正しければ、ここが最終ステージのはずだ。ここに来るまでで5日も要してしまった。嫌でもソウルたちとの力量差を感じさせる結果となった。


「ほらホクトくん、またそんな顔して……言ったでしょ、よそはよそよ」


「顔に出てた?」


「思いっきり……」


いかんいかん、考えないようにしてたのにアサギに心配させてしまった。割り切ってたと思ったのにこれだ……まあ、俺よりも直情的に表してる奴もいるけど。


「くっそ、なんでアタイたちは5日もかかったんだ!」


「あなたが何もしなかったからでしょ。なに人のせいにしてるのよ」


まあ、カメリアだけじゃなくて俺もだけどな。


「ここを超えれば探索者だ。準備はいいか?」


アサギ、カメリア、そしてポロン。皆の顔を見回して確認する。カメリアはああ言ってるけど、今回試験を受けたのは間違いなくプラスだ。ここの試験は、ふるいにかけると言うよりも、1つ1つ丁寧にトラップについて教えてくれてたような気がする。9ステージなんて、まさに復習を前提にしたようなところだった。今までに出てきたトラップやギミックのオンパレード。それも、応用してるとか捻ってるとかじゃなくて、そのままが出てきた。これは受験者が、正しく探索の能力を身に着けたかの確認をする意味合いが強い。俺達も、今までのステージを思い出しながら何とかクリアした。これで、多少は願いの塔に入るための自信を手に入れたな。


「よし、行くぞ」


ポロンを先頭に道を進む。結局最後まで、このフォーメーションだったな。ただ、今のフォーメーションは、あくまで敵が出てこない事が前提になってる。敵が出る願いの塔では、このフォーメーションは使えないだろう。それまでに、最善の形を模索しないといけない。まあ、それは帰ってからでいいだろう。


しばらく歩いたけど、10ステージに入ってから一度もトラップに出会っていない。何かのギミックがある感じもしない。これって……。


「なあ、アサギ。ひょっとして、このステージって……」


「ホクトくんも思った?私も、そうじゃないかと思ってたの……」


「あん?何の話だ?」


アサギは俺と同じ感想みたいだ。カメリアは……まあ、いつもの事だ。


「多分、このステージは最後の部屋しかないんだと思う」


「あ?なんでそんな事が解るんだよ」


「なんて言うのかな、この施設って試験のためにあるんだけど……探索者になる者を選別するってよりは、探索者になった後で困らないように受験者に色々レクチャーしてくれてるって言うのかしら?そんな気がするのよ」


やっぱりアサギも俺と同じことを感じていた。ここは試験会場であると同時に、予備校でもある。1つ1つ、トラップについて身体で覚える形で俺達に教えてくれている。実際に願いの塔で遭遇すれば危険なトラップも、ここでは多少の怪我で済むようになっている。人間、一度陥れば学習する。そこで学んで、次に活かす。それを要求しているように感じる。なら、このステージの意味はなんなのか……。


「このステージは、行ってみれば卒業試験……ってところじゃないか?」


「卒業試験……なるほど、ピッタリな表現ね」


「……なんだよ、2人して解ったようなこと言いやがって。アタイにゃ、全然意味が解らねえぞ」


そんな風にプリプリ怒るカメリアを見て、俺もアサギも苦笑する。カメリアも、ジッと観察すれば解る事だ。このステージに来て、まだ1回も分岐路を見ていない。恐らく、このステージは1本道なんじゃないかと思ってる。それは、このステージの目的が惑わすためじゃなくて、見極めるためだから。


「まあ、気を抜かずに行こう。ここを作った奴が捻くれてるのは既に解ってる事だ。俺達にそう思わせておいて、実は……なんて事も十分にあり得る」


「……そうね。これまでの事を考えると、そっちの方が逆に可能性が高く感じるわ」


そんな会話をしつつ歩を進めると、遂に道が終着点に辿り着いた。目の前には大きな扉。間違いなく、これが最後の試練なんだろう。


「……本当に何もないまま、ここまで来ちまった」


「いよいよだな。ここをクリアできれば、俺達は晴れて探索者だ」


最後の試練の前に、入念に準備をする。足りてないものは無いか、休息は十分か。各々が交代で確認する。そして、全て問題ない事を確認して、俺達は目の前の大きな扉を改めて見る。


「デカいな……」


「これ、人の力で開けれられるのかしら?」


扉の大きさは3mほど。それが左右で一対の両開き扉として鎮座していた。ただ、取っ手の部分は俺達の身長に合わせているのか、大分下の方に付いている。両方の扉の取っ手を掴んで、思いっきり押し込んでみる。すると、思った以上に軽い力で奥に押し開いた。


「ホクトくんって、そんなに力持ちだった?」


「いや、この扉……こう見えて、すげえ軽い。多分アサギでも簡単に開いたと思うぞ」


何にしても、最後の扉が開いた。後は中に入って、試練をクリアすればいいだけだ。ゴクリッ、誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。


「……行こう」


こうして、俺達猛炎の拳は、探索者試験の最終試練に挑戦した。





中に入って、最初に感じたのは薄暗さだった。多分広さ的には、これまで見てきた各ステージ最後のホールと同じくらいだと思う。ただ、これまでと違って光源が足りてないのか、奥の方は暗くて良く見えない。ホール中央の天井に、小さな灯りがともっている。この部屋の光源は、あれだけみたいだ。壁面には、グルッと壁に沿うように額に入った何かが飾られている。暗くてよく見えないけど、何か絵が飾られてるのか?


「随分暗いわね……」


「あぁん?……良く見えねえぞ」


アサギとカメリアも、その暗さに困惑しているみたいだ。そして、今まで見てみぬふりをしていたけど、さすがにこれ以上無視を続ける訳にもいかない。


「……なあ、あれって」


「うん、多分ホクトくんが思ってる事が正解だと思うよ」


アサギの頬を汗が伝い落ちる。俺の頬にも汗が滴っているんだろう。嫌な予感が膨らむ。確かに、ここまでにもあいつの同種は出てきた。だけど、あそこまであからさまな姿で出てきたのは初めてだった。


「あれって、ゴーレムだよな。おかしいじゃねえか。聞いた話じゃ、この施設の中に魔物は居ないんじゃなかったのか?」


「仮に、あのゴーレムが動くとして……恐らく職員が、もしくはギルドが使役しているゴーレムなんでしょうね。だから、分類としては魔物じゃないわ」


アサギの言う事はよく解るけど、何の慰めにもならない。恐らく動くだろうゴーレムを観察する。今は目の前のゴーレムからは、何も感じない。でも、きっと近づいたら動き出すだろう……。


「どうする?」


「……俺達に選択肢は無いんじゃないか?これは、行くしかないだろ」


覚悟を決めて、ゴーレムに近づく。ゴーレムまでの距離が3mを切りそうになったところで、目の前のゴーレムが僅かに動いた。ああ、やっぱり……。


「気を付けろ、やっぱり動くぞ!」


探索時のフォーメーションを変更して、俺とカメリアが前衛に躍り出る。その後ろでは、アサギが戦闘態勢に入る。ポロンは遊撃部隊だ。俺の横で、チャンスを伺っている。


「ゴオオオォォォー!」


完全に起動したゴーレムが、俺達の前に立ちはだかる。試練の内容は何も書かれていなかったけど、恐らくこいつを倒せって事だろうな。


「ホクトくん、カメリア。ゴーレムは、魔法耐性が弱いわ。私が大きいのを一発ぶちかますから、その間あなたたちでゴーレムを近づけさせないで!」


「「了解!」」


ゆっくりと起立して、戦闘態勢に入るゴーレム。立ち上がると、その大きさが如実に表れた。体長は3mほど。恐らく、この部屋に入るときのドアは、こいつの事も見越した設計になってるんだろう。それにしても、最近大型の魔物と戦う機会が増えた。油断はできないけど、いつもの力を発揮できれば勝てるだろう。その程度の脅威だ。


「行くぜ!遅れんなよ、ホクト」


「当たり前だ!」


カメリアと同時に仕掛ける。俺は右から、カメリアは左から。


「まずは、物理が効くのか試してやる」


ゴーレムの左側面に回り込んで、その太い足に蹴りを見舞う。ゴーレムは動かない、俺の蹴り程度じゃ大してダメージを受けないとでも思っているのか……その油断は命取りだ。


「まずは足!」


魔力を練って、右足に魔力を這わせる。微動だにしないゴーレムの左足に、渾身のミドルキックが炸裂する。そして、俺の攻撃はこれだけじゃない。流した魔力を一気に開放した。


「うらぁ!」


足に当たった感触はした。だけど、それだけだった。蹴られた場所には見向きもしないで、俺の方を睨み付けている。そのまま拳を振り上げ、一気に俺に向かって叩きつけてきた。


「うおぉっ!」


間一髪回避が間に合う。だけど、そのせいで少しだけゴーレムとの距離が開いてしまった。


「何やってんだホクト!浸透はどうした!」


「うっせぇ、使ったのに効果が無かったんだよ!」


こんな事は、浸透を覚えてから初めてだった。相手に接触して、魔力を流して発動。どこにも失敗の形跡が見当たらない。だけど、俺が発動した浸透はゴーレムに効かなかった。これは……。


「お待たせホクトくん、カメリア。行くわよ!」


アサギの広域殲滅魔法が来る。俺とカメリアは、巻き込まれないように避難する。俺達が離れたのと同時に着弾。紅蓮の炎がゴーレムを焼き尽くす。


「やったか?」


アサギの元に集結した俺達。今目の前では、ゴーレムの丸焼きができあがろうとしていた。だけど、どうもおかしい。いくら生命体じゃ無いからって、あの天狐の炎を受けてノーリアクションを保つことなんてできるのか?


「……まずいわ」


すると、隣のアサギが驚愕の表情でゴーレムを見ている。


「どうした?」


「あのゴーレム、魔法が効いてないわ」


「はぁ!?」


「最初にお前が言ってたのと違うじゃねえか。ゴーレムってのは、魔法に弱いんじゃなかったのかよ!」


アサギは確かにそう言った。だけど、今目の前でまるで反応を返さないゴーレム、そして俺の浸透が発動しなかった理由。それが魔法に耐性があるって事なら納得がいく。


「魔法が効かないとしてどうする?俺とカメリアで、力で圧すか?」


「どうかしら。もっと根本的な所で、私たちは勘違いしているのかもしれない」


天狐の炎が徐々に弱くなっていく。そして、まるでダメージを受けた形跡が無いゴーレムが姿を現す。これは、本当に魔法に耐性がありそうだ。


「なら、アタイの出番だな!」


喜々としてカメリアがゴーレムに突っ込んで行く。まったく、あいつの考えなしも大概だな。だけど、今の状況を考える時間がほしい。それには、カメリアにゴーレムを抑えてもらうのもアリかもしれない。


「なあアサギ、ゴーレムってのは本来魔法に弱いものなのか?」


「そう私は聞いていたわ。私もじかにゴーレムを見たのは、今回が初めてなの。ゴーレムについては師匠から聞かされていたんだけど……師匠が嘘を教えるとは思えないんだけどな」


なるほど。アサギのゴーレム知識は師匠譲りか。それを信じていたからこそ、魔法が効かないゴーレムに驚いている。俺なんかは予備知識が無いから、魔法を弾かれてもそう言うものかと意外にすんなり受け入れてたりする。そもそも俺の世界には無かったものだ。今目の前の出来事だけが真実。それに、カメリアと戦っているゴーレムを観察する。


「どうも、物理攻撃もあまり効果が無いみたいだぞ」


「……そんなゴーレム聞いたことが無いわ」


アサギから聞いた事と、目の前のゴーレムから得た情報で推理する。自ずと答えは出てくるものだ。


「つまり、目の前のゴーレムはただのゴーレムじゃないって事だ。多分なんだけど、こいつもギミックの一部なんじゃないか?」


「……どういう事?」


「そのまんまだよ。俺達は目の前のゴーレムを、ゴーレムだと思ってた。だけど、その特徴は大凡ゴーレムとは違っていた。なら、考えられるのはゴーレムに似ているけど、目の前のあいつはゴーレムじゃないって事だ。それと、俺達が今いる場所……それを考えるとあいつも仕掛けの1つ。ギミックの歯車の一枚じゃないかと思ったわけだ」


それしか考えられないだろ。突然、こんなところに変異種のゴーレムがいる……まあ、居ないとは言い切れないけど。でも、それよりも姿が似てる事で勘違いさせるって方が、これまでこの施設を作ってきた奴に感じた捩れた思想に近い気がする。


「……そうか。見た目に騙されてたって事ね。なら、攻略法は別にある」


「そうだと思う。俺には、これ以上は思いつかないけど、アサギなら見つけられるさ。頼りにしてるぜ司令塔」


そう言って、俺は再びゴーレムに向かっていく。カメリア1人でも何とかなりそうだけど、独りで相手にするには疲れそうだ。なら、交代でゴーレムの相手をした方がいい。


「代わるぞ、カメリア!」


「ちっ、アタイの見せ場だったのに……」


「まだまだこれからだ。いくらでもチャンスはあるって!」


カメリアとスイッチして、ゴーレムと対峙する。倒せなくても、避けるのに専念すれば俺の方が相性は良い。鈍重なゴーレムの攻撃を、見切って躱していく。その間カメリアは、離れて休息をとっている。一撃でも当たれば大ダメージ必至、でも当たるとは思えない。上手く躱しつつ、辺りを見回す。こいつがギミックの一部なら、絶対どこかに突破口があるはずだ。ゴーレムの相手をしつつ、何かないかと調べる。すると、時々視界の隅で何かが光っているのに気づく。


なんだ、何が光ってる?辺りに視線を送るけど、光っている物が何なのか解らない。そっちに意識を割き過ぎると、遅いとは言えゴーレムの攻撃が当たりそうになる。仕方ない、ここは一旦引こう。


「カメリア、交代だ!」


「何だホクト、もうバテたのか?」


「ちょっと考えたい事がある!少しでいいから、代わってくれ」


「おう、任せとけ!」


カメリアとスイッチして、ゴーレムから離れる。さて、一体何が光っているのか……。俺は鷹の目と集中を駆使して、周りの物に集中する。ゴーレムを中心に捉えつつ、もう少し俯瞰で周りを視界に収める。そうしてしばらく観察していると、一瞬光った物の正体が解った。


「……あれは、最初に見た絵か?」


壁面に沿って、沢山配置された額に入った絵。それが、時たまキラリと光る。てっきりガラスが光に反射してるのかとも思ったけど、よくよく考えるとこの世界にそこまで高性能なガラスは無い。って事は、何か別の要因で光ってるって事だろう。


「ホクトくん!」


その時、アサギが俺を呼ぶ。ゴーレムに注意を払いつつアサギの元まで戻る。


「どうした?」


「解ったわ!あの壁にかかってる額、あれが光る事があるの」


「ああ、それは俺も気付いた。だけど、それがなんだって……」


「あの額が光る法則があるの。多分だけど、あの額が指令を出してゴーレムを動かしてるんだわ」


そんな事が可能なのか?確かに不規則に光って見えていたけど、何か人工物的な光り方をしていた。って事は、アサギの言う事が正しいのかもしれない。


「ここからは、私の推測。何の根拠もない話なんだけど……聞いてくれる?」


珍しく弱気に聞いてくるアサギ。


「アサギの事は信頼している。話してくれ、なにに気付いて俺は何をすればいい?」


「ありがとう、ホクトくん。えっとね……私が合図をしたら、あの額に向かって攻撃をしてほしいの」


「あれって、あの額か?あそこまで届く攻撃なんて、俺にはできないぞ」


俺は超超近接職だ。相手との距離が近ければ近いほど、攻撃力が上がるユニークスキルを持つゼロ距離ファイターだぞ。


「そんなに強い攻撃じゃなくても良いと思うんだけど……何かないかな?」


そう言って、アサギも自分の荷物を漁り始める。


「わん!」


その時、ポロンが俺に向かって吠えた。見れば、前脚で何かを抑えている。ポロンに近づくと、それは……。


「これ、ゴーレムの欠片か?」


材質的には、ゴーレムと同じように見える。いつの間に剥がれ落ちたんだ?カメリアの方を見れば、何度か攻撃を仕掛けてゴーレムに傷を負わせている。だけど、どれだけ攻撃してもゴーレムがすぐに回復してしまっているみたいだ。自己修復機能付きなんて、チートにもほどがあるだろ。でも……。


「一度剥がれた装甲は、そのまま残るんだな。ポロン……お前、あの戦闘の中近づいて、これを取ってきたのか?」


「わん!」


褒めて褒めてとドヤ顔をするポロン。今回ばかりは、そのドヤ顔が眩しく見える。やってくれたぜ、ポロン。これで何とかなりそうだ。


「アサギ、ポロンが殊勲賞だ」


「え?……あ、なにそれ」


「多分、ゴーレムの剥がれた装甲」


「いつの間に……」


アサギも驚いている。アサギのその反応にも、ポロンはご満悦だ。尻尾が激しく揺れている。


「これを投げつければ、あんな額くらい壊せるだろ」


「それはそうだけど……でも、あんな小さい的に当てられる?結構距離も離れてるわよ」


「問題ない。むしろ得意な距離だ」


ここから、アサギが指定した額まで大凡27m程度。だいたい野球の塁間と同じくらいの距離だ。この距離で、俺が外すわけがない。


「大丈夫なのね?」


「ああ、俺がお前を信じたように、お前も俺を信じろ」


「……解った。ホクトくんを信じるよ」


腹は決まった。俺は、いつでも投げられるように位置に着く。合図はアサギが出してくれるから、その声にだけ集中していればいい。カメリアの方も、上手くゴーレムを惹き付けてくれている。ポロンは、アサギの足元で自分の仕事は終わりだとばかりに伏せている。


「………………」


「………………」


「………………」


「………………!!ホクトくん!」


アサギの声と共に、俺は壁にかかった額に向かってゴーレムの欠片を投げつけた。欠片は、狙い違わず真っすぐに額に向かう。そして、額が光った瞬間に見事命中した。


「っし!」


久しぶりだったけど、成功した。欠片が当たった額は、そのまま真っ二つに割れて地面に落ちる。すると……。


「お、おいホクト!アサギ!これ……」


カメリアが素っ頓狂な声を出して俺達を呼ぶ。そちらを見れば、さっきまで執拗にカメリアを攻撃していたゴーレムが、その場に蹲って動かなくなっていた。


「アサギ、お前の言った通りだったな」


「うん。でも……成功したのは、みんなの協力があったからだよ!」


そう言って嬉しそうに笑うアサギ。釣られて俺もカメリアも笑顔になる。ああ、これでやっと終わった。そう、俺達は最後の試練に打ち勝ったんだ。

次章で8章は終了になります。

今回は少し短いですが、引き続きよろしくお願いします。

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