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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
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35話 最終決戦開始

ここはリーザスの町から北へ300mほど進んだ平野だ。今回の作戦に参加した冒険者のうち、生き残っている約200人の冒険者たちが集まっている。ランクもAからEまでと幅広い。


「今回は別々の行動になっちゃうね」


隣でアサギが少し寂しそうに言う。今回の作戦、前衛は前衛、後衛は後衛で固まって行動することになっている。俺とカメリアは同じ前衛として組み込まれているけど、アサギは後衛として組み込まれている。


「私も一緒だし、安心していいわよ」


相変わらず登場するときは仁王立ちのエリス。他の連中のパーティも、普段とは違ってみんな分かれて行動することになる。手の届かない場所に仲間を配置しないといけない不安はあるけど、見知った顔も多いし何とかなるだろう。


「えっと、前衛に参加するのは俺、セラ、ホクト、カメリアさん、アレク、キールと……こんなところか」


「後衛は私、エリスちゃん、エミルちゃん、ミランダちゃんね」


ソウルとアサギが、仲間内の前衛と後衛を数えている。こうしてみると、後衛って少ないんだな。他に知り合いで言うと、ターツさんは前衛、カゲツグは後衛だな。


「あの!僕も前衛です。よろしくお願いします!」


見ると、ユーリが俺達に挨拶していた。そうか、ユーリも扱いとしては前衛に組み込まれるのか。こいつは、ウナがいないと危なっかしいから注意しよう。


「よろしくなユーリ。羊の夢枕亭を守ってくれて助かったよ」


「そんな、結局僕何もしてません。あの後もカエルの魔物が襲ってきましたけど、女将さんとポロンだけで……」


「ああ……まあ、仕方ない。女将さん、かなりキレてたからな。でも、お前が守っているってだけで安心していた奴も絶対いるさ。俺だって、お前が残ってくれたから、安心して戦ってられたんだ。短い間だったかもしれないけど、感謝してる」


ユーリの頭を撫でながら言う。ユーリは褒められたのが嬉しいのか、しきりにウンウンと頷いている。肩に止まっているウナは、なんか生暖かい目でユーリを見ている。なんか、オカンの貫禄があるな。


「うわぁ、何この子!ホクトさんの知り合い?」


エミルがユーリを見つけて飛びついて来た。俺の代わりに頭を撫でて、良い子良い子している。ユーリは、さっきと違って顔を真っ赤にしてされるがままになっている。あ、ウナが怒った。


「ピュイ、ピュイィ!」


「え、うわ!?なんで?なんで私鷹に突かれてるの?」


ウナがエミルの頭を執拗に突いている。あれは……ユーリが困ってるから助けてるのか?それとも嫉妬か。エミルが逃げ回りながら、ウナの突っつき攻撃を躱している。


「お前らは、相変わらず賑やかだな」


声の方を振り返ると、巨大な剣を背中に背負った巨躯の男が立っていた。


「ターツさん!町に戻ってきてからは、なかなか会えませんでしたね」


「ほとんど宿から出ずに寝てたからな。それに、俺が守っていたのは西門だ。ソウルたちとは、それなりに会えたがな。ホクト達は東か?」


「はい。アマンダさんたち、涼風の乙女と同じでした」


「……そうか。こっちに戻ってからも、お前は大変だったんだな」


あ、そうか。ターツさん、俺とアマンダさん達が和解したことを知らないんだ。


「大丈夫です。アマンダさん達とも和解できたんで、その点に関しては遠征の時よりも気楽でしたよ」


俺とアマンダさんの確執は、遠征に言っていた冒険者ならみんな知っている。そして、俺が理不尽な目に晒されていることも知っていたターツさんは、ずっと心配してくれてたんだ。その点に関しては素直に嬉しい。


「しかし、よく許したな。俺がお前だったら、とてもじゃないがアマンダたちを許すことはできそうにないな。それを許したってのは、純粋に凄いって思うぞ」


「え、そうですか?……はは、ありがとうございます」


いきなり真顔で褒められたんで、ちょっと恥ずかしくなってきた。


「それに、さっきダッジさんが言っていたパーティって、お前らの事だろ?総司令が誘拐されるところを阻止したなんて、たいした武勲じゃないか」


「え!?ホクトさん達が、総司令を助けたんですか?す、すごいですね」


あれ、ユーリは俺達だって気付かなかったのか?どうも今回の作戦で、俺個人の名前は認知され始めたけど、肝心の猛炎の拳ってパーティは俺のチームだって認識が薄いんだな。


「だからな、ホクト」


ソウルが座った目で俺を見てくる。


「な、なんだよ。怖いよお前……」


「お前は、今回の作戦でじゅ~ぶん武勲をあげた。この上は必要ないだろ?だからさ……」


「だ、だから?」


「この大決戦では、俺に譲れ!俺が、お前の代わりに活躍してやる!」


ああ、自分以上に活躍した俺が許せなかったと。まあ、今回は確かに大きな功績をあげる事ができたのかもしれない。だけど、依然としてソウルたちとの差が埋まったとは思えなかった。個人の知名度で言えば、間違いなくソウルの方が上だしな。


「別にいいぜ。俺だって、狙って武勲をあげてた訳じゃない。偶然が重なった結果、短期間に沢山の武勲を立てる事ができたってだけだ。でも、お前だって十分に知名度があるんだから、無理に武勲を立てる必要はないんじゃないか?」


「…………お前が、俺よりも目立ってるのが我慢できん」


お前は小学生か!


「でも、確かに今回の作戦では、ホクトの活躍は目覚ましいな。パーティは違えど、友人として鼻が高かったぞ」


サラから直球のセリフが聞こえてきたので、恥ずかしくなる。ソウルのパーティは、随分と素直に他パーティのメンバーを褒めるな。まあ、若干一名は口が裂けても褒めてくれないだろうけど。


「……何よ、何見てんのよ!わ、わたしは絶対に褒めたりなんかしないんだから!」


エリスが面白いくらい動揺している。別に何も言ってないのに、勝手にアワアワしだした。周りの連中もエリスの人となりを把握し始めてるから、みんなニヤニヤとエリスを見ている。


「よし、お前ら準備はできてるな!」


そんな、気合の入った声と共にダッジさんがやってきた。改めて周りを見回すと、みんなそれぞれに覚悟を決めた表情をしている。知り合いが死んだ奴、町の方にも被害があったから愛する人を殺された奴もいるかもしれない。俺達は、幸いにも誰ひとり欠けることなくここまでこれた。危なかった場面は何度もあったけど、その度に何とかしてきた。あともうひと頑張りだ。


「みんな、絶対生きてまた会おうぜ」


「「「「おう!」」」」





魔物たちの軍勢に向かって歩いている。隣にはカメリア、普段俺の隣を歩いているアサギはもうここにはいない。後ろの後衛連中たちと一緒にいるだろう。そんな普段アサギが歩いている場所にいるのは、ユーリだ。ウナは既に空へ舞い上がっていて肩には何もいない。


「……」


「ユーリ、そんなに緊張してたら戦えないぞ?」


「ホクトさん、でも身体が勝手に……」


やっぱり怖いよな。特に前衛にはすでに見えてるんだから。あの途方もない数の魔物の群れが。


「あのリザードマン、口から出まかせを言ってた訳じゃないのかよ」


どれだけの数がいるのか見当もつかない。間違いなく2000よりは多い、5000はさすがに居ないと思う……思いたい。


「あの中には、アラクネみたいな強敵もいるかな?」


カメリアが、さっきからキラキラしてて夢見る少女みたいだ。対象が、殺伐としていなければ可愛いのに……。


「俺も一騎打ちがしたい!」


ソウルは欲望が駄々漏れだ。でも、こいつが暴れ回ってくれれば俺たちの生存率があがる。そう言う意味では、思い残すことなく暴れてきてほしい。どうせソウルだ、そう簡単には死なない。


「それにしても、これだけの数が一堂に会すると壮観だな」


数としては、圧倒的に冒険者側の方が少ない。だけど、そんなことは無視するかのように前衛のみんなは、今か今かと待ち構えている。まあ、中にはビビって腰が引けてるのもいるけど……それくらいは、許してやろう。誰だって怖い。


「ホクト、俺の事を恨んでいるか?」


後ろから声をかけられ、そちらに視線を向ける。そこにはダッジさんが険しい表情で立っていた。


「何を今更。別に恨んでませんよ、多分ダッジさんのしたことの方が多くの人を助けられる。ダッジさんは、そうなるように動いていたんでしょ?」


今回、ダッジさんは常に中央司令部に詰めていた。本人の性格を考えると、戦いたくてウズウズしていたことは想像がつく。それを我慢して、指揮に専念していたんだ。その結果が結びついて、今これだけの冒険者がここにいる。それがひとつの答えだと思う。


我慢に我慢を重ねて、個を殺して仕事に徹した。だけど、今回は最初から俺達と一緒に前衛に立つ。


「ふっ……さぁて、そろそろ始まるぞ。お前らも十分注意しろ。戦闘準備!」


周りにいる前衛に声をかけて、自分も準備をする。もっとも、俺達拳闘士はそこまで準備に時間を使う事はない。そもそも、俺達は徒手空拳。普段見につけているものを装着していけば、はい完了。


「いいかお前ら!この戦い、何が何でも勝つぞ!」


ダッジさんが声を張り上げる。それに呼応するように、周りの冒険者たちの気迫が漏れ出した。もう、誰も怯えてなんかいない。みんな、目の前の魔物を1体でも多く倒す事だけを考えて前を見つめている。


「全軍、突撃!」


「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」


我先にと、魔物の群れに駆け出す。俺も最初から全開だ。魔力を足の裏に通して、ブーストを発動する。カタパルトからの射出のように、身体がGに逆らって前方に放り出される。その加速をもって、誰よりも早く魔物の群れに飛び込む。


「一番乗り!」


両拳に魔力を流し、片っ端から浸透を叩き込んでいく。今回は出し惜しみ無しだ。


「うおりゃぁ!」


倒しても倒しても、目の前に群がってくる魔物たち。それらすべての攻撃を回避、またはパリングで弾いて、一撃のもとに殺しきる。


「お前にばかり良い格好はさせねえぞ!」


遅れて、ソウルが魔物に斬りつける。その後ろからはアレクやキール、アマンダさんやキリュウなど足に自信のある冒険者たちが続々と接敵していく。みんな、熱狂の渦に呑まれながら次々と魔物を倒していく。その光景はまさに……。


「カーニバルだ!」

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