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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
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22話 北門崩壊

「終わったね……」


立ち尽くしていると、アサギが隣まで来ていた。見れば若干顔が青く見える。アサギも冒険者の指揮から後衛として魔法まで、本当に大変だったな。


「お疲れさん。アサギがいなかったらと思うと、ゾッとするよ。でも、あまり1人で抱え込み過ぎるなよ?」


「ふふ、大丈夫。私は私にできる事をしただけ。それよりも、ホクトくんの方がよっぽど無茶だよ。アラクネに1人で向かっていくなんて……」


「言ったろ、あれも作戦だって。それにディスタンスゼロもあったしな」


まったく、恐ろしいほど強力なスキルだ。1mを切りさえすれば、大概の魔物は一撃で倒せるんじゃないか、あれ。


「それでもよ!そもそも、まだよく解ってないスキルなんでしょ?結果的に良かったってだけで……もう、心配したんだから」


「悪かったって。これからは、あんな無茶しない」


「ホント?」


うわ、アサギの上目遣いは凶悪だ。下から見上げられると、アサギの谷間が……肌が白くて目に毒だ。


「……本当」


とは言え、また何かあったら身体が勝手に動いちゃいそうだけどな。


「ああ!絶対反省してないでしょ。次同じことを繰り返したら、もう心配してあげないから!」


心配をかけるアサギには悪いけど、こればっかりは確約できないよな。頭からのストップ命令を身体が受け取る前に動き出しちゃうから。


「ホクト!お前は、やっぱり最高だぜ!」


「グエェッ!」


突然後ろから強い衝撃が来た。そして、その衝撃の正体は俺の首をこれでもかと締め付けている。犯人はもちろん……。


「か、カメリア……ギブ、それ以上は……あぁ……」


「カメリアだめ!ホクトくん死んじゃうよ」


「えっ、ああ!?悪いホクト、大丈夫か?」


大丈夫じゃねえよ。くそっ、まだ鎧を着けてなけりゃ柔らかい感触で相殺できたのに。これじゃ、ただただ苦痛なだけじゃねえか。


「それにしても、良くやったぜ!まさか、アタイたちでアラクネを倒せるとは思ってなかった。ホクトがいなかったらと思うと、生きた心地がしないな」


「確かにね。アラクネが目の前に現れたときは、死を覚悟したくらいよ」


アラクネ……確かに強い魔物だった。実際、俺達のグループからも死傷者が出ている。死者の数こそ多くないけど、これから先あんな強い魔物が出てきたらリーザスはどうなるのか。


「俺達からも礼を言わせてくれ。お前がいなかったら、きっと俺たちは死んでいた。ホクト、お前はオレ達の命の恩人だ」


いつの間にか、俺達の周りには一緒に戦った冒険者たちが集まっていた。お、ユーリも無事だったんだ。あいつEランクなのに、よく生き残ったものだ。見れば、肩の上にオオタカのウナもいる。あいつら、いいコンビだな。


「俺だけの力じゃないですよ。みんなだって、俺が動けない時に助けてくれたじゃないですか。こういうのは、持ちつ持たれつですよ」


「ふっ、そう言ってくれと俺達も嬉しいよ」


良かった……数は減ったけど、これからの戦いもこの人たちと一緒に戦えると思うと心強い。


「ホクト!」


呼ばれた方を振り返れば、そこにはアマンダさんと涼風の乙女が揃っていた。そうか、もう交代だから出てきたんだ。


「アマンダさん」


「心配したわ……。でも、私はあなたの事を信じてた。最後にアラクネを倒した時は、よくぞ私の期待に応えてくれたって気持ちで一杯だったわ」


「へ、良く言うぜ。外壁の上から何度飛び出そうとしてたか。あたしたちが抑えなかったら、お前今頃ここで剣を握ってたろ」


「そうよ。あなたを止めるのに、無駄な体力を使っちゃったわ。戦う前から疲れるって、どういうことよって感じ」


ミルさんとディーネさんが、アマンダさんを揶揄い始める。本当に、この人たちは変わらないな。その後ろでは、ビオラさんがが手を振って、キリュウがサムズアップしている。どうやら、涼風の乙女のみんなにも評価されたようだ。


「コホン!とにかく、お疲れさま。猛炎の拳の活躍で、何とか東門は死守できたわ。また数時間後には戦場に出てもらうけど、それまではゆっくり休んでちょうだい」


「わかりました。指揮権を引き継ぎます」


アサギからアマンダさんへ指揮権が移譲された。これで、俺達は1回目の戦闘を終える事ができた。一緒に戦った第3グループの面々と門を潜って場内に入る。その瞬間、身体から力が一気に抜けた。


「…………はは、今更ながらに足が震えてきた」


「それだけ過酷な戦場だったからね。私だって、もう一歩も動きたくないわ」


今まさに閉まろうとしている門を振り返る。その隙間から見える外の景色は、普段と変わらないように見えるけど、今その先は戦場なんだ。そして、俺達はそこから無事に帰ってこれた。


「……後何回、この感覚を味わう事になるんだろうな」





暗闇から徐々に意識が浮上する。薄っすら瞼を開くと、そこは既に日が落ちた後だった。冒険者たちが休憩している近辺には、いくつもの篝火が焚かれている。あれから、どれくらい時間が経ったんだろうか?


「あ、ホクトくん起きた?」


「アサギ……今何時だ?」


「う~ん、もう日付は変わってると思うけど……実際の時間までは分からないわ」


そうか、地球の感覚で聞いちゃったけど、こっちだと正確な時間って分からないもんな。俺達が戦場から戻ったときも完全に陽は沈んでたけど……以外に頭はスッキリしてるな、いつ寝たのか覚えてないけど睡眠は十分とれたみたいだ。見れば、俺の隣ではカメリアが気持ち良さそうに寝ている。特に起こす理由もないから、そのまま寝かせておこう。


「アサギは寝ないのか?」


「私?わたしも、さっき起きたばかりだよ。ダッジさんが来たからって起こされたの。もうなんで私なの!って怒ったわ。きっと、指揮しているときの事を見ていた人が、私がリーダーだと勘違いしたのね。もう、うちのリーダーはホクトくんなのに……失礼しちゃうよね」


アサギは怒ってますってアピールしてるけど、全然怖くない。逆に頬を膨らませてるのが可愛い。アサギのこういう仕草は、年上なのになんか可愛いんだよな。見れば尻尾も左右にユラユラ揺れている。あの揺れ方は、あんまり怒ってるって感じじゃないな。


「で、ダッジさんは何しに来たんだ?」


「他の門を守っている冒険者たちの戦況を、教えに来てくれたみたい」


戦況?そうだ、他の所はどうなってるんだ?


「アサギ、他の門の事を教えてくれ。みんな大丈夫なのか?」


「うん。今のところは順調みたい。現段階で、全ての門を合わせて死者25人、重傷者が42人らしいわ。この規模のスタンピードと考えれば、少ない方……と言って良いんじゃないかしら」


「25人……もうそんなに死んでるのか。あ、俺達のグループは?」


「第3グループは、死者3人、重傷者6人よ。やっぱりアラクネが現れたことで、他のグループよりも被害が大きいわ」


アラクネ、あいつを倒せて本当に良かった。あそこであいつを倒せていなかったら、被害がどれだけ出ていたか見当もつかない。東門全体で見ても死者6人、重傷者12人……死傷者の数は18人、これはすでに3割近くが戦闘不能になった事を意味する。


「そろそろグループの再振り分けをするかもしれないな」


元々4つにグループを分けて、それぞれ15人ずつの振り分けをされていた。それが、1グループ以上の戦闘不能者を出しているんだ。


「どういう判断を下すかは、アマンダさん次第ね。4つにシャッフルして、1グループあたりの数を減らすか、グループ自体を3に割り直すか……」


何にしても、次に外に出るときは前以上に過酷になるって事だな。そんな事を考えていたら、横で寝ていたカメリアが目を覚ました。


「……んぁ?あれ、もう朝か?」


「寝ぼけんな、それにどうみても暗いだろ」


「ふぁ……あぁ~あ、おはようホクト」


「眠れたか?」


「おう、グッスリだ。これで、次に外に出ても戦えるぜ」


カメリアもどうやら問題ないな。さて、みんなの状態を確認し終わったら腹が減ってきた。


「そういや、飯食い損ねてたな」


「そう言うと思って、もらってきてるよ。硬いパンと、薄いスープだけだけどね」


これはギルドからの配給品だ。ただだから、贅沢は言うまい。そうして、アサギたちと夕食を食べていると俺たちに近づく影があった。


「あ、ホクトさん。こんばんわ」


肩にウナを乗せたユーリだ。軽く観察してみる、どうやら酷い怪我はしていないようだ。多少の擦り傷や切り傷はあるけど、こんなのは冒険者には日常茶飯事だ。


「こんばんわ。ウナもこんばんわ」


「ピュイ~♪」


「あの、良かったらご一緒しても良いですか?」


相変わらず、素直で良い子そうだ。俺達は二つ返事でOKして、今は4人で食事をとっている。食事をしながら、ユーリと軽い雑談をする。アラクネと俺が戦っていた時は、門の近くに避難していたようだ。そう言う機転が効くなら、今後も冒険者として生きていけるだろう。あのアラクネ相手にEランク冒険者には何もできない。賢い選択をしたもんだと、ユーリの頭を撫でてやる。


「あ、あの……」


「ああ、ゴメン。嫌だったか?」


「いえ、その……こんな風に頭を撫でられたの初めてだったんで」


恐縮しっぱなしのユーリ。これは、少しずつでも良好な関係を築きあげていきたいもんだ。


そんな話をアサギたちやユーリとしていた時……。


ドーーーーーン!!!


「うわ、なんだ!?」


「地震?結構でかいな」


「そんな悠長に構えている場合じゃないよ!ほら、見て!」


アサギに指さされた方を見る。そこには、燃えて崩れ落ちた北門と、恐らく北門をそんなにした元凶が目に入った。


「おい、あれって……」


「ゴーレム?」


そう、北門を破壊したのは5m近くあるゴーレムだった。


「え?……ひっ!?」


やっとユーリが気付いた。カメリアは、槍の手入れをし始めた。お前、ちょっと気が早いよ。


「どうする?このまま傍観している?それとも、アマンダさんの判断を仰ぐ?」


「そうだな、お前たちはちょっとここで待っていてくれ。俺は、外にいるアマンダさんに判断を仰ぐ」


立ち上がって、みんなには待機を命じて俺は駆け出した。目的地は外壁の上だ。1人で外に出る訳にもいかないし、何よりアマンダさん達がどこにいるのかを確認しないと動けない。


「あの北門の壊れ方はヤバイ。あれじゃ、魔物が町の中に入り込むぞ」


今後のリーザスの町の事を考えて、胃のあたりが重くなる。できれば北門は、他の人たちで何とかしてほしいと思っている。だって、この東門の近くには羊の夢枕亭があるんだから。

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