4話 面倒な依頼
意識が朦朧としている中アップしてしまったので、細々と修正しました。
全体の流れは変わっていないので、読み直す必要はないです。
リーザスの町に入った俺達が見たのは、城門のある小さな広場に作られたバリケードとそれを取り巻く人の群れだった。冒険者たちは城門側、一般の人たちが町の中側にそれぞれバリケードを挟んで分かれていた。
「リーザスの町も、臨戦態勢になるとこうなるんだな」
カメリアが、感慨深げに周りを見回す。集まっている人たちの中には、見知った顔も何人かいたけど今は近づいてくるようなことはしない。それでも軽く会釈をすると、それに気づいてくれた人たちが手を振って応えてくれる。良かった、とりあえずはみんな大丈夫そうだ。
「ここを預かっている責任者は誰だ?」
「俺です」
ダッジさんの呼びかけに応えて、1人の冒険者が前に出た。俺も何度か見たことがある人だ、確かCランクパーティのリーダーをしていたはず。
「そうか、すまんがこれまでの戦況を教えてくれないか?」
「わかりました、あちらの兵士詰め所を簡易的な作戦指令室として使っています。説明はあちらで行います」
「わかった。グルド、お前はオレと一緒に来てくれ。他の奴らはいったん解散だ。ギルドまで行って、解散の手続きを行ってくれ。詳しい話はギルドからされると思うが、とりあえずお前らは今日と明日は英気を養うために休みだ。だがいいか、あまり羽目を外して肝心な時に動けないなんて情けないことになってみろ……オレが直々に弛んだ性根を鍛えなおしてやる!」
牙を剥いて威嚇するように周りに注意するダッジさん。あのおっさんの、あの顔は本気でやる顔だ。それが解ってる面々は、冷や汗をかきながら頷く事しかできなかった……え、俺?直立の姿勢で聞いてたに決まってるだろ。
「何にしろ、みんなご苦労だった。今この瞬間、リーザスがこれだけ平和でいられるのは、間違いなくお前たちの活躍の賜物だ。これから女を抱きに夜の街に繰り出す奴らは、せいぜい武勇伝として聞かせてやれ。解散!」
「ウィーッス!」
「よし、飲むぞ!」
「俺はレナちゃんに会いに行こう」
「俺も……今日こそ、今回の活躍を聞かせてアリスちゃんをモノにしてやるぜ!」
すっかりダッジさんに乗せられた人々が、町の雑踏に消えていく。あれ本当に武勇伝を聞かせて女を引っかける気だぞ。
「そんな事で靡く女なんているのかね?」
「以外にコロッといくかもしれないよ。だって、今目の前にある危機からここまで守りきってきた男たちだからね。ひょっとしたら、今日の歓楽街は入れ食い状態かもね……」
そういってアサギが俺の方に流し目を送ってくる。おい、それはどういう意味だ?俺はそんなところには行かないぞ。ただでさえ疲れてるのに、なんで態々体力をすり減らしに行かなきゃならないんだ。
「ふふ、ホクトくんがまだまだ子供で良かった」
「いや、意味は解ってるからな。そう言うのに興味が無いだけで……行くときは行くぞ、俺だって……」
「はいはい。クスクス♪」
なんか完全にバカにされてるな。最近のアサギの姉度がやたらと高い。どんな話をしていても、最終的にはお姉ちゃんに任せなさいって方向に話が進む。まあ、俺もそんなアサギを見てるのは嫌いじゃないから逆らわないけど。もう少し対等に見てくれても良いんじゃないか?
「おいホクト」
アサギたちとじゃれてると、ダッジさんが声をかけてきた。てっきり、もう作戦指令室とやらに行ったんだと思ってたから、ちょっとビックリした。
「どうしたんですか?まさか、また俺も参加ですか?」
「そんな事はしないから、そこまであからさまな顔をするな。ちょっと、お前に頼みがあってな……」
良かった、せっかくの休みなのに付き合わされるのは勘弁してほしかった。とは言え、じゃあ話ってのは何だろう。
「俺に頼み事って何ですか?」
「ああ……アマンダの事なんだがな」
その名前を聞いて、俺だけじゃなくアサギもカメリアも苦い顔をする。Aランクパーティのリーダーで、最初の頃は俺たちを指揮していた指揮官。そして、やたらと俺を目の敵にする、付き合うのが難しいタイプの人だ。……いや、この際だからハッキリ言おう。俺は、あの人が嫌いだ。どんな理由があるか知らないけど、あの人のやったことは世が世なら間違いなくイジメに分類される事だった。俺だって、何度帰ろうと思った事か……。
「そんな顔をするな。確かにあいつがお前にしたことは許されない事かもしれない。だがな、それをひっくるめてもお前とアマンダには関係を修復してほしいと思ってるんだ」
「ダッジさん、アマンダさんの言動は私たちですら常軌を逸していたと思ってますよ。それを、当事者の……しかも被害者の方のホクトくんに言うなんて……」
「言い分は解る。それでも、そこを押して頼みたいと言っているんだ。今回のスタンピードが異常なのは既に周知の事実だ。そして、第三陣を退けられたのは間違いなくホクトの功績が大きい。だが、第四陣がホクトだけでどうにかなるなんて、オレは思っていない。お前もだろ、アサギ」
「それは……もちろん理解しています。ですが、それとホクトくんへの頼みがどう繋がるんですか?」
必死に食い下がるアサギ。俺としては有難い行動だけど、このままでは話が一向に進まない。アサギには悪いけど、ダッジさんが考えていることを聞いて判断したい。
「アサギ、悪いけどちょっと黙っててくれるか?俺はダッジさんの話が聞きたい」
俺がそう言ってアサギに断りを入れると、アサギの頬が見る見る膨らんでいった。こいつは俺よりも年上の癖に、どうしてこうも甘える仕草が様になってんだ?
「ホクトくんが良いなら、私は別に構わないわ。だけど、ちゃんと話してくれるんですよね、ダッジさん」
アサギがマジでダッジさんにプレッシャーをかける。並みの冒険者なら、それだけで縮み上がりそうなプレッシャーを受けながら、それでも澄した顔で会話を続けるダッジさん。これは……どうも役者が違うようだな。
「むぅ……」
「それで、話の続きだな。実は、アマンダの回復が芳しくないんだ。今も病院で入院しているが、このままではいつ責めてくるか分からない第四陣との戦闘にも参加できない可能性が出てきた。我々としては、ホクトにもアマンダにも周りを気にせず戦ってほしいと思っている。そのためには、2人の協力が不可欠だ」
ダッジさんの言う事は分かる。だけど、それを差し引いても俺はあの人に近づきたくないと思っている。これは、どこまで行っても平行線の話だ。どちらか、もしくは俺とアマンダさん両方が歩み寄らないと、今後の戦闘に支障をきたすかもしれない。
「我々を助けるためだと思って、引き受けてくれないか?」
「……アマンダさんの入院先を教えてください。最悪、向かってる最中に嫌になって帰るかもしれませんが……そのときは、諦めてください」
「それでいい……感謝する」
この人は、俺がアマンダさんに会う事を疑ってもいない。……まったく、面倒な仕事が舞い込んできたことだ。
「別に和解することに関して不満は無いです。ただ、もし次も殲滅戦の時みたいに酷い扱いを受けるようなら、そこは俺の匙加減で排除しますよ?」
ダッジさんから、アマンダさんの収容先を聞いて、そこに向かう事にした。メンバーは俺1人だけ。アサギもカメリアも付いてきたがったけど、ここは俺に任せてもらう事になった。気が重いけど、これも生き残るためだ。




