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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
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3話 町への帰還

翌朝、偵察に出ていた冒険者たちが戻ってきた。出発前に各パーティのリーダーが集められ、現状の把握とこれからの行動について話し合いが行われた。当然猛炎の拳のリーダーである俺も参加した。


「今のところ、リーザスの町に魔物の群れが押し寄せているって事は無いようだな。それ自体は朗報なんだが……」


「第四陣がどこにいるのか解らない……」


「そうだ、俺たちが仕留め損ねた第四陣の行方が未だ不明のままだ。このままリーザスから逸れて行ってくれるなら有り難いことだが……あまり楽観視もできない状況だな。とにかく、オレ達は今からリーザスの町に向かう。偵察に出た奴らの話では、町の外壁沿いに魔物たちが群がっているようだが、まあこれに関してオレ達が後れを取る事は無いだろう」


集められたリーダーたち全員が頷く。ここには俺はもちろん、他のDランクパーティのリーダーもいる。だけど、今回の殲滅戦を経てみんな自信をつけたようだ。もちろん、俺だって魔物の残党なんかんに後れを取るつもりはない。なんだかんだで、今回の経験は俺たちを1つ上のステージへ上げてくれた。


「よし、各班点呼の後馬車に搭乗。準備が整った班から出発する。先頭は偵察に行ってたお前らだ、まだまだこき使うからそのつもりでいろよ」


ダッジさんが、偵察に行っていた冒険者たちに向かって笑顔で告げる。それを聞いた冒険者たちは、うへぇ~と悲鳴を上げておちゃらけてはいるけど目は真剣そのものだった。自分たちに与えられた仕事に誇りを持っているんだろう。俺も、いつかはああなりたいな。


「では、解散!」


ダッジさんの掛け声で、各々天幕を出ていく。さて、俺もみんなの所に戻ろう。出発の準備はアサギが音頭を取って進めていたみたいだから、戻るころには準備も整っているだろう。そう思って歩いていると……。


「あ、おにいちゃん……」


昨日の晩以来のエスカちゃんと出会った。表情はやっぱり暗く、覇気も感じられない。昨日の話だと、自分を疫病神のように思っているから、この子の全体から感じるジメッとした暗さはそれに起因するんだろう。なんとか元気づけてあげたいけど、今の俺には声をかける事くらいしかできない。


「エスカちゃんたちも、そろそろ準備終わったんだろ?もうそろそろ出発するらしいぞ?」


「え、……うん。もう準備は終わった。やることないから、散歩してたの」


「そうか、何か面白い事あったか?」


「ううん、大人の人たちは出発の準備で忙しそう。子供の私が近づくと、みんなの迷惑になるから……」


この子はいつもこんな感じなんだろうか。子供って、もっと遠慮なく大人に甘えるものだと思ってた。俺には弟や妹がいたことが無いから解らないけど、宿屋のハンナちゃんだって、俺たちが暇なときは構ってほしいと近づいて来てたよな。だとすると、やっぱり昨夜の発言あたりが、今のこの子を縛っているのかも……。


「エスカちゃん、暇なら俺とその辺散歩しないか?」


「え?……でも、お兄ちゃんも忙しいんでしょ?」


「ちょっとくらいなら良いよ。戻ったって、アサギが準備を全部終わらせてる頃だろうしね。それよりも、せっかく知り合えたんだから、もう少し話をしよう。リーザスの町がどんなところか、お薦めの食べ物屋とか教えてあげられるよ」


「……いい。今は止めとく」


「……そうか。じゃあ、興味が湧いたら聞きにおいで。いつでも話してあげるから」


「うん。お兄ちゃんバイバイ」


軽く手を振って、自分たちの馬車の方に戻っていくエスカちゃん。う~ん、ちょっと強く行き過ぎたか?もう少し警戒心を解いてからでも良かったかもな。


「まあ、今更だな。次会った時は、話してくれるといいんだけど……」


「驚いたわ、まさかあなたがロリコンだったなんて……」


そんな失礼な感想を、遠慮なくぶつけてきたのはソウルのチームメイトのエリス嬢。普段からツンデレ傾向がある子だけど、今とんでもないことを口走ってなかったか?


「……今、俺の事ロリコンって言った?」


「言ったわ。だって、決定的瞬間を見ちゃったもの」


決定的瞬間って、俺が散歩に誘って断られた部分か?なんか、悪意のあるタイミングだな。もう少し前から見てれば、ロリコンだなんて失礼な感想は出てこなかったと思う。


「エリスの方は、もう準備終わったのか?」


「さあ?そう言う仕事は、いつもソウルがやってくれるから」


甘やかしまくってるな、ソウルの奴。いつもって事は、サラも止めないって事だよな。


「私が手伝うと、サラとソウルが困ったような顔をするのよ。ちょっと力加減を間違えて、荷物を馬車に放り込んだだけなのに……」


「……ああ、お前片づけられない系の女子か。いっそ、何もやらない方がソウルやサラの手伝いになると……」


「うっ!?ち、違うわよ!慣れてないだけで、やればできるもん」


もんって……こいつは、こいつなりに頑張ってたんだろうな。ただ、努力がいつも報われるとは限らない。


「そ、それよりも!……あなたはこんなところで油売ってていいの?ソウルは結構前に戻ってきて出発する準備をしてるわよ。あなたも早く、あのおばさんたちの元に戻ったらどうかしら?」


「おばさんって……あの二人の前では絶対に言うなよ?カメリアはともかく、アサギはショックで何をしでかすか分からないからな?」


アサギとカメリアは1つしか違わないのに、歳の事でいつも反応するのはアサギだけだ。カメリアは、自分の年齢を忘れてる節すらある。あいつの場合、自分の誕生日すら忘れてそうだしな……。


「エリスも、時間があったらで良いんだけど……さっきのエスカちゃんとも話をしてみてくれないか?」


「……なんで私が?」


「今いる面子の中じゃ、一番歳が近そうだからな。俺やアサギたちだと、歳が離れてるから、あんまり腹割って話してくれないんだよ。その点、エリスなら年も見た目も近いし……どっちも子供だから、話しが合うんじゃないか?」


「あ、あんたねぇ!さりげなく私のことを侮辱してんじゃないわよ!」


「ダメか?」


良い案だと思ったんだけどな。本当はハンナちゃんたちと遊ばせれば、少しは元気になりそうだけど、ここにはハンナちゃんもポロンもいない。俺たちだけでは、あの子も退屈だろうし……。


「ふ、フンッ!暇があれば、お話してもいいわよ。でも、あくまで暇があればの話よ!」


エリスって、本当にテンプレのようなツンデレさんだよな。この感じでエスカちゃんと話して、砕けた関係を作っていってくれると嬉しいんだけどな。


「じゃあね、あんたもしっかり仕事しないさい」


エリスは顔を真っ赤にして、自分たちのテントの方に戻っていった。あの子も言動は過激だけど、基本的には良い子なんだよな。言葉とは裏腹に、周りの事をよく見てるし、誰かが困っていると放っておけないし。エリスとエスカちゃんが話すことで、少しは打ち解けてくれるといいんだけど……。





野営した場所を出発して4時間ほど。そろそろリーザスの外壁が見えて来てもおかしくない。さて、魔物はどれくらい集まっているかな?


「あれは……町に残っている冒険者たちは、スルーするつもりかしら?」


見えてきたリーザスの町、そして……その外壁沿いに蠢く魔物の群れ。こうしてみると、結構取りこぼしてたんだな。見る限り、100匹くらいはいるように見える。


「あれくらいの数なら、門の手前で待ち構えて残った冒険者みんなでタコ殴りにすれば、あっという間に片付きそうなんだけどな」


「何にしろ、このままじゃ俺たちが町に入るときに一緒に街中まで入ってきそうだな」


「そこはダッジさんが何とかするでしょ。あ、ほら!前の馬車が速度を上げたよ。町に纏わりついている魔物たちを、ああやって引っ張り出して始末するつもりみたい」


アサギやアレク、エミルなんかと会話をしていると、エミルの言う通り前方を走っている馬車が進路を変えて、一番魔物が多く群がっている場所に突っ込んで行った。特に指示が無いって事は、ダッジさんは俺たちを投入するつもりは無さそうだ。しばらく進むと、全車停止の合図が来たので、馬車を止める。


「私たちはどうする?」


「う~ん、待機で。もし、手が必要なら要請が来るだろう」


その予想は正しく、程なくしてリーザスの町の城門に群がっていた魔物は、一気に数を減らしていく。あの離れていった馬車には、グルドさん達『竜神の鉾』が乗っていたみたいだ。いくら数が多いとはいえ、Aランクパーティにかかれば残党なんて相手にもならない。そんな竜神の鉾の戦いを見て、俺も戦いたかったと思う。せっかくだし、新しく手に入れたスキルを試してみたかった。


「よし、いいかお前ら。この後は、あの城門から中に入るぞ。中にも魔物がいるかもしれないから、十分注意してくれ。殿は、あのままグルド達が受け持つ。今のところ、見える範囲に敵影はない。急ぐ必要はあるが、そこまで慌てるようなことも無い。喧嘩せずに順番通りに行動しろよ?」


「酷えな、ダッジさん。俺たちは引率が必要な餓鬼じゃなんだぜ?」


残った冒険者たちが口々にダッジさんに文句を言う。リーザスの町が見える所まで来たことで、ここまで生き残ってきた冒険者たちから、やっと弛緩した空気が流れ出した。俺たちの乗った馬車の中も、見渡せばみんなが笑顔になっている。ああ、やっと終わったんだ。


「帰ってこれたね」


「ああ、早くみんなに会いたいよ」


再び走り出した馬車に揺られながら、アサギやカメリアと拳をくっつける。これから先、まだまだスタンピードは終わらないけど、俺たちはひとつの仕事をやり遂げたんだ。


馬車が城門を超える。見ると、兵士にも怪我人が出ているようで支えられて立っている人が何人もいた。俺はその中に見知った顔を見つける。


「ケントさん……良かった、無事だったんだ」


あちらも俺たちに気付いたのか、馬車に向かって手を振ってきた。俺たちもそれに応えて手を振り返す。


「ああ、戻ってこれたんだな……」


こうして、殲滅戦に参加した俺たちは無事リーザスの町に帰ってくることができた。だけど、全てが順調と言う訳ではない。消えた第四陣の魔物たちがどこに消えたのか?


スタンピードは新たな局面を迎えた。今までと違って、これからは町を守りながらの戦闘になる。今までは冒険者だけだった被害も、これからは町の住人など一般人にも出るかもしれない。俺たちは、そんな町に生きている人たちを守りながら魔物を倒していかないといけない。


戦いは、まだまだ続く。

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