1話 ユニークスキル
7章の始まりです。
6章に引き続き、町を守るためにホクトたちが奔走します。
引き続き、よろしくお願いします。
俺たちは今、リーザスへの帰途についている。時間も時間だったため、出発こそ翌日になってしまったけど問題なく撤収準備を終えて、今日の朝早くに出発することができた。
行きよりも少なくなった冒険者たちを再編成して、馬車に乗っている。俺たちの馬車は、幸運にも誰ひとり欠けることなく行きと同じメンバーで乗り合わせている。
「それにしても、アレク達もよく無事だったな」
「周りが凄い人たちばかりだったからな、俺たちはおまけみたいなもんだよ」
「例えそうでもさ、もっとランクの高い冒険者たちだって生き残れなかったんだ。アレク達は、もっと自信を持っても良いと思うぞ?」
実際アレク達は、怪我らしい怪我もせず、あの地獄のような戦場を生き残ったのだ。無事之名馬というけど、全くもってその通りだと思う。
「それよりも、この後どうなるんだろう……。リーザスの町は大丈夫かな?」
エミルが心配そうにこぼす。それを聞いた馬車内の全員が、リーザスの現状を想像して押し黙ってしまった。
「あ、ゴメン!そうだよね、みんな心配なのは同じだよね……」
「気にすんなよ、確かにリーザスも心配だけどさ。今は戦いの疲れを少しでも取った方が良い。それには、楽しい話でもしてリラックスしていこうぜ」
「そうだね、今から気を張り詰めていたら町に戻ってから何もできないからね」
アサギも俺に同意して、少しでも気が楽になるように軽く話をつづけた。それが良かったのか、エミルの表情にも笑顔が戻った。他のみんなも、そんな空気に救われたのか馬車内の空気はさっきよりもずっと軽い。
「それにしてもホクトは凄いな。あんな強い魔物を倒しちまうんだから」
「ホントだよね、私たちなんて遠くから見てただけなのに怖くて……もう少しでちびっちゃうところだったよ」
エミルがおちゃらけて、会話に弾みをつける。それは良いんだけど、女の子がちびるなんて軽々しく言うもんじゃないと思うぞ?
「エミルは実際ちびってたんじゃないのか?」
「ち、ちびってないもん!……後少し遅かったら、やばかったけど……」
「何でもいいけど、そんなにちびるちびる連呼するなよ。ここには、メンバー以外にも男が乗ってんだぞ?」
「あれ、ホクトはそんな性癖が?」
「ねえよ!俺は、淑女としての嗜みを説いてたの!」
ミランダが、俺の方に突っかかってくる。なんでこいつは、俺と会うたびに突っかかってくるのか……。まあ、今はそんな空気でも暗くなるよりは楽になるからいいけどさ。
「カゲツグも、最後は鬼退治に参加してたんだろ?俺は前衛で見れなかったけど、結構活躍したんじゃないのか?」
「そうでもない。あの化け物相手じゃ、多少弓の能力が高くても関係ない。俺ができたのは、牽制くらいなものだ。最後にホクトが止めを刺してくれた時は、勝った事よりも、とにかく終わったことにホッとした」
「でもさ、お前も弓以外に使えんなら前に出てくれば良かったのに。あんな奴と真っ向から闘う機会なんてなかなかないぜ?」
「……勘弁してくれ」
カメリアとカゲツグのやり取りに、馬車内に笑い声が溢れた。凄惨な戦いだったけど、こうしてまた笑い合えるのは本当に幸せな事だな。みんなは会話を続けているけど、俺はフッと心に隙間ができてしまったような気持ちに襲われた。こうやって、何気ないときに思い出してしまう……シッカたちの事。短い時間だったけど、かけがえのない戦友であり、偵察時のイロハを教えてくれた先生であり……。もう居ないんだと言う事に脳が馴染んでいないと言うか……処理が追いついていない。他のみんなが明るく過ごしているって言うのに、1人だけ暗い顔をするわけにもいかない。気持ちを切り替えて、今を楽しもう。
ギュッ
そのとき、空いていた右手を柔らかい物に包まれた。驚いて横を見ると、アサギが優しく笑っていた。柔らかい感触は、アサギが俺の手を握ってくれたからだったみたいだ。
「……ばれたか?」
「大丈夫じゃない?他の人たちは気付いていないみたいだし」
「お前にばれてるじゃん」
「私は……まあ、ホクトくんのお姉ちゃんだしね。弟が苦しんでるときは、姉パワーで癒してあげるの」
「……なんだよ、その姉パワーって」
「世のお姉ちゃんだけが使える、弟限定の癒しパワーだよ」
なんだよ、そのよく分からんパワーは。それと、勝手に全世界の姉の気持ちを代弁するな。まさか、本当に全ての姉が姉パワーを使える訳じゃあるまいし……。
「使えるよ?」
「……心を読むなよ」
そうして、また手をギュッと握られた。どんなに誤魔化しても、姉パワー発動中のアサギには敵いそうにない。ここは素直に甘える事にしよう。
「……ありがとうな」
「どういたしまして」
その後も、しばらくアサギが俺の手を握ってくれていた。手を離す際に
「はぁ……弟パワー満タン、充電完了よ」
と、妙に色っぽい吐息を吐いて手を離してくれた。だから、なんだ弟パワーって。変なパワーをぽんぽん生み出すなよ。
一度昼の休憩を挟んで、また馬車に揺られる時間になった。正直暇だ、行きも同じようなものだったけどさすがに飽きた。恐らく、明日の昼頃にはリーザスに戻れるだろうけど、それまではこの退屈な時間を何とかして潰さないといけない。
「ところでホクト、お前あんな化け物クラスの魔物を倒したんだから、結構能力も上がったんじゃないのか?」
同じように暇していたアレクが、思い出したかのように聞いて来た。そう言えば、鬼を倒してからステータスの確認をしてなかったな。色々慌ただしかったから、すっかり忘れてた。
「そういや、まだ見てなかった。『ステータスオープン』」
どうせ暇なら、ステータスの確認でもしてみよう。何の気負いもなくステータスを開く。さて、何が変わっているかな?
「…………え!?」
余りの事に声が出た。そして、その声は思いのほか大きく他の連中に驚かれた。
「なんだ?何かあったのか?」
「どうした、ホクト。何か問題でもあったのか?」
アレクにカメリアが心配そうに聞いて来た。しまった、内容を隠すにしても、もう遅い。これは話さないと付き纏われそうだな。
「ああ、え~と……驚かないで聞いてくれよ?それと、できればここのメンバーだけの秘密にしてほしい」
「大丈夫だ、我々のパーティに人の秘密を軽々しく喋るような奴はいない」
キールが珍しく反応した。普段無口なキールが反応するって事は、こいつもよっぽど暇だったんだな。
「で、どうなんだ?早くアタイらにも教えろよ」
「わかった、見せるから落ち着け!」
1つ深呼吸をして、改めてみんなの方を見る。
「なんで変な声を出したかと言うと……スキルが1つ増えてたんだ」
「おお、良かったじゃないか!」
「でもさ、それであんな声を出す?これは、何かとんでもないスキルが手に入ったと見た!」
エミルが鋭い。女の勘ってやつか?こんなんでも、エミルは女だからな。意外と侮れない。俺の場合、周りが勘の鋭い奴らばかりだから隠し事なんてほとんどできないけど……。
「ほら、早く喋れよ。いつまでも勿体ぶるなよ」
カメリアもテンション高いなぁ……。ここは話すしかないか。
「それがな……増えてるスキルが『ユニークスキル』なんだよ」
「「「え!?」」」
だよな、やっぱりみんなそう言う反応になるよな!よかった、俺だけが変な訳じゃなかったみたいだ。俺は、今回増えたスキルを簡単にみんなに説明していく。
「……つまりだ、今回鬼を倒したことで、俺にユニークスキルが顕現したみたいなんだよ。あんまり人に言いふらすような内容でもないから黙ってようと思ったんだけど、残念ながら俺の不注意でみんなにバレてしまった」
前にアサギから聞いた話では、ユニークスキルを持っている奴って本当にいないらしい。他の人たちにも聞いてみたけど、普通は隠すよな。ソウルだって、ドッペルゲンガーは本来隠すつもりだったらしい。それが、俺と戦って思わぬタイミングで衆人環視のなか、使ってしまったことで色々とまずいことになっているそうだ。
「それでそれで?何て名前の、どんな効果なの?」
エミルが根掘り葉掘り聞いてくる。まあいいか、ここにいる連中とはこれからも付き合いが続くんだ。これくらいは、前もって知っておいても問題ないだろう。
「え~と、スキル名『ディスタンスゼロ』だな。ああ、どうやら敵との距離が近ければ近いほど攻撃力が上がるスキルみたいだ。…………ああ、ここに詳しく書いてある。えぇっと……」
「ああ、いいよホクト。そういう事は、俺たちのいない時にしてくれ」
「そうか、まあ俺はどっちでもいいけどな」
そう言いながら、スキルに書かれた詳細を読んでいく。
ディスタンスゼロ(ユニークスキル)とは、
敵との距離が近ければ近いほど攻撃力にボーナスがつくスキルである。
効果は1分間持続し、その間に付与されたボーナスは
対象が変わっても効果が持続する。
また、随分とピーキーなスキルを得てしまったものだ。




