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レオ、最果ての王。

 こいつをぶっ倒すにはどうしたらいいのかしら?


 見た目からは明らかに特殊な魔術的攻撃が得意なタイプだろうから、無暗に近寄れないし。


 圧倒的な力によって、一瞬で消し去る方法もあるけれど、その召喚達をここで顕現すると、こいつ以上の大問題になりかねないし。なんせ巨大だったり、桁違いの威力とかだから。


 それにしても、こいつ、私を見ても全然怯みすらしない。戦闘用に育てられたなんかかな?それとも、恐怖を感じない何か……?


 奴の巨体が、ゆっくりうねるように揺れて全身に不穏な色の電気が走る。体中の鏡面の骨から異界の音声のような音が振動して空間に流れた。


「ディル……シュ……ディ……アンレリ……ズ※△?」


 同時に地面が震えだす。


 取り敢えず、戦闘準備……


 私は左眼の眼帯を外し唱える。


「レオ。お願い」


 ゾディアックサイン(黄道十二宮)の内一つ、獅子宮。


 古王(コオウ)と言う、私の苗字に相応しい力。


 私がその二文字を唱えると、私の頭上の空間に円形の亜空間が映し出され、そこに映る幾つかの星々がどんどん拡大されていく。


 レオは強力な顕現なので、左眼の点滅の輝きが自分でもはっきり分かるくらいに眩しく光っている。


 来た。


 速い。


 四足獣の異形の巨大な顔面が、もう、私の目前まで迫っている。


 召喚途中という事を見抜いて、可笑しなぐらいにがばっと開いたミミックみたいな口で、容赦なく噛み砕きに来た。


 ふっ。こわっ。


 私は瞬時に大跳躍し、空中ブランコみたいに宙で回転しまくる。


 この瞳が開眼してから人ならざる身体能力へとどんどん進化している。もともとママ譲りで身体能力は高かったけれど。


 そして、宙から見て、やっと周囲の異様さに気づいた。


 公園全体が灰色のセメントみたくねっとりした淀んだ魔圧に浸食され、所々に鉄柱みたいなのが生えてきている……


 なんか……きもいわね。


 来た。


 速いんだって。


 そう感じた時には、奴の顔がまたしても目前にあった。


 次はホホジロザメをイメージさせるような顔つき。全くコロコロ印象が変わる奴ね……


 反応速度と適応力が半端ない。


 うぷっ……マジで吐きそうだわ。


 …… 


 避け……


 ないっと。


 次の瞬間――


 深紅の物体が奴の巨体に横から猛烈な体当たりをぶちかます。


 奴は公園の端っこの草むらまで吹き飛ばされた。


 私は着地。続いて、その赤い物体もドスンと言う重量感のある轟音を立てて、地面に着地。


「ナイス!レオ!助かったわ。かちーわね(賢いわね)」


 そう言った私の姿は、先程のお洒落お嬢様コーデから変身し、黄金の王冠、赤く分厚いマント、鈍い赤色に煌めく重厚な王大剣を手に持ち、いにしえの王のような姿へと変わっていた。


 目の前には、跪く巨大な赤獅子。


 獅子宮の顕現とは、何処か果ての世界の王の装いと、それに仕える魔獣を召喚する事なのだ。私っぽくて結構気に入っているゾディアックサインだ。


「……」


 レオは知性の籠った音を喉から鳴らした。獅子とは言ってるけれど、やはりこの世界の生命とは根本的に違う感じがする。七メートル程の既視感の無い姿や、黄金色の牙を見ていると、私の知っている世界はホントに極一部だと思い知らされる。


 レオをわしゃわしゃと撫でながらも、私は視界の片隅で、奴がまだ動いている気配を感じた。公園内の魔圧もどんどん濃くなって深い霧状態となり、細長い鉄塔がさらに幾つも出現し出した。


「いくわよ。早いとこケリつけないときっと面倒だわ」


 私はレオにそう言うと、軽くジャンプしてその背中に飛び乗った。


 同時にレオは、爆発音みたいな雄たけびを公園内に響かせる。私も勇ましく王大剣を高々と太陽に掲げた。


 今の私、カッコいいかも。


 四足獣の異形は草むらからヨロヨロと出て来ては、私達から距離をとりだして公園内の奥の方へ身を隠しだした。濃いミストのせいでその位置は全く見えない。気配すら遮断されている様だ。


 私とレオは暗闇よりタチの悪いその空間の中を、微細な気配を探りながらゆっくりと彷徨う。


 侍の如く、精神を集中し、目を瞑る私。


 ……


 おかしいわね……


 奴の気配が数十体はあるわ……


 追加で召喚でもされたのかしら?


 その全部が私達をじっと見てる。一斉に襲ってこようとする鬼人みたいな気迫。


「ねぇレオどう思う?」


 私が小さな声でそう訊ねると、レオは微塵も動揺など無い王獣の雰囲気のまま、大きく息を吸いだした。


 そして……


「ウォロロローーーンッ!!!」


「ちょっと!!!」


 あろう事か、眩しい月夜と峠が強制的にイメージさせられる程の遠吠えをレオは発した。


 ブゥゥン……


 もぅ!勝手にスタートのホイッスルーやめてよー……


 しかし、あまりの絶対的な音声に全てが硬直し静止している。


 ん……今。


 奴等……データみたいに……


 来たっ!!!


 前面上部から放射状に複数体が飛びかかって来てるわ。


 その全部が、私とレオの致命傷の部位を寸分狂わず確実に切り裂こうとしてる。


 この王冠のおかげで、少し先の未来が視える。


 私は目を瞑りながら未来だけを視て、奴等の軌道を計算し、全部の敵を貫く最適な剣筋のルートを暗闇に描く……


 ここだわ。


 レオと私は一心同体で動いた。


 指揮者のように力まず滑らかに、勝利の線を王大剣で正確になぞる私。


 シュルルルルルル……


 流れる様に消えて行く凶暴な気配。


「やったわねレオ!手ごたえあんまりなかったけど」


「グルゥ……」


 その声は、「よく考えろ」と言っているみたいだった。


「どしたの?」


 私はレオに従い、自分の頭を整理する。


 UFO……鉄柱……データ……手ごたえ……


 まるで、通信……


 あ!


「そっか、ホログラムね!!!」


 完全に状況を把握した私は、再び目を閉じて奴等の気配を感じた。


 まだ、獰猛な気配がこちらの様子を伺っている。


 百体はいるわね……増えてるじゃん。


 けど、全て偽物なんでしょ。


 召喚でも何でもないフェイクよ。


 状況と雰囲気から勝手に先入観でイメージを作らされちゃってただけだわ。


 全ては鉄柱から放たれているだけの虚像。ただの電波。


 最初の一体だけが本物。それもイメージの変容からすると疑わしいけど……


 電波攻撃との勝負って事ね。


 そうなら、答えは簡単。


「レオ。鉄柱、全部壊すわよ。」


「グルルルルゥゥ」


 やる気満々て感じね。これなら他の召喚は顕現しなくていいみたいね。


「さぁ行きましょ」

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