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施設の夢、私の仲間達。

 ……


 夢かしら。


 今、学校にいるはずないもの。


 幽明ナズナ先生が、いつも通り騒がしいみんなに「授業始めるよー」と優しい微笑みで声掛けしている。


 みんな、その声を聞くどころか、「先生はなんで結婚しないの?」とか、「先生、授業終ったら私とデートしてー」とか「先生、推し活してる?」とか余計騒がしくなってしまっている。


 私は、その光景をいつも通りに、一番後ろの窓際の席でぼーっと眺めている。


 新緑の香りを纏った風が、窓から教室内を通り抜ける。


 夢の中だけど、今日は良い天気だ。


 クラス委員長で同い年の女の子、碧(ヘキ) 青花(アオカ)がみんなに「静かにしなさい」と注意してる。この子はすごいしっかり者で、私や年下組の相談事とかにも乗ってくれたりする、誰もが認める委員長。


 ポニーテールで眼鏡をかけている。性格に反して、目がとてもあどけない女の子。


 異界に喰われた街の出身らしく、当時、今よりまだまだ子供なのに、異形霊媒案件でも激ヤバな状況の場所から一人で自力で脱出したらしい。


 青花は、その目のあどけなさや、過去の切なさを振り切るように、いつもピシッとしている感じがする。


 私の前の席に座る、唯一、男の同級生、恩(オン) 来螺(ライラ)は、机に突っ伏して寝ている。髪はボサついていて長くて色素が無い。覇気が無く、日光や面倒臭い事から逃げる節があり、まるで吸血鬼みたいだ。能力的にホントにその系統の血が混じっている可能性は十分にある。


 「みんな!青花ちゃんの言う事聞こっ!!ねっ!!!ねねねっ!!!てへっ!!!」


 立ち上がって、くるくる回りながらそう言うのは、一番騒がしく最年少の女の子、獅子花(シシカ) 凛凛(リンリン)。ちなみに、私に匹敵するムードメーカーだ。


 高い位置で結んだツインテールと金色の瞳、艶やかな金髪が本物の魔法少女みたい。


 本人曰く意識しているらしい。たまに、魔法少女ごっこに誘われ、基本私は魔王役。


 凛凛の凄い所は、たまにアニメ超えの事を成し遂げる所。例えば、小学校四年生の時に校舎にやってきた下級デーモンを軍隊を差し置いて、一人で圧倒し討伐したらしい。魔術の知識も助っ人のマスコットも勿論無しで。まだ、アニメの敵なら容赦があったりするけれど、実際のデーモンが本気になると猛獣の十倍、百倍レベル以上の獰猛さなのだから。


 前世はもしかしたら本当に魔法少女なのかもしれない。


 「リンリン、あなたが一番うるさいわよ?」


 そう言ったのは、陽長 フレア(ヒナガ フレア)年下組女の子チームでは一番マトモで、異能力の才能がぶっ飛んだ、バランスのとれた常識人。故に、次期クラス委員長候補。


 ストンと落ちた真紅の髪が特徴的。この子の魔術は名前の通り、とてもダイナミック。


 というのも、かつて日本のある村にやってきた未知災の魔の王の子孫らしい。


 魔の王は災厄をもたらさない代わりに、その村の稀有な能力を持つ巫女を嫁に


渡せと言ったらしく、その末裔がフレアなんだって。


 そんなフレアも、火蘭君の事になると頬を赤らめ少しタジタジになるのが、年相応で可愛い。


「先生、トイレ言っていい?」


 唐突にそう言いだしたのは、年下組男の子チームのマセガキで悪戯っ子の斎藤 災人 (サイトウ サイト)。かつては、素行不良が目立ち、ヨゼに次ぐ問題児だったけど、根は素直で良い子なので更生中。


 右眼に大きな切り傷があって、左眼しか見えていない。


 災人は、とある不穏な因習が残る村で育ち、得体の知れない異形を儀式によって体内に宿されて、王と呼ばれて育ったらしい……


 確かに、あの能力を見せられると一般人ならそう思うわよね。


 災人はフレアの事が好きで、何かと目につく様な行動をとったり、最近じゃフレアに好きになってもらう為にオールバックにしている。


 一度、私と本気で喧嘩をして、完膚なきまでに叩きのめしてやってから、少しは滅茶苦茶な面が削ぎ落された気がする。


「相棒、どうせまたサボるんだろ?真面目にやれよ、先生悲しむぞ?ね?先生?ボクちん偉い?先生?くんくん……はぁー先生今日も超いい匂い!!!やっほー!!生きてるってすーばらしいぃー!」


 御台(ミダイ) 錬徒(レント)が言った。年下組男の子チームのスケベ番長。


 とにかく、災人と仲良しで漫才のようなやり取りをずっとしていて、隙あらば先生の胸を触ろうとしたり、スカートを捲ろうとしたりするとんでもない奴。しかしそれが一回も達成された事は無い。先生はああ見えて、中々最強な所があるから。


 ちなみに、私を含め上級生女子にはそんな行為はしない。一回、あろうことかヨゼにそれをして引く程にボコボコにされてビビってるから。


 おちゃらけているが、能力封じの中級デーモン相手に対等にやり合える程に一級品の才能を持った男の子。


「これも仕事これも仕事これも仕事、頑張れ私。可愛い生徒可愛い生徒……あーーーーーギィーーー(黒板を引っ掻く音)」(きゃーーー)みんなの悲鳴。


 先生は、ブツブツと黒板の前で独り言を言い出した。元々、他者と関わるのが苦手らしく、異形霊媒探偵の仕事として、ここの教員を頼まれた時は、絶対無理と思ったらしい。


 でも、クラスのみんなと楽しそうに喋る笑顔を見てると、結構天職なんじゃないかと私は思ってはいる。ちなみに先生は『一度世界を救っているらしい』


「あっ!虚疑君!教室で魔術はダメよ!」


 そんな風には見えない先生が慌てた声を出す。


 虚疑(コギ) 果手那(ハテナ)名前の通り、何を考えているか分からない年下組の男の子。透けるような薄緑髪と色白の美青年で全体的にスラっとしている。


 いにしえの召喚術が好きらしく、たまに私の袖口を無言で引っ張っては、私の召喚を見してと言ってくる結構可愛い奴ではある。


 グランドを埋め尽くす大きさの怪物が現れた事件がちょっと前にあって、私は犯人がハテナだと思っている。悪意は無いだろうから許すけど。


「その魔術とても臭いわ……やめてくれるかしら?」


 ストレートな物言いを、優雅でありながら残酷に言ったのは、不門(フモン) 幽美(ユウビ) ベクトルは違うけれど、私と同じ匂いのする女の子。


 ハテナ同様、何を考えてるのか分かりずらく、自分の世界がある子。


 薄水色の髪色をしたご令嬢で、とにかく美しいモノが大好き。私がヨゼと火蘭君にキスをした噂が広がった時には、「何故私じゃないんですか?」と一週間程付き纏われたので、仕方ないから頬にキスしてあげようとしたら、「腕を舐めさせて下さい」と言ってきたのは流石に驚いた。結局舐めさせたけど、あの時の幽美ちゃんの顔は……忘れよう。


 私は、不意に一番前の窓際の席を見た。


 亜久流 世世。私のキス仲間。


 あの子は私に負けないくらい綺麗な黒髪だから、前の席にいると、窓から吹き込む風に揺れるその髪に、授業中、クラスの何人かは見惚れている。


 私よりかはクールな眼つきで、無駄な思考や穢れが無いような浮世離れした美しさがある。


 彼女を見ていると、何を視ているのと問いたくなる。


 なのに、キスをしてると、弱っちく、すぐ頬が赤くなるところがとても可愛い。


 そんな事を思って前を見ていると、斜め前の方向から視線を感じた。


 誰なのかは分かっている。


 慈十(ジトウ) 火蘭君(カラン)だ。


 私が見た瞬間、頬を一瞬で紅潮させ、顔を背けた。


 男と認識出来ないぐらいの女の子顔。最近、私には反抗的に強い言葉を吐こうとするのだけれど、根がとても大人しくて凄い優しいので、すぐ丸め込まれてしまう弱くて可愛い子。


 私がこれをしなさいと言うと、モジモジしながら結局いつもそうしちゃうのが尊い。


 でも、クラスの子が泣いている時は、能力で花とか出してあげて優しい笑顔で芯のある言葉で励ましたりする素敵な子。


 そんな愛しいショタボーイはアレキサンドライトみたいな透けた紫髪を、教室に花みたいに咲かして、細く白い腕で顔を隠して机に突っ伏している。


 ふふーん……


 ニーハイ履かせて、顔を真っ赤にさせて、泣かしたいわね。


 それでもって、そんな酷い仕打ちをしながら抱き締めてあげて、涙を拭ってあげて、「大丈夫だよ、全部私にゆだねなさい」って慰めてあげたい……


 私、変かしら?火蘭君が一番美しくなる瞬間を作りたいだけなのだけれど。


 ……


 私はクラスを見渡しながら、窓から吹き込む風に頬を撫でられる。


 夢の中でも、自分は美しくいようと少し背筋を正した。




 ジリリリリリ……


 スマホのアラームが鳴り起床する。


 なんと、枕とまつ毛が少し濡れている。


 もしかして、もしかすると、私、かなり寂しがり屋さんなのかな?


 ……


 みんなにもう会いたいわ。

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