↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/46

ママとの電話。

 私はみんなでゲームパーティーをする前に、お風呂に浸かりながらママと電話していた。


 ママはいつも、誰よりも私の味方でいてくれ、誰よりも私の話を聞いてくれる最高の親友みたいな存在だ。ママとお話する時は、いつも自分が子供に戻ってしまう感じがする。




 私:(ねぇ、ママ。ママが初めて本気で恋したのはいくつの時?)


 ママ:(そうねー、今のレシカちゃんと同じくらいの時かしら)


 ママこと、月原家のお嬢様 月原 麗は私と同い年の時、引きこもりだったらしい。


 それは、社会に適応できなかった訳では無く、適応でき過ぎたのが理由だったのだとか。


 私:(って事は……パパだよね?)


 確か、お互い十八で出会って、二十二で私を産んだから。


 ママ:(そうよ。それまでは、恋って概念がよく分かっていなかったわね)


 ママはその昔、もう信じられない程の才女で、あらゆるスポーツ、知能競技、芸術領域において、何度も世界一に輝いた事のある子供だったらしい。月原家とはたまにそういう存在が生まれる家系で、私の8つ程離れた従姉妹のお姉ちゃんも、そんな感じの超天才だ。


 ちなみに、その従姉妹のお姉ちゃんは現在、日本屈指の異形霊媒の家系として知られる、花岡家の執事として従事している。お嬢様だったのに、何故そんな選択をとったのかは不明だ。


 話は戻って、つまりそんなママは、別次元の存在なので、単純に恋愛対象者がいなかったのだ。


 私:(じゃあ、ママが今思う恋ってどんな概念なの?)


 ママ:(恋ね……ふふふ。レシカちゃん好きな子でもできたのかしら?)


 私:(それはいいの。私はママが思う恋とか愛を知りたいの)


 あらゆる領域で頂点をとり、それゆえ、退屈と疎外感により孤独すら極めてしまった月原 麗が、一人の風変わりな御曹司 古王 駆 と出会い、掴んだ概念が知りたい。


 ママ:(恋はね、魔法よ。時間が止まったり、世界が煌めきだしたり、自分で自分が制御出来なくなったり……本当に魔法だわ……愛は別物ね。例えるなら未知数)


 未知数……?


 元々ドライだった性格のママを、こんな事を言う風に変えたパパとの馴れ初めは結構面白い。


 ある時、数年に一度しかこの世界にやってこない異界の大楽団が行う富裕層向けの奇妙奇天烈な演奏会があって、それにママは月原家によって強制参加させられたらしい。異形とのコネクション作りみたいな感じで。


 それでママは、つまんないし、自分の方が演奏上手いしって、招かれたお城内を逃げるように散策してたんだって。


 その時、風が吹き抜けカーテンが揺れる窓があって、そこから弦で奏でる「エリーゼのために」のメロディが流れてきたらしいの。


 その時ママは、自分が感じる孤独と全く一緒なモノを、この上なく美しくヴァイオリンの音色で表現し演奏されている事に驚き、その窓の外にあるベランダに慌てて出たらしいわ。


 そして、そこに立っていたのが、満月に向かい優しく微笑みながらヴァイオリンを奏でる、パパこと、古王 駆だったの。


 それを出会いに微妙に話が合って、ママは何度か探るようパパと会ったらしいわ。


 その最中に、色んなゲームをしたのらしいけれど、なんと、その全てがママの全敗だったらしいの。


 その時、パパが「ボクに勝つなら、ボクの遺伝子を持つ子供を産む事だね」っと冗談交じりに言ったのだけれど、当のママは、「一理あるわ、人生を懸けた大勝負をしてみるのも悪くないわね」と決めたらしいわ。間違いなく勝つ戦いになるだろうと確信をもって。


 で、産まれたのが私ってわけ。


 これが、パパとママの話。でも二人の話を聞いていると、小難しい事は抜きにして、どうしようもなく愛し合っていたようにも感じる。


 それはまるで、自分は一人じゃなかったんだと思わせてくれる運命の人を見つけて、心の底から安心するみたいに……


私:(世界が煌めくのはちょっとわかる気がする)


 私がそう言うと、電話口のママの後ろでパパが「え!?レシカちゃん、彼氏出来たの?いやっ!!パパ絶対嫌!!」と言っている声が聞こえた。そして、ママが「よしよし」と言ってる。


ママ:(時間が止まるあの瞬間も素敵よ。レシカちゃんもいつかきっと経験出来るわ。悔しいけど、パパがあのベランダでヴァイオリンを弾いてる姿は、ママの心の中で未だに止まったままなのよ。ちょっと笑えるでしょ?)


 素敵……


 いいな。


私:(パパ、かっこよかったの?)


 知っているけど聞いた。ママの口から聞きたくて。


 今現在、パパとママは四十歳だけれど年齢より凄く若く見える。


 昔の写真を見れば、パパは中性的でつかみどころのない美青年と言う感じで、ママは今の私に凄くよく似ている。


ママ:(まぁまぁかな)


 ママが恥ずかしそうに言った。パパがマジなトーンで、「麗ちゃん、まぁまぁはひどくないかな?ボクにはこんなにも君が綺麗に見え続けているのに……」と聞こえる。


 もしも、兄妹が生まれるなら妹がいいわね。


私:(ママ、もうちょっとでお風呂あがるから、最後に愛が未知数ってどういうことか教えて?)


ママ:(そうね……愛は見えないし質量も無いのに、色んな現象の起点に確かにあるの。よく観察すると分かるわ。愛は有限でないからこそ、どんな形にも変わり、どこまでも広げられるの。そういう意味での未知数。だからレシカちゃん、制限を設けず、愛を広く持ちなさい。あなたは壁の無い愛を抱ける優しい子なんだから、十分にそれを発揮しなさい)


 ……


 ポトリ。


 湯船に涙が落ちる。


 なんだか泣けてきてしまった。


 これも、愛による現象なんだろうか?


 単なるホームシック?


私:(うん。私、頑張るわ……ママ、大好きよ)


ママ:(ママもよ。いつだって、応援してるからね)


私:(……ありがと。じゃ、またね、バイバイママ)


ママ:(風邪ひかないようにね。おやすみ、レシカちゃん)




 私は浴槽からあがり、火照る体のまま脱衣所で鏡の自分を眺める。


「私って、ママとパパの愛で始まったんだよね……愛ってすごいわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。