ノープログレム!アイラビューちゅっちゅっちゅ♡
それにしても派手な状況な事だわね……
地面は大きくひび割れ、超巨大黄金クリスタルはミラーボールのように燦燦と輝き、青白い立方体空間は60、59、58とカウントしている。
だけれど、相手がどんなやつらかまだ判断できない以上、大袈裟な攻撃は間違いではないのだろう。判断する前に撃破してしまう可能性大ではあるけれども。
「ふはは!!!はんぺん君遅すぎっ!!!ゼロ飲料にしたら!!?」
錬徒は例の空間の中で、ブリッジやロンダート、バク宙などを異常なまでに柔らかい体で連発する。でっぷりとしたシュモクザメ頭の異形は全ての攻撃を寸前でかわされ相当興奮しているようだ。
でっぷり……もとい、はんぺん君が一撃、一撃を繰り出す毎に、空間内に、威力のような数字が幻のように現れては消える。520、430、700、545……と、
これは恐らく、正確な威力の数値測定だろう。
錬徒曰く、大人の本気殴りでも2とか3、良くても5ぐらいらしい。
「パラレル・ティンクル!!!」
未だにフレアの雨乞いで、大サソリマネキンお化けとピンクミニスカお化けが封じられている中、凛凛の声が響いた。
ズドンッ!!!
凛凛が黄金の杖から煌々と輝くビームを発射する。
そのビームは黄金のクリスタルの中に溶け込み、激しく屈折し続けて、まるで鍵を開けるみたいにカラカラと音を立て、無数の宝玉の雨のように分裂して散りだした。
それらは、キラッキラに輝きながら宙を無常力のように漂う。
「ねぇ、どうする?もう雨乞い終わるけど、『到来』使う?」
フレアが帝王の翼膜を満月に透かしながら言う。たぶん、凛凛にどっちが決めるか聞いてるか、私にこの場所で『到来』を使っていいか聞いているのだろう。
速い話が、今までのフレアの技は拘束的な意味合いを込めての前座みたいなもので、こっからが本番。
これ以上の段階は斜跳目鬼と天視姫の能力を自身に投影させたり、存在や物質の召喚魔術となってくる。『到来』以降の段階はいくつもあり、最終段階はフレアしか知らない。
「でも、私もう決めちゃうよっ!?」
凛凛が宙でフレアにウインクする。キラーンと星が飛んだ。魔法少女化すれば、こんな事も可能だ。随分とサマになってるいる凛凛は、もしかしたら、前世とかで遠く遥か彼方の世界の王女様だったのかもしれない。そうなら、きっと凄まじくファンタジーの世界にいたんだろうなって気がする。なんとなく。
凛凛のあの姿を見た私は、あながち本気でそう思っていたりもする。
「じゃあ、『到来』はいいか。雨乞いもう終わるから、ちゃんと決めてね凛凛」
フレアはそう言った後、錬徒に叫ぶ。
「錬徒っ!!!いけそうっ!??」
錬徒の青白い立方体空間のカウントは残り15秒。はんぺん君の繰り出す攻撃は
150、190、85、201……と明らかにスタミナ切れな模様だ。
「ノープログレム!アイラビューちゅっちゅっちゅ♡」
錬徒がフレアに投げキッスする。そして背面から来た、はんぺん君を華麗に高い跳躍のバク宙でかわした。
「きも」
フレアが鼻で笑う。
そして、雨乞いはまるで夢だったようにあっさりと終えた。
びっしょびしょになり、ぜぇぜぇと直立するのがやっとの二体のお化け。倒れないだけでも相当すごいと思う。
だが、その二体の周りには、眩し過ぎる輝きの無数のクリスタルが圧倒的に格が違う魔圧を発してざわめいている。
「じゃあ、いっくよーーー!!!準備はいい!!?」
凛凛は誰に言ってるのだろうか?耳に手を当てている姿は可愛いけれど。
「うん、いいみたいだねっ!!!」
だから、誰よ。
凛凛は黄金の杖を二体のお化けの方角へ向けた。
「せーーーのっ!!!」
瞬時に、凛凛自身が至高の魔石の如く、膨大にユラユラと揺れる神聖なる黄金の魔圧を体から爆発的に放出しだした。
「ルミナス、、、ワールド!!!!!!」
全てが杖に収束し、精製され凝縮される。
それらは、高純度のレーザービームとなり、極限的な光輝で放たれた。
公園どころか、この辺一帯の世界が未体験の違和感に揺れる……
同時に錬徒のカウントは残り5秒。
錬徒はゼェゼェと動きが止まっているはんぺん君の後ろにそっと立ち何か言った。
「……」
読唇術はできないが、私には「すまねぇな」と言ってるように見えた。
凛凛の無数の宝玉が、神聖なる黄金のエネルギーを透過させ、さらに威力を高めて屈折し宝玉へとエネルギーを送り込む。それが延々と繰り返され、加速するエネルギーの円環が巻き起こる。
私はこの現象をなんと表現すればいいかわからない……
滅びの螺旋……救いの螺旋……どちらとも近いけれど、やっぱり正解の表現では無い。
一つ確かな事は、その中心にいる二体は、確実にもうこの世界にはいないだろう。
私は青白い立方体空間に目を向ける。
錬徒も、もうきめる瞬間だ。
ピピピピピ、カチ。
立方体空間のカウントが残り2秒を示す。
錬徒の動きが変わった。
何処までも冷たく鋭い動き。
極限に鮮やかな軌道。
そして……
空間すらねじれそうな破滅的ストレート……
……
空間内にデカデカと数字が表示された。
『9999』
でっぷりとしたシュモクザメ頭の異形は一瞬で姿を消し、青白い立方体空間の術は解除された。
錬徒のこの魔術は残り時間が少ない程、威力が増す魔術。決して、相手から攻撃を受けてはいけないのが条件。
それは囲う空間の小ささと、逃げる期間の長さに比例して威力が変わる。
錬徒が、例の怪現象蔓延るニュータウンで、ひと際常軌を逸した異形をたった一人で倒したのもこの術でらしい。
その時は、三カ月逃げ回ったのだとか。
おかげで、一時的に街は救われたのだが、街の人間は錬徒を異常者や呪われた存在扱いしたのだとか……
魔を束ねる王クラスの存在に、魔術はあるけれど、ただの少年が挑んだ勇気には誰も賞賛しなかったと言うのが本当に信じられない。
私は三人に向かって声を上げる。
「みんなっ、怪我は無い?」
フレアは何が?という顔。
凛凛は宙を楽しそうに飛ぶ。
錬徒は手を双眼鏡のようにして、二人を下から覗いてる。(さっきの訂正、褒め過ぎた。こいつの人生の九割がえっち)
「まっ、そうだわよね」
私は、やれやれと言う顔をし、例の不気味なオブジェの前に立つと、 後ろ回し蹴りで粉々に砕いた。
「変なもん作んじゃないわよ全く……」
にしても……
……
フレアって、クマさんのパンツなんだ……
錬徒の声が聞こえた。
「今日のクマさんは輝いてるなぁ、あっ、ちが、満月!」
『到来』
ひぇーーー!!!




