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三人の怪物。

 公園の中央。異様な雰囲気のお化けが三体。


 点滅する電柱に怪しく照らされ、とてもグロテスクな見た目を露わにしている。


 中央の奴は、人型でやけに図体が太い。頭部が横長のシュモクザメみたいであり、肌色の野人という感じ。目が中央に寄っており、口が裂けたように笑っている。


 右が、長身の女性のような化け物。全身が薄気味悪いピンク色で、キョロキョロ動く目玉だらけ。何故か人の真似をしたようにミニスカートだけは履いている。


 左が二体に負けない程の大きさのサソリ。その胴体にはマネキンのような人型のオブジェみたいなのが数体生えている。そにマネキンは腕を開いたり閉じたりしていて心底不気味。


「三人共下がって……」


 私は左眼の眼帯を外し、鋭い声を出して前に踏み出す。


 錬徒が振り返り、凛凛とフレアと顔を見合わせる。 


 そして――


 凛凛が錬徒の真似をしたように、錬徒の横あたりまでアクロバットを決めながらジャンプして着地し、フレアは軽いジャンプで二人と同じ地点にふわりと着地した。


 三人は、こんな状況なのに笑い合い、示し合わせたように横並びに前に出る。相手三人は気持ち悪い程に、少しも微動だにしない。


「ちょっと、あんた達何してるの?」


 私が焦ったように言うと……


「いいよ、レシカねーちゃんは休んどいて」


 錬徒が淡々と笑い声で言う。しかし、その声は芯が冷えてるような冷たい感じ。


「うん、偶にはレシカ姉の為に頑張らないとね、色々貰ってばっかりだし」


 フレアが振り返ってにこりと私に微笑んだ。


「レシカ様、あたし頑張っちゃうよ!ちゃんと、見ててね!」


 凛凛からブワッと金色の魔圧が溢れた。


 ……


「ホントに大丈夫……?」


 私は凄く心配なトーンの声を漏らす。年下組ちゃん達に何かあったら心が耐えられないから。


「あいつらの事?」


 ビュッ――


 錬徒が悪戯っぽく言ったと同時に姿を消した。


 三体のお化けは少し警戒するような雰囲気を見せる。


「こっちだぜ、何処見てんの!?」


 大きな声が公園に響いた。奴等のとなりにあるジャングルジムのてっぺんからだ。


 三体が、視線を錬徒に向ける。


「はーい、注目あんがと。そう、この俺がキングさっ!」


 錬徒が挑発するようなポーズをとり、高笑いする。


 突如、真ん中のでっぷりとしたシュモクザメ頭のお化けが物凄いスピードで走り出し、ジャングルジムに超級の一撃。


 グワーーーン!!!!!


 ジャングルジムの下半分がほぼ壊滅的に潰れた。


 斜めに倒れるジャングルジム。


「うわわわわわぁー」


 錬徒が何処か演技っぽく、崩壊するジャングルジムの上でおどけて飛び回る。


 その時――


「狭間」


「プリンセス・エネルゲイア!!」


 フレアと凛凛がほぼ同時に声を出す。


 すると、まだ動いていない二体のお化け達の周辺が、境界が淀むように霧っぽくなった。


 そして、フレアは背中辺りから四枚の翼膜を生やして、羽ばたかず宙を浮いている。


 その四枚は上二枚が酷く斜めで、下二枚が横に大きく開いている。


 しかしそれは、ただの羽のような気配では無く、羽全てに二個づつ巨大で恐るべき眼光の目玉がついており、まるで、帝王のような安易に逆らってはいけない異様な雰囲気を醸し出している。


 対する、凛凛は純白と黄金を基調とした魔法少女風な服装に様変わりしている。


 王女様と魔法少女を掛け合わせたような感じ。


 手には王家のレガリアを思わせるような槍型の黄金の杖。先端より少し手前に輝く金色のクリスタルが埋め込まれている。それは、この世界には存在しない宝石という感じで至極美しい。ママがみたら絶対に欲しがりそうな逸品。


 そして凛凛がその杖を一振りすると、フレアみたく羽が生えてきて軽やかに宙を舞い出した。金色の粒子で出来た様な神々しい羽。


「みんな、無茶しちゃだめよ!あんた達怪我したら、お姉ちゃん泣くからね!」


 手をメガホンのようにして叫ぶ私。


 三人は耳が良いのだろう。一瞬でこっちを見てグーサインを私に飛ばす。


「干ばつ」


 フレアが中央にいる二体を唐突に指差す。


 その二体は瞬時に動こうとしたが、それを上回るスピードで急速に地面が割れ、その大きなひび割れに足が埋まり拘束される。


「雨乞い」


 フレアがさらに続けて言うと、雨と言うよりは激しい流れの滝が、二体に容赦無く降り注ぐ。あれらの存在すら身動き出来ないレベルを考えれば、もはや海の中で拘束していると言ってもいいのかもしれない。


 錬徒に目を向ければ、バネ人形のように飛び跳ねて、当たれば即死であろう、ぶん殴りを楽しそうにかわしている。非常に滑らかでリズムの良い動き。溶ける様に相手の攻撃の軌道から逸れる動き。


「へーい、遅いんじゃない?はんぺん君?じゃあ、こっちから行くよ?」


 錬徒が勝手なあだ名をお化けにつけて煽ると、奴はクマのような声質で怨讐の籠った雄たけびをあげた。


「カウントいっきまーーーす!!!」


 錬徒が時計の針のようなポーズで魔術の名を叫ぶ。


 錬徒とはんぺん君は薄青の四角い立方体空間に閉じ込められた。


 その空間の全ての面に電光掲示板のように60と表示される。


「ゼニス・クリスタル!!!」


 凛凛もまるでみんなに連携するかのように壮大な名の魔術を唱えだす。


 瞬く間もなく、公園中央の虚空に超巨大な黄金のクリスタルが、まさに降臨という空気感で現れた。


 そのクリスタルは、電柱すら比にならない光量で、公園を真昼、いえ、光の世界のように照らしだした。

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